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血ぃすーたろかー32回目

 結局、駆逐艦が完全に動いたのは翌日の午後だった。ドックに水を入れ、浮力で浮かせた後はタグボートで引っ張りだすのだが、ダグボートが無い。

 船には外部電力を使い、同時に給油する場所を探した。探したのだが、其処に行くまでに先ず、船渠から船を引っぱり出さないといけないのだ。引っぱり出さないといけないのだが、タグボートなんて無い。タグボートなんか無いのでどーすんの?と言う話になり、ノンナが押せばいいじゃない!とアホなことを言い出した。


「おい、ノンナ。

 お前、これをどうやって押すんだ?ん?お前、押せるのか?」

「やってみるわ!」


 ノンナがそう言うと舳先にバールを押し当てて思いっ切り押し始めた。勿論、そんな物で動けば誰も苦労はしない。幾らゴリラより強力だからといってそんなもんで動く訳がない。

 俺達はアホだなと笑いながら見ていると、ノンナがグググッと動き出す。


「え?マジで?」

「嘘ですわ!」

「えぇ……」


 ノンナが押して!と俺に言うので俺もノンナと一緒にバールを押す。もう、押すとググッと動いていくのだ。パネェ……

 何で動いてるんだ?


「ストーカーさん、貴方は船の行き先を確認して下さいまし。

 私は此処で波や渦を調整しますので」

「あ、はい」


 ぐぉ!?俺は肉体労働なのか!?当主様なのに!?くそったれ!


「お?」

「あ」


 急に軽くなったと思ったらそのままノンナは海にドボン。俺は岸壁に立つ。うん、何ぞ?


「何ぞ」

「ある程度の力が有れば後は波と渦の力で簡単に動きますわ」

「お、溺れる!溺れるわ!」


 あっぷあっぷとノンナがバチャバチャやっている。何やってんだ此奴?泳げんのか?しょうが無いのでバールを伸ばすとノンナがそれを掴む。バールのL字部分を岸壁にかけてやり、俺は上に乗る。

 ノンナはそのままヨジヨジとバールを使って岸壁に上がり、羽織っていた上着を脱ぎ絞り始めた。


「お前、泳げねーの?」

「泳げるわよ!

 何か体が重かったのよ!」

「はぁ?」

「体が重かったのよ」


 意味分かんねーよ。


「体重は増えていますわよ。

 体中にナノマシンが居るんですもの。ナノマシンの増加分だけ体重も増えていますわ」


 まぁ、そうだろうな。ノンナはへーと自分の手をグッパーグッパー開いたり閉じたりした後何かを発見したらしくその場に胡座をかいて目を瞑る。そして、そのままフワッと浮かび上がった。

 あ、出来た。


「出来たわ!」

「そうだな」

「フフン!」


 何をそんなにドヤ顔をする事なのか分からんが、ノンナはドヤ顔を俺に向けた。凄いねーでも俺もそんなのとっくのとうまに出来てるんだよ~

 俺は杖を片手に海面にトウと飛び降りる。水の上を歩くぜぇ~?杖を肩に担ぎ、船の舳先に手を当てながら岸壁の上にいるノンナにドヤ顔を向ける。するとノンナもトウ!と飛び出してそのままバチャンと海中に。

 アホだな此奴。


「何やってますの貴女?」

「ちょ、ちょっと力加減間違ったのよ!」


 ノンナは再びヨジヨジとバールを使って岸壁に上がると今度はソロソロと海面に降り立つ。

 次は海面に立つ事が出来たのだが、まぁ、足が少々水没している。本人は気にしていないようなので良いか。

 ノンナは俺の隣に来るとびしょ濡れのままグイグイ船を押していく。

 俺はノンナにバトンタッチして岸壁に戻り、そのまま進水式を見ていたトーキン達の元に向かう。


「こ、こんな大きな船が本当に動くのでしょうか?

 鉄製で、帆もオールも無いようですが……」

「フン、動かぬ船を持ち出すほど阿呆ではない」


 ノンナはストーカーとヘルシングの誘導に従って船を押していく。20分程掛けて船を押し出した所で、此処からが本番だ。

 先ず、船の向きを変える。舳先と船尾を同時に押してその場で90度回頭。俺が船尾を押してノンナが船首を押す。ストーカー君はドックの上から俯瞰で眺めて向きを教えるのだ。ヘルシングは波と渦を調整してスムーズに回す。

 回頭に更に20分掛け、今度は船を給油所まで押していく。此処からはヘルシングとストーカーは船内に入り舵取りだ。操舵をグルグルする奴な。ヨーソローとか言う奴だ。


「1万3千トンの船をたった二人で押せるってどうよ?」

「アンタ押してないじゃない!」


 俺はお前と違って体力馬鹿じゃないからな。こんな重いものを押すように出来ていない。


「つーか、だんだんと速くなってるからとんでもねぇよな」

「波に乗ったのよ!

 ヘルシングもいい仕事するじゃない!」


 お前は何様だよ全く。多分、ノンナ様よ!って応えるだよな。


「何様だよお前は」

「ノンナ様よ!」


 ほら見ろ。一言一句違わず言いやがった。ノンナ様は偉大だよ。なんせ1万3千トンの船を一人で押してらっしゃるんだから。

 それから3時間掛けて給油場所まで押して行き、再び外部電力を繋いでアンカーを下ろし、船を係留。船を係留するロープを引っ張ってきて若大将が足をかけてそうな名前が分からん場所に引っ掛ける。

 燃料を入れたりするのはほぼ自動でロボットが行うのだ。入れる燃料の量も全てが決まっており、大凡一晩掛かるとか。

 俺達は外部電力が入ったことで居住スペースを船内に移した。後方にはヘリコプターが置いてあり、ノンナが乗ろう!と言い出したので俺とストーカー君で全力で阻止した。多分、此奴が乗ったら最後カプコン製に早変わりする。

 ヘリコプターについてはよく知らないが、もうこの辺には絶対無いので壊す訳にはいかない。

 何故ならば、この船にしろヘリにしろ俺達が少なくとも此処は地球でしかも我々の知っている日本であるという証拠に他ならないからだ。


「しかし……」

「しかし?」

「しかし、デカイな。

 こんなのをたった4人で動かせるのか?」


 俺はノンナを見る。ストーカーもノンナを見る。ノンナはヘルシングを見る。ヘルシングは肩を竦めた。誰も知らないらしい。


「まぁ、動かせるでしょう。

 第二次大戦の頃ならイザ知らず。ある程度は自動化されて居ますし、四六時中機関室に張り付く必要も無いはずですわ。

 まぁ、スラミネーターを各所に配置して不具合が出次第直ちに報告する様に仕組みますが」


 それが良い。


「なので、スラミネーターを50体ほど作ってきて下さいまし」

「ですよね~」

「ナンデスの?

 何か文句でも?」

「いいえ、何でもありませんよ」


 (お使いの)プロ、再び。今度は横須賀でお使いスタート!


「トーキン、横須賀でスライムが生息している場所は何処だ?」

「す、スライムですか?

 え、えっとですね……」


 トーキンはオイと脇に居た教授に尋ねる。しかし、教授共は分からんという顔で首を横に振る。まぁ、此処の人間じゃ無いだろうからね。

 しょうが無いので冒険者ギルドへ向かう事にした。多脚装甲車の荷台からバイクを下ろす。軍用バイクだ。名前はしらんけど、自衛隊が使っていた電動バイク。音もなく走れるから偵察にはうってつけとか。荷台には大型の無線機が載せられるそうだ。長いアンテナが付いた奴。

 ビヨンビヨンする奴な。


「何処行くのよ!」

「横須賀の冒険者ギルドだよ。

 お前も付いて来る気か?」

「行く!」

「だが断る。

 お前は問題しか起こさんからお留守番だ。それに海に落ちたから服を乾かして序に風呂に入れ」


 ストーカーがボーっとしていたので君は付いて来なされと呼び、二人乗り。何かあると困るので銃を持って行こう。旦那銃とカービン銃。

 盗んだバイクで走りだす!人は居ない。我々を知る人間も居ない。この世で我々を知るのはただの4人。夕暮れの横須賀を走って横須賀冒険者ギルドに辿り着くと何やらこっちはこっちで人集りが出来ていた。


「どうしたんでしょうか?」

「さぁ?

 取り敢えず、行くべ」


 いつもの様に慢心全開でゴーマンかまして進んでいく。

 進路を塞ぐ奴は杖で退けと払い除け、カウンターまで進んでいく。カウンターには多数の屈強な男や何か魔術師っぽい女が詰め寄っていた。ギルドの受付嬢とギルド長と思われるオッサンは困ったようにそいつ等に掛りっきりである。

 俺がオイと声を掛けても無視された。


「しょうが無い」


 懐から旦那銃を取り出し、上にズバンと撃つ。一発撃つとびっくりするぐらいに静かになった。


「騒がしいぞ、下等人種共が。

 私は此処の連中に用事がある。雑種共は早急に退け」

「何だとテメェ!」


 文句を言いまくってった男が俺に殴りかかってくるので俺は杖でそいつのみぞおちを軽く突く。本気で突くと死ぬからね。しょうが無いね。

 男は腹を抑えてそのまま数歩下がると俺を睨んできた。防具付けてる分ある程度のダメージは抑えられた様だ。


「私は寛大だ。跪き、頭を垂れるのであれば許してやる。

 が、尚もやるというのであれば容赦はせんぞ?」


 俺の言葉に男は上等だ!と腰に下げていた剣を引き抜く。マジで?

 俺は指を鳴らし、男をハッキング。体を動かせないようにしてから男には体中が節足動物が這い回る幻覚を見せる。体も動かない。ただし首から上は自由に動かせ声も出せる状態にする。所謂ジャンキーが自分の体を虫が這い回るっていう幻覚を見せるのと同じだな。

 男は悲鳴を上げて虫を取ってくれと叫びだした。


「死ぬまでそうしていろ。

 ギルド長」


 俺の言葉に俺が見立てた男がハイと返事をして俺の前に。


「スライムが大量に集まっている場所を教えろ。

 序に案内人を見繕え。報酬はこの剣だ」


 短剣を懐から取り出してカウンターに放る。ギルド長はその短剣を失礼しますと受け取り光に翳し、それから脇に居たカウンター嬢に誰かを呼んで来いと告げる。ギルド長は暫しお待ちを告げるので俺はストーカー君を見た。


「この人どうするんですか?」

「3日ぐらいしたら動けるように細工してるから3日間はこのままだ。

 流石にこの程度では殺さんよ」

「何か精神的に死にそうなんですけど……」


 SAN値直葬だな。俺だったら1時間後には舌噛んで死んでる。

 暫くすると先ほどのカウンター嬢がエルフの少女を連れて来た。ショートパンツに革製のサンダルみたいなのを履いており、上半身はチューブトップ。ただし、上着の代わりにフード付きのローブみたいなのを被っている。

 背中には弓と矢筒に腰には大きめのポーチと短剣を下げていた。


「はいはい、何ですか~?」

「うん、この短剣を鑑定して欲しいんだ」


 ギルド長は俺の渡した短剣をエルフに渡す。エルフは拝見と言って片目にルーペを嵌めて短剣を覗いた。覗いた瞬間、うぁ!?と変な声を出しルーペを外した。


「こ、この短剣オリハルコンダガーだよ!?

 しかも、こんな上質なオリハルコンで作られた剣何か知らないよ!?どうしたのこれ?!」

「そ、その、この方が……」


 ギルド長が驚いた顔で俺達を見る。エルフの少女は俺とストーカー君を見てあらイケメンと漏らした。やったぜ。


「なんでも良い。さっさとスライムの生息域まで案内せよ」

「し、しかし、この様な報酬では吊り合いが取れません!」

「ふん。私を案内する名誉に較べればその程度の剣はカスにも劣る。

 さっさと案内せよ」

「しかしですね……」

「ツェペシュ様、どうやら此方の冒険者はガメついようです。

 吊り合わないと言いつつもっと要求しているのでは?」


 ストーカーが暗に面倒臭いから掛け金倍にして募集しては?と俺に提案する。


「成る程。

 では更に希望の武器をくれてやろう。それでどうだ?」

「やります!」


 そう言うとエルフの少女がシュバッと手を挙げた。ギルド長がエルフに何かを言おうとしたがエルフはそのままギルド長をカウンターの隅に。盗聴モード…オン!


「多分、あの人達凄いお金持ちよ!

 ああ言う手合はプライドも相まってこの短剣以下の物は提示しないわ。と、言うかこの短剣ですらカスとか言ってるんだもん。

 下手に拒否ると殺されるかもよ?」

「うぅ……確かに。

 凄い魔力を保有してるし、指を鳴らすだけで魔術を行使してたから多分帝都の方の偉い学者様ナンダロウけど……頼めるかい?」

「もち!任せて下さいよ」


 二人はそんな感じのやり取りをした後、俺達の前にやって来た。


「分かりました。

 此方の銀の冒険者の……」

「エミリーです!

 よろしくお願いします!」


 エミリーと名乗ったエルフは俺に右手を差し出す。俺はその手を握らずストーカーを見やる。


「此方はツェペシュ様だ。

 ヴラディスラウス“ユウ”ツェペシュ様。我々の主だ」

「は、はぁ……

 その、ツェペシュ様は何処の貴族様で?」

「フン、貴族ではない。

 貴様等下等人種共は私達を吸血鬼と呼んだが、私達は私達の事を人間であると思っている」


 たかが壁を歩いたり、死体を操ったりしただけで恐れ戦くのだからお笑い種だとストーカーに告げる。ストーカーも全くですと頷いた。


「それで、貴様は何がほしい?

 銃か?剣か?弓か?望む物なら何でもやろう」

「な、ならば弓を!

 弓を下さい!」

「構わん。だが、先に案内だ」

「勿論です!こっちです!」


 こうして、俺達は案内人を手に入れたのであった。

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登場人物


・エミリー

エルフで鑑定屋兼中堅冒険者

二式大艇の事ではない

弓使いであるが多分英霊召喚だとキャスター辺りで召喚される


・係留柱

範馬じゃないほうのユージローや若大将が足掛ける奴

リーゼント頭で基本黄色

英語だとボラード

海保曰く船の上のはビット、へぇ~


・ノンナ様

1万3千トンの船を一人で押せる凄い奴だよ!

クレーンゲームにも自信がある凄い奴だよ!

ヘルシングが怖い凄い奴だよ!

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