血ぃすーたろかー15回目
「……一昨日のいじめっ子ってどいつだったかしら?」
ノンナが教室をキョロキョロ見渡した後、俺を見る。俺もそう言えば顔を覚えていないし、名前すら覚えていなかった。
「土人。貴様をイジメていた奴はどいつだ?」
俺はいじめられっ子を脇に下ろし、代わりに拳銃を引き抜いて尋ねた。少女は答えるのに臆した様子で教室を見てから、ギュッと自分のローブの裾を握り締める。ふむ、どうやらいじめられっ子と言うのは中々どうしていじめっ子には反抗できない様だ。
しょうが無いので手短に居た生徒に尋ねることにした。
「土人。この娘をイジメていた奴は誰だったか?
お前か?」
俺がスライドをガシャリと重々しく引きながら敢えてゆっくり尋ねた。すると生徒はヒィッと悲鳴を上げ直ぐに振り返ってから一番後ろで固まって座っていた一群を指差した。そいつ等は俺等の視線から出来る限り逃げようとしていた。
俺は生徒に礼を告げ、ストーカーとノンナに教室の入口に立つよう告げる。
「さて、何故、私が此処に来たのかよく分かっているようだな、虫ケラ共」
俺はゆっくりゆっくりと歩いて歩いて行き、椅子に座ってガタガタ震えているいじめっ子の元に。3人掛けの長椅子と長机で大学の講義のように好きな席に座ってよし、階段教室だ。
一番後ろに行き、いじめっ子達の視線にまで顔を下げる。三人とも姿勢正しく、手は膝の上。漏れ無くアンモニアとウンコの臭いがしていた。
「貴様等虫ケラ共は超えてはならん一線を越えた。
娘の親が、娘の為に手縫いしたワンピースを、破き、切り裂いた上に焦がした」
俺は脇の白い壁に向かって掌を向け、ナノマシンを使って先ほど見たボロボロのワンピースを描いてみせる。白い壁、ナノマシンが燃えてその焦げ跡と煤でボロボロのワンピースを描き出すと、全員が驚いた。
「私は寛大だ。
だが、私の仲間は違う。特に其処に居るノンナ・ヒラコーは非常に怒っている」
俺がノンナを指差すとノンナは手にしたスレッジハンマーをいじめっ子に向けてさっさと中庭に逆さ吊りにして晒してそのまま逆さ吊りで死刑にするわよ!と物騒にも程が有ることを言い出した。
逆さ吊りは最終的に頭に血が登りすぎて血管が切れて死ぬんだったっけ?
ノンナの発言にいじめっ子達は漸く顔を上げて俺を見上げる。
「人間は過ちを犯す。私はそう言った筈だ。真の過ちとは、過ちを改めない事を言うのだ。
そして、貴様等は真の過ちを改めなかった。チャンスはくれてやった。反省の機会もやった。なのに、僅か2日でこれだ。貴様等、人の成りをした鳥ぞ。いや、鳥より酷い虫ケラぞ。
貴様等があの娘をイジメたのは取るに足らん理由だ。土人同士が何しようがそれは良い。我々も暇潰しでそれを眺め介入し、掻き回す。
土人と言えど人だ。我々とて其処まで手荒な事はしない。だが、今回は違う。お前達の行った事は人としてやってはいけないことだ」
俺は前に歩いて行く。
「此処は我々の戯れに付き合って貰おう。
今は何の時間だ?」
教師に尋ねると魔術基礎だと返って来た。
「ふむ。では社会の勉強だ。
政治体制についての勉強を教えてやろう。民主主義と言う物だ」
ノンナが口をへの字に曲げてさっさと殺ろうと言うので黙って聞くよう告げる。
「この国で最も偉いのは皇帝のラーキンだ。
トーキンの姉らしいな」
黒板に冠を被った棒人間を描く。
「その下に貴族がいる」
貴族はボタン付きの服を着せた棒人間。
「そして、更にその下に騎士だの、農民だのが居る。そうだな?」
教師に確認を取ると頷いた。
「この中で一番偉いのは誰ぞ?」
いじめられっ子を指名すると皇帝陛下ですと答えた。
そう、ラーキンだ。コイツが何もかもを決める。だが、民主主義は違う。民主主義と言うのは大抵は国民が1人1人選んだ代表が話し合い、何事も決定をする。
「つまり、多数決をする事になる。
此処ではお前達1人1人にこの虫けら共の処遇を決めさせようと思う。全責任はこの私が受け持とう。このアホ共を殺すと決定したならば私とノンナ、ストーカーが責任を持って殺す。諸君等には一切の責任はゆかない。皇帝が文句を言おうと、私が許す。
では、初めにこの娘がその虫けら共に何をされたのか言っていこう。お前達もこの虫けら共をどうするのかその理由がなければ考えづらいだろうからな」
それから娘が今まで受けてきた仕打ちを尋ねる。最初はポツポツと、淡々と語っていったが次第に感情が籠もり、怒りと悲しみに満ちた声色に変わる。最後はボロボロと泣きながらとても辛かったと告げた。
何人かの生徒はいじめられっ子に同情して貰い泣きしている。
「貴様等も私も実際に体験しては居ない。だから、この娘が感じている怒り、憎しみ、悲しみをそのまま分かってやることは不可能である。だが、想像は出来る筈だ。
貴様等にも親兄弟肉親から貰ったとても大切な物が有る筈だ。貴様等も汚水を被せられた際の嫌悪と惨めさが想像できる筈だ。
とてもとても嫌で、悲しい筈だ。そして、それを平然とやり、一度は反省し許される機会を得ながらそれを唾棄した虫ケラ共をどうするか。お前達が決めろ」
俺はノンナを見やる。ノンナは持っていたスレッジハンマーの柄でドンと床を突き声を上げる。
「殺すべきだ!
戦争にだって守るべきルールが有り、立てるべき忠義があり、メンツがある。そして、それらを破った者は戦士ではないし、賞賛されるべき敵でもなければ隊伍を並べる味方ですら無い!卑しい虫ケラだ!
お前達はそんなクズと同じ空気を吸っていて平気なのか?私は無理ね!今直ぐにでもこの手で締め上げて殺してやるわ!
よって、私は虫けら共を殺して晒しあげる事を提案するわ!」
次にストーカーを見る。
「僕は如何に虫ケラでも命を奪うのは良くないと思う。
だが、彼等は最早“人”じゃない。犬だって鞭を打たれれば悪さはしない。そして、彼等は一度鞭を打たれたのに懲りずにまたやった。つまり、犬ですら無い。虫だ。
皆、想像して欲しい。君達は廊下を歩いていた。ふと下を見ると足元に小さな虫が歩いている。皆どうする?」
ストーカーは自身の目の前に居た少女を見る。
少女は小さな声で気にしないですと告げた。
「そう。気にしない。つまり、無視をするよね。
僕は、彼等が死ぬまでズッと無視する、居ないものとして扱う事を提案するよ」
二人の意見が出揃った所で、全員が俺を見る。
「私の意見を聞きたいか?」
全員が頷いた。
「私がもし、この娘と同じ立場ならば、虫ケラ共同様、見て見ぬ振りをして来た貴様等も同様に殺す。
教師も、貴様等も一切の慈悲も無く、憐憫も無く、愛も無く、そして、憎しみすらもなく。殺す」
俺の意見に全員が凍り付く。
「だから、私はこの娘に代わってこの場にいる全員をこの手で殺す事を提案する」
さぁ、お前達が決めろと告げると一人の生徒が手を挙げた。女子生徒だった。
「何だ?」
「は、はい。何故、ニーニャさんに決めさせないのですか?」
「何故って、決まってる。
お前達に決めさせた方が面白いからだ」
俺の言葉に全員がざわめいた。
「勘違いするなよ土人共。
私がこうしてこの娘に介入しているのは、確かにこの娘に対する同情もあるが、それ以上に貴様等土人共の倫理観や価値観等を見るという物がある。
もし此処で、貴様等第四の意見を出し、それを採用するのであれば私はそれを支持するし、お前達が私達の意見のどれかを選ぶならばそれを実行に移すだけだ。
さぁ、我々に貴様等の社会が何を教えているのかを見せてくれ」
ニィっと笑って告げると、女子生徒はギュッと口を結び更に手を挙げた。
「何だ?」
「だ、第四の意見を提案します」
女子生徒の言葉に全員が視線を向ける。
「言ってみろ」
「はい。
ニーニャさんがどうするかを決める、と言う案を提案します」
「ほぉ……
つまり、この娘が私の意見を採用した場合、貴様は私に殺されても良い、と?」
少女は俺の言葉にギュッと目を閉じ、それから大きく、そして確りと呼吸をしてから目を開いた。
「はい。
ツェペシュ様が仰られた通り、私達はニーニャさんがいじめられている事を見て見ぬ振りをし、更にはその苦しみも味わっていません。そんな私達にニーニャさんの側に立ち彼等だけを捌く権利はありません」
「自分達も虫けら共と同じと言いたいのか?」
「はい」
俺は全員を見た。これより採決を行う、そう宣言してから全員顔を伏せるよう告げた。
無記名投票って奴やな。これから自分がそうするべきだと思う案に手を上げろと告げる。因みに、虫ケラ共事いじめっ子達には投票権はないので顔は伏せさせるだけである。
全部で40名近くの生徒達だ。
「ではまず、ノンナ・ヒラコーの虫けら共を殺し晒す案」
3人程の生徒が手を挙げた。
2分程時間を置き、降ろせと告げる。
「次、ヴラム“達也”ストーカーの連中が死ぬまで無視をする案」
これは結構多くの人間が手を挙げた。正直一番マトモな案だからな。
10人ほどだ。
「では次、この私、ヴラディスラウス“ユウ”ツェペシュのお前達全員皆殺し案」
流石に誰も手を上げない。まぁ、そうだよね。
「では最後、娘、ニーニャが好きな案を選択するか自身で案を出しそれを実行する」
これに残りの全員が手を挙げた。
其処までと告げ、第四の案が採用されたことを告げる。
「さて、娘。
お前はどうする?虫ケラ共を殺すか?無視するか?それとも虫ケラ共にイジメられているのに助けてくれなかった薄情な者共も皆まとめて殺すか?」
ニーニャは暫く考え、それから、震える声で告げた。
「ゆ、許します……」
「許す?正気か娘?」
「しょ、正気のつもりです。
でも、もう二度とこんな事を誰にもしない。周りの皆も誰かがイジメられていたら必ず助けてあげる。と約束して欲しいです」
ニーニャは俺をジッと見つめた。体は震えているがその目は真っ直ぐと俺を見ている。
「ふむ、良いだろう。
では、虫けら共、前に出て来い」
俺の言葉にいじめっ子共が立ち上がる。そして、そのままぎこちない歩き方で前まで出て来た。
「ふん、見ろ。この不様な様を。
糞を漏らし、小便を垂らしている。そのまま跪け」
いじめっ子達はそのまま言われたとおりに跪く。
「床に額を擦り付けてニーニャの寛大な慈悲の心に感謝し、そしてそんな心の持ち主をイジメていたことを自分という存在を恥じながら詫びろ。大声で、な」
つまり、早い話が土下座である。
「「「ニーニャさん、今までごめんなさい!」」」
いじめっ子共が謝ったのを確認し、次は生徒全体を見る。
「お前達も、ニーニャに誓え。二度とニーニャの様にいじめられっ子を見掛けたら無視をしないと。
そして、無視をしたことを詫びろ。貴様もだ、教師」
俺の言葉に生徒と教師が謝罪をする。ごめんなさい、と。
「ニーニャ、貴様はそれを許すのだ」
「はい。今度からは気を付けて下さい」
これにて一件落着である。一段落ついたと察したらしいトーキン達が教室に入って来た。
「な、何事で?」
「全ては万事解決した。
それと同時に、貴様等教師どもの無能さも露呈した。トーキン。貴様、責任取って学長の座を降りろ。恥ぞ」
トーキンはえ?え?と理解出来無いというかをしている。俺はニーニャについて来いと告げてノンナとストーカーと共に窓から出て行く。因みに割れた窓を散らばった破片達にナノマシン同士で結着せよと命じたら綺麗に元通りに成った。
ニーニャを小脇に抱えて多脚装甲車の前に戻ると一人傘を差したヘルシングが立っていた。
「もう!何処に行っていらしたの!」
「何?何か用?」
「面白い物が出来上がりましたので是非とも、皆さんにご覧いただこうと思いまして!」
ヘルシングは一人、ウキウキ気分で告げた。取り敢えず、多脚装甲車の兵員室に入って修理を命じたワンピースの状態を確認する。新品同様な綺麗な仕上がりに戻っていた。
「うむ。これで元通りか、娘」
カプセルからワンピースを取り出して見せるとニーニャの目尻にはブワッと涙が溢れてきてワンピースをギュッと胸の前に抱き締める。そして、ありがとうございますと泣きながら俺に礼を告げるのだ。
一人、自体に追いつけていないヘルシングは眉を寄せて、一体何ですの?と状況の説明を求めていた。
更新普通に忘れる




