序章 第三話
閃光が収まるとそこには、酒を飲みはしゃいでいる神々の姿(多分神様だと思う)が見えた。
そんな中、八つの頭を持つ巨大な蛇が、声を掛けてきた。
「ラルヴァの嬢ちゃん! 久しぶりだなぁ。うん? 後ろの奴は誰だい?」
八つの口で一気に喋るから声が混ざってすごい変な感じがする。
「八岐大蛇様、お久しぶりです。」
八岐大蛇!? あの須佐之男命に殺られた怪物だよな?
すげぇ! 実在したんだ!
「後ろの方は、緋宮 煉さんです。我らの所為で死んでしまったので、お詫びにアーシュテルに転生させようと連れてきました。これから、天照大御神様と主神ミーリアが召喚の準備をしている中庭に行こうとしていたところです」
「ふーん、あんたがアマテラスが騒いでた子か。
そうか、まぁがんばりなよ」
「はひっ!」
いきなり話振ってくるから、緊張して噛んじゃったよ!
ってか、我らの所為で死んだってどういうことだ?
「お前は、アーシュテルに行くって話だったな。あそこは俺らの世界とは違って魔物とかうようよいるからな……そうだ! 俺の加護をやるよ。水とか寒さとかに強くなるぞ」
マジか! 怖いと思ってたら滅茶苦茶優しい!
「あ、ありがとうございます!」
「では、いきましょう。」
ラルヴァ様と俺は、八岐大蛇と別れ、神殿の中庭に入っていった。
ーーーーー
しかし、何であんなに神々らしき存在がいたんだ?
「何でいっぱい神様いたんですか?」
「ああ、それはですね今日、此処には我がアーシュテルと貴方の世界との文化交流……言わば飲み会ですね。だから大勢の神格を持つ者達が集まっています」
へぇー凄いなぁ……さっきから凄いしか言ってないような気がする。
「そんな中、アーシュテルの主神ミーリアが天照大御神様に何人か日本人を頂戴とお願いしまして、召喚する日本人を探していると交通事故で死ぬはずの六人の中学生がいたので、その子達がトラックに轢かれる所を召喚しようとしたら、」
まさかあの中学生達、そもそも死ぬはずだったからトラックに気づかなかったのか?
「貴方が彼らを突き飛ばし、代わりに貴方が死んでしまいました。そんな因果律は作ってない筈らしいのですがね。
ということで、我ら神々の所為で死んでしまった貴方にお詫びと謝罪をしなければなりません」
神様ってなんか思ったよりちゃんとしてんだなー。
「……貴方、今なんか失礼な事を考えてましたね? まぁ、良いでしょう。着きましたよ」
ラルヴァ様が、そう言いストーンサークルの紋章が描かれた大理石の扉を開いた。
扉の向こうは、さながらエデンの園だ。摺鉢の様な構造で、中心部にストーンサークルがある。
そこに、和服を着た美人が立っている。
……多分あの和服美人が天照大御神だろう。で、隣に居るのがミーリア神だろうな。
間違いないと思う。
「彼処にいらっしゃるのが、天照大御神様と主神ミーリアです。私が案内するのは、此処までです。いずれアーシュテルでも会うでしょう。それでは」
やっぱりね。天照大御神様、綺麗だなぁ。
俺がラルヴァ様と別れ二人の前に行った。すると、天照大御神様が口を開いた。
「来たか。お待ちしておりましたぞ緋宮 煉殿。貴殿にお詫びしなければならない事があるのじゃ。我らの所為で貴殿の命を奪ってしまったのじゃ。大変申し訳ない」
「い、いえいえ、俺は気にしていませんから。顔をあげて下さい」
美人が頭を下げるなんて見てられない。
「すまぬな。そう言っていただけるとありがたい。
しかし、何かお詫びをしなければ、我々神の名が廃れらのじゃ。」
天照大御神様は、真剣な表情で言った。
「此奴。ミーリアの世界、アーシュテルに転生していだだけ無いじゃろか? チート能力っていうのか? これも付けさせる。なぁ、ミーリア?」
転生、キタコレ! しかもチートだって! もう、僕ちゃん頑張っちゃうもんね。
「ええ。任せて頂戴」
ミーリア神が自信に満ちた声で返事をした。
「では、アーシュテルの説明もミーリアがやってくれるじゃろ。最後に私の祝福を授けるのじゃ。ほれ。
では、妾は中学生達を此処に召喚することにする。彼らを眠らせたままなのでな。遅くなると記憶障害などが出てしまうかもしれん。」