辺境都市カルケル 第二十三話
また二ヶ月開けてしまった……。
祝90000pv 20000ユニーク!
ありがとうございます。
先程カルケルに着いた俺達だが、人混みをすり抜けつつギルドに着いた。案の定、ギルドの中は多くの冒険者達で混雑していた。
「結構混んでるな。……取り敢えず、エリスさんの列に並ぼうか。あ、シェスカ。これ渡すの忘れた」
そう言ってストレージから革袋を取り出してシェスカに手渡す。
「レンさんこれは?」
「俺達が助ける前に三人で倒したゴブリンの討伐証明と魔石だよ」
「え、拾ってくれていたのですか?」
「あぁ」
「折角倒したのに勿体無いでしょ?」
「じゃ、渡すものも渡したし、今日はここで別れるとしよう。また会おう」
「じゃあね、ほら、三人も担当の人の列に並ばないと」
ベルゼブブはそう言って三人を担当の列に並ば
せる。ギルドの受付嬢達は優秀だからな、直ぐに列が進んでいく。長かった列もあっという間に捌かれ、俺達の順番になった。
「こんばんは、二人とも」
「こんばんは。ゴブリンの調査の依頼が完了したので、報告しに来ました」
「はい、ギルドカードの提出と報告をお願いします」
「わかりました」
二枚のギルドカードを提出し、ゴブリンの集落であった事を報告する。
「エリスさんの言っていた通り、ゴブリンキングと取り巻き達が現れて戦闘に成りました。全て討伐しましたけど」
「えっ、本当ですか? 良く倒せましたね……。ゴブリンキングはBランク冒険者がパーティーを組んで倒せる魔物ですよ?」
「そ、そうなんですか……ちょっと危なかったかな?」
「そうだね……。まさか鬼化までされるなんて、僕達じゃ無かったら死んでたんじゃないのかい?」
実際、あのゴブリンキングや、上位種ゴブリン達は異常だった。死にかけの仲間を殺してのレベルアップや、吸精の大剣や吸魔の大剣、果てにはゴブリンキングの鬼化。……並みの冒険者だったら普通に死が約束されていただろう。俺達だって、ベルゼブブの魔法や、暴食の力、悪食が無かったら、こうして生きていただろうか? いや、多分無理だろう。
結局の所、俺は平和な世界で生きていた高校生だ。スキルやステータスが有っても、所詮は付け焼き刃。俺の技術なんかじゃ無い。
……取り敢えず、今は手続きを終わらせよう。
「まぁ、どうにか無事に帰ってこれましたよ。それで、魔石や討伐証明は何処に提出すれば良いんですか?」
「あ、はい。このトレーに入れてください」
「わかりました」
エリスさんは、銀色の大きなトレーを取り出し、カウンターに置く。このサイズならゴブリンキング以外は問題なく置けるだろう。
ストレージからゴブリンの魔石と右耳を取り出す。ガラガラと音を立てながらトレーに積み重なる。
「まぁまぁ良い感じの数なんじゃ無いかな?」
「そうみたいですね。見た感じでは50個ほど……普通でしたら、魔石も討伐証明も20個ほどお持ちになる方が多いのですがね……」
エリスさんが少し呆れてる。まぁ、俺達がこのギルドに来てからの行動を見てれば呆れたくもなるだろうな。
「これで終わりです。数えてください。あと、買取もお願いします」
「は、はい……。ではレンさん、少々お待ち下さい」
エリスさんはそう言ってトレーを持ち、カウンターを離れる。そんなに量がある訳でもないし、すぐに数え終わるだろう。そういえば、グレートハンターウルフはどうなったんだろうか?
「ベルゼブブ、グレートハンターウルフの解体とかって終わったのかな?」
「うーん、どうだろう……エリスさんが戻って来たら聞いたらどうだい?」
「そうだな」
グレートハンターウルフは希少だって話だからな。素材を売ったらかなりの金額になるのは確定だろう。まぁ、素材を取っておいて装備を作るっていう手も有るか……。生産系のスキルとか手に入れたいな。
「お待たせしました」
おや、エリスさんが戻って来た。手に何かの用紙と膨らんだ皮袋を持っている。
「買取の詳細と討伐報酬の報告です。読み上げますね」
「お願いします」
「では、魔石の買取から。ゴブリンの魔石が42個で銀貨8枚と銅貨40枚。ホブゴブリンの魔石が4個で銀貨1枚と銅貨80枚。ゴブリンソードマン、ガードマン、ハンターの魔石が一個ずつで銀貨1枚と銅貨35枚。ソルジャー系の魔石が5個で銀貨3枚と銅貨50枚。ゴブリンアサシンの魔石が1個で銀貨10枚。ゴブリンジェネラルの魔石が1個で銀貨30枚。ゴブリンキングの魔石が1個で金貨10枚。ゴブリンの強化種の魔石が1個で銅貨30枚。合わせて、金貨10枚、銀貨55枚、銅貨が35枚です。ご確認下さい」
「は、はい」
「……うん」
エリスさんが差し出した皮袋を手に取り、中身を見る。確かに金額通りに入っている。俺とベルゼブブは驚愕していた。
この世界の銅貨は大体百円で、銀貨が百倍の一万円、金貨はその百倍だから、百万円だぜ?
つまり今回だけで、一千万円以上稼げたという事だ! それに、まだ討伐報酬が残っているんだぞ?
「次は討伐報酬ですね。……ゴブリン42体で銀貨4枚と銅貨20枚。ホブゴブリン、ソードマン、ガードマン、ハンター、合わせて7体で銀貨1枚と銅貨40枚。ソルジャー系が5体で銀貨2枚と銅貨50枚。ゴブリンアサシン1体で銀貨3枚。ジェネラル1体で銀貨10枚。そして、ゴブリンキングが1体で金貨5枚。合わせて、金貨5枚、銀貨21枚、銅貨10枚です。此方もご確認下さい。それと、ギルドカードの返却です」
さっきと同じ様に中身を確かめる。
勿論ちゃんと提示された金額通りに入っている。
しっかりと確認してから、ギルドカードと共にストレージへと収納する。
「やったなベルゼブブ! かなり金欠気味だったが、これで懐が温まったぜ」
「うん、そうだねレン君! これで沢山ご飯食べられるって訳だね」
「いやいや……。金が有るって言っても、食費に割く分はそんなに有るわけじゃ無いからな」
「そ、そんな……半分位ご飯に使ってもいいじゃないかぁ……」
ガクッと落ち込むベルゼブブ。
うーむ、ベルゼブブにお小遣いをあげて、そこから間食とか出させるべきかな?
まぁそれは後で良いか。グレートハンターウルフの事を聞かなくちゃならないしな。
「エリスさん、お聞きしたいんですが」
「はい、何か?」
「あのですね、グレートハンターウルフの解体なんですけど、終わったんですか?」
「はい、解体は全て終了しています。解体場の方で保管していますが確認しますか?」
解体が終わっているなら、換金してもらってもいいけど、素材欲しいしな。 見に行くとしよう。
「どうするベルゼブブ?」
「ん、まぁ見に行っても良いんじゃないかい? 今日は黒鉄の剣亭に戻るだけだしね」
幸い、急いでギルドに来たから夕食の時間までにはまだ余裕がある。解体は終わっているんだからそんなに時間は取られないだろうし。
「じゃぁ、エリスさんお願いします」
「わかりました。付いてきてください」
カウンターからギルド裏の解体場まで移動する。
エリスさんは受付嬢の仕事を他の受付の方に任せて来たみたいだ。
解体場の扉を開くと血の匂いが微か漂っている。
どうやら、解体が終わってからそんなに時間が経ってないようだ。
「マルコさん、お連れしましたよ」
屋内に入ると、解体するための台座や道具を洗うマルコさん達が居た。
「エリスー! あと、レンとベルゼブブだっけ? 待ってたぜ」
「こんにちは」
「待たせたね」
マルコさんは作業の手を止め俺達に近づく。
「いやぁ、本当にグレートハンターウルフだったなんてなぁ。解体は完璧だ。バッチリだぜ?
かなり綺麗に殺したみたいだしな。普通ならもっと切り傷が多くて折角の素材が駄目になっちまうもんなんだがな。おかげで、解体もやり易かったぜ?」
死体の損傷が少なく素材も品質が良いみたいだ。
まぁ基本的に一撃で倒したからな。首とかの急所を狙って。
「全部で二十四体だった。たっく、おたくらには規格外って言葉が良く似合うな」
「二十四体もですかっ!? ゴブリンキングの件といい、流石ですねレンさん」
「いえいえ……」
規格外か……。大袈裟なんじゃないか?
討伐ランクが高いとか知らんけど、別にそこまで強い魔物でもなかった様な。
今日戦ったゴブリンジェネラルやキングの方が余程強かったとぞ?
「まぁ、取り敢えず確認してくれよ。着いてきてくれ」
マルコさんはそう言って俺達を素材が保管されている倉庫に連れて行く。
倉庫は解体場の裏側に位置しており、直ぐに向かう事が出来る作りに成っている様だ。
倉庫に近づくにつれて、ほんのりと皮革の独特な匂いがする。
……確かこの匂いは革本来の匂いでは無く、革の製造過程で使われる、なめし剤やら接着剤などの科学薬品の香りらしい。って事は、アルデヒド?
「なぁベルゼブブ、この世界にも防腐剤でアルデヒドとかって使っているのか?」
「どうなんだろうね? 科学はそんなに発展してないし、アルデヒド自体も発見されてないんじゃないかな……有ったとしても使ってないんじゃ無い? まぁ、似たような物なら有るかもしれないよ?」
それもそうだな。何もかも地球とは違うからな。何が有っても、そう不思議な事じゃない。
そんな話をしているうちに倉庫前に着いた。
「此処だぜ。ちょっと待てよ、今明かりをつけるからな」
扉を開くと、ヒンヤリとした空気がながれ出す。
マルコさんは直ぐ近くの壁に設置されている石板の様な物に手をかざし、魔力を流すと照明が点灯する。倉庫内は結構広く、ギルドのホール程の面積があり、素材が置かれている棚が数多く並んでいる。
「じゃぁ、取ってくるから此処で待っててくれよ」
そう言って茶髪のボブカットを揺らし倉庫の奥へ進むと数分でかなり大きい台車を転がし帰ってきた。
台車の上には、毛皮やら骨やらと、様々な素材が綺麗に並べられていた。
「たっく、かなり希少な魔物だし、状態もかなり良かったからな、解体する時は緊張したぜ? ……詳細を読み上げるから聞いててくれよな」
バインダーらしき物を取り出し、素材の確認を始める。
二十数体から取れた素材だし、結構な量だろう。これは売却すると、なかなかの金額を期待できるのではないのか?
「えーっと、まずは魔石だな。グレートハンターウルフの魔石が24個」
マルコさんはバインダーを持つ反対の手で台車に置かれている皮袋を持ち上げ開いて見せる。確かに中には拳大の魔石が24個存在している。
「それと、毛皮が24枚に牙が48本、骨、肉、内臓も24体分。眼球が48個、爪が384本。血液がリドル樽で34樽だ」
「リドル樽が34樽分ですか!?」
やはり、かなりの量の素材が取れたようだ。隣でエリスさんも驚いている。
それでリドル樽っていうのは、内容量が約10リットルの樽の事で、この世界では一般的な大きさの樽なんだとか。
つまり、血液は全部でなんと、約340リットル。まぁグレートハンターウルフ自体が2メートル程だしな。それが24体分なんだ。それぐらい有っても当然と言えるだろう。
「血も錬金術の素材になるからな。集めるのにも神経使ったぜ。なんせ数滴でも、まぁまぁな値段になるんだからな」
「そうですね……時価によりますけど、大体10滴で銀貨1枚といったところですかね」
銀貨1枚って事は日本円に直すと約一万円。
一滴でも千円もするのかっ!? マジかよエリスさん?
「じゅ、10滴でそんなに高く売れるんですかっ!」
驚いて声が少し上ずってしまった。10滴で銀貨1枚なら、樽一つで一体何枚になるんだろうか。
「やったねーレン君、これで僕達はかなりのお金持ちだよ。これなら沢山ご飯食べられるよね? 勿論食べるよね?」
そう言ってベルゼブブが俺の事を見上げてくる。
「いやなベルゼブブ。別に食費に使ってもいいんだぜ? だけど、いざという時の為に貯金しときたいんだよ」
「別に少しくらい良いじゃないか、お金は天下の回りもの。使ってナンボなんだよ?」
「本当に少しなら良いんだが、ベルゼブブはかなり食べるだろ? お小遣いあげる様にするからそれから好きなだけ食べてくれ」
これからの俺達にとってかなり大事な会話をしていると「お前らの食費事情をこんな所でしてるんじゃない」と、マルコさんが話に割り込んで来る。
「お前ら、そういう話は帰ってしてくれよ? 素材はどうするんだ? ん? 売るのか、持って帰るのか」
おっと、そうだった。……取り敢えず素材は持って帰る事にするとしよう。ギルドに来れば何時でも買い取って貰えるだろうし、何ならアスガン商会のマリさんに売っても良い。
「魔石は換金して貰って、それ以外は持って帰る事にします」
「あぁ、わかった。じゃぁ、魔石の代金はギルドで貰ってくれ。素材は此処で取っていって欲しい」
「あっ、忘れてました。マルコさん、今回解体した魔物と素材の詳細の書類の提出お願いしますね」
「あ、やべっ! 記録は取ってあるけど書類に直してないんだ……エリス、明日でも良いか?」
「はぁ、わかりました。いつもの事ですから。明日の昼頃までに必ず提出して下さい。本当は良く無いんですからね?」
どうやらマルコさんは、書類の提出を良くサボるようだな。それを許すエリスさんは優しいな。
台車から机の様なスペースに素材を移すマルコさん。移し終わると「また何か解体するなら言ってくれ。じゃあな」と言って倉庫の奥へと台車を押していった。
「では、ギルドに戻りましょうか」
「そうだね」
「魔石を換金して帰るぞベルゼブブ」
俺達は解体場を離れ、ギルドへと戻った。




