第一章 辺境都市カルケル 第十二話
今回は宿屋でのひと時です。
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俺たちが黒鉄の剣亭に戻ったのは夕方の鐘が鳴るとほぼ同時だった。
中央街に建てられた塔、時知らせの塔からゴーッン!ゴーッン!と鈍い鐘の音が響く。
中に入ると、シャリアさんが受付で仕事をしていた。
「ただいま戻りました」
「ただいま!」
「おかえりなさい。良い買い物は出来ましたか?」
「はい。沢山良いものを買うことができました」
「うん。レン君に服を買って貰ったんだ」
「良かったね、ベルゼブブちゃん。レン君、もう夕食が出来てますよ。食堂に行って厨房に居る私の夫に食事を出してと頼めば、お食事を出してもらえますから」
「わかりました」
「ありがとう。食べてくるよ」
シャリアさんに言われた通り、食堂に向かうと厨房にダンディで強面なおじさんが料理を宿の客と思わしき人に出していた。
「おやっさん。今日もうまそうだな」
「ありがとよ。ほら、さっさと席に座って食え」
「…すみません。料理を出して貰えますか?」
「僕にもください」
「おう。初めて見る顔だな…宿泊客か?なら料金はいらん。俺はクックっていうんだ。この宿の主人で、お前らは?」
「俺はレンです今日冒険者に成りました」
「僕の名前はベルゼブブ。僕も今日から冒険者に成ったんだ」
「そうか。俺も昔は冒険者だったんだぜ?しかもAランクだった」
「そうなんですか!」
「それは凄いね。でもなんで冒険者辞めちゃったんだい?」
「ん?あぁ。まぁそれを聞きたいなら後で俺の所に来てくれ。料理が覚めちまうからな。ほら、二人分だ。献立はジャイアントボアのシチューと黒パンだ。ジャイアントボアを煮込むのが大変だったぜ」
聞くと、ジャイアントボアの肉は固いが、高温度で長時間煮込むと旨味が出てきて凄く美味いらしい。
そもそもの個体数が多くなく、高価ならしい。
「美味しそうだねレン君!早く食べようよ」
「あぁ。クックさん頂きますね」
「おう。気をつけて食べろよ?やけどするからな」
席に着き、ジャイアントボアのシチューを食べた。
肉を噛むとそこから旨味が溢れ出し…もう、めちゃくちゃ美味かった。
ベルゼブブも美味しそうに食べている。
黒パンをシチューに浸し頬張る姿が何処となく小動物みたいだ。とても可愛い。
「ベルゼブブ、ほっぺにシチューが付いてるぞ。ほら取ってやるから動くなよ」
「んっ。レン君…僕は子供じゃ無いんだから自分で取れるよ?」
料理を食べ終わり部屋に戻った。
貰った武器の手入れをしたりストレージを整理したり時間を潰した。
「レン君。そろそろクックさんに冒険者辞めた理由聞きに行こうよ」
「ん?そうだな…じゃあ行こうか」
部屋に鍵を掛け一階に下りると人がいなくなった食堂でご飯を食べているシャリアさん達がいた。
どうやら残った料理を家族で食べているようだ。
「クックさん冒険者辞めた理由教えてくれないかい?」
「何か、今後の参考にならないかと思いまして」
「…いいぜ。じゃあ少し昔話をするか」
「お父さんの昔の話はあまり聞いた事がないから楽しみ!」
「メルカびっくりするわよ」
「冒険者をやっていた頃、俺は黒の刃という二つ名を付けられる程の冒険者だった。黒鉄製の魔法剣を携えて、魔物を狩ったものだぜ…。」
俺は何時ものように魔物を狩っていた。
たまたま街道の外れに馬車が襲われた跡が見つけた。近づくと周りに複数の新しい足跡と瀕死の男を見つけた。足跡はオークのもので、瀕死の男が俺に娘を助けてって言って死んだ。ポーションを渡す暇も無かった。
俺は直ぐに足跡を追った。女がオークに捕まると死ぬまで苗床にされる運命しか待ってない。それにオークに犯されると身体より先に精神がやられる。自殺してしまう女も多いんだ。
まぁ、間一髪って言うのかな?俺がオークのアジトに着くとその娘はオークに服を破かれ恐怖に震えていて、複数のオークに犯される直前だった。
「ブオォォ!ブモッ!」
「ブウウウゥゥッ!」
「嫌!嫌ぁ!来ないで…やめて何するの!離して!汚い物近づけないでよ!嫌…やめてよ…初めてがオークなんてやだよ…」
「ブルルルルッルブモッ!」
「や、やめて…本当にそれだけはやめて…。
だ、誰かぁ!誰か助けて!」
「ドラァアアッ!喰らえ!」
オークの野郎が少女の足を掴み、汚ねぇもんを股に押し付けようとしてる。
俺はそのオークの首を魔法剣で斬りとばす。
ブシャアアア!と血しぶきが舞う。
「ブモッ⁉︎」
「へえっ?」
「ブ、ブモオオオオオォォオオ!」
二匹のオーク仲間を殺され怒り狂ってる。
そんなオークどもを気にせず一匹の腕を飛ばし、隣のオークの首を切る。
「ブモオッ!ブモオォォオオッ!」
「ブモブモ煩えなっ!」
痛みに悶えるオークの胸に魔法剣を突き刺し絶命させる。
剣を振り、オークの血を飛ばす。
「…嬢ちゃん。大丈夫か?」
そう言いながら振り返ると、泣いてる裸の美少女が居た訳だよ。
俺は咄嗟に顔を逸らし着ている服を少女に被せた。
「あ…あぁ、た、助けてくれてありがとう」
少女は少しベソかきながら感謝の言葉を口にしていた。
「まぁその少女がシャリアだったって訳だ。
俺はシャリアに一目惚れ。その五年後、シャリアと結婚して俺は冒険者を辞め、宿屋を始めたって訳だ。」
「へぇー。お父さんがお母さんを助けたの?」
「そうよ。私もお父さんに助けられて、一目惚れしちゃったの。だからプロポーズされた時は嬉しかったな〜!」
「まぁこんな感じだ。満足したか?」
「はい。ありがとうございました。けど、よく間に合いましたね」
「本当にギリギリだったからな。俺が首を飛ばすのが後五秒くらい遅かったら間に合は無かった」
「奇跡だと僕は思うよ。良かったねシャリアさん」
「ありがとう。もう、消灯の時間に成るから部屋に戻ってくださいね」
「はい。おやすみなさい」
「おやすみ〜!」
「おう。」
「おやすみ!」
「おやすみなさい」
貴重な話を聞けて良かった。
しかし、オークに襲われ危機一髪で助けられるなんて、そりゃ惚れるわな。
俺とベルゼブブは部屋に戻りダブルベッドに入った。
もちろん変な事はしないぜ?
「ねぇ、レン君。今日は疲れたね」
「あぁ。そうだな…濃い一日だった」
「明日からギルドで依頼を受けようね」
「そうしよう。じゃ、ベルゼブブ。おやすみ」
「おやすみなさい…」
ベルゼブブは直ぐに眠りに落ちた。
寝顔も可愛いな…
俺も寝よ。
隣のベルゼブブを見ながら俺も眠りに落ちて行った。
冒険者はAランク以上だと、二つ名を付けられます。




