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私とロボットと子どもたち

作者: 夏野篤砂

1.私


 高校からの帰りだった。


 花壇に妖精のオブジェが在った。


 そして、目が合った。


 妖精は「望みをなんでも叶えよう」と言った。


 私は、「想像したことを叶える道具を生み出す力がほしい」と応えた。


 妖精は、それを叶えた。


 私は、その力で、今の生活を変えることを試みた。


 まず、テストの成績を上げる試みを行った。


 回答を書き込む道具を願えば、目の前に現れた。


 その時点で、自分が社会でとてつもなく力を持ったことを知った。


 紙幣を生み出すこともできたが、お金が理由もなく持った時怪しまれると思った。


 その日より、私は、目立たないように、ゆっくりと心地よい環境を作ることとした。


 成績は少しずつ上げた。わざと間違えることに労力がかかった。


 運動も脚力を上げる靴もあったのだが、目立つと思われ結局使わなかった。


 成績が上がって親はうるさくなくなった。


 宅配便の仕分バイトをした。運動能力を上げる靴はここで役に立った。困ったときは小さな道具を生み出し、誰よりもうまく仕事をこなした。


 バイトをしたことで、それなりの買いものをしても「バイトして買った」で怪しまれずにすんだ。


 大学は、地方の国立大学を選んだ。親から離れることを何よりも重視した。どのみち、卒業までいるつもりはなかったから、どこでもよかったのだ。


 私は大学入学早々にネットで勝負をかけた。


 一体の女性人型ロボットと、一匹のウサギ風ぬいぐるみ型のロボットをネット動画配信をした。


 人型の方は顔の造作が、日本アニメ風に目が大きくなっていなければもはや人と変わらない。


 ウサギ型は、人と同じぐらいの身長はあるが、もっさりとのんびり歩くので愛嬌がある。


 当然生み出した道具であって、どういう仕組みで動いているかなど知らない。


 ただ、一体と一匹のロボットは、見事に言語を操り、表情を見せ、人以上に早く動いた。


 最初は特撮と思われたらしいが、一緒に大学に連れて行くと、あとは勝手に人気がでた。


 国や、学者が、そのロボットのすばらしさに本当に気づいたのは有名になったあとだった。


 私は、顔をできる限りさらさなかった。一切の仕組みを公開しないと言った。実際は仕組みを知らないので公開などできないのだが。


 ロボットは、誘拐されそうになるも、自らで防ぐ能力を持っていた。


 私自身も誘拐されそうになったが、それを防ぐ道具を生み出すことで防いでいた。


 二体のロボットは、私に一生遊んで暮らせる財産をすぐに作った。


 二体は話題になって、グッズがでて、世界各国のイベントやTV出演もこなした。


 ロボットにマネージャをつけることになるほどだった。


 いまだに、この2体と同等のロボットは世にない。


 大学3年になって大学を辞めた。人気の山を終えたロボットには仕事をイベント出演のみにさせ、あと家で家事をこなしてもらっている。


 ロボットは、愚痴を言うわけでなく、なにもなければひっそりとしていた。


 世の中はこの2体のロボットのことを忘れていった。


 いろいろこの能力を使った結果、道具は生み出せても「生き物」は生み出せないことがわかった。



2.子どもたち


 子どもが二人。小学生だろう。コンビニで明らかにお菓子に集中していた。服の袖が汚れていた。


 子どもはチョコをとると走って店を出た。「万引き」というのを初めて見たが、「万引き」とはもう少しばれないように行われるのではないかと思っていると、店員は私を見て親かと聞いたので「違う」と答えた。


 店員が追いかけようとしたので、「関係者」ではあるので、お金を払うといった。店員は非常に面倒な顔をしたが、私がいつも利用している「馴染み」というのもあるのだろう、「子どもが手に持って出たお菓子はどれ」と問われたので、適当に多めに選び代金を払った。


 外に出て車に乗ろうとしたところ、店の駐車場の端でガツガツとお菓子を子ども二人が必死に食べていた。


 「おい。」と声をかけると、少しだけ背の高い方が「もう食った。返せないぞ。お金もないぞ。」と言った。


 あまりに見事に開き直ったので、びっくりした。


 「万引きはよくない」というと、「良くないことは知ってる。でも、おなかがすいた」と言った。もう一人の子どももうなずいている。


 「親は」というと、「いらない」と答えた。もう一人もうなずいている。


 「君たちの行ったことを親に言わなきゃならない」というと、「いらない」と答えた。

 

 「家はどこ」というと、「言わない」と答えた。


 「警察いくか」というと、「いかない」と答えた。小さい子どもは、警察ときいて泣き出した。


 私が困っていると、車から、ウサギ型ロボットが降りてきた。それを見た子ども二人は急に眼を輝かせ「あっ、うさふさ」と言った。


 うさふさというのは、このロボットの名前である。公募で選ばれた。ウサギ型であることと、ふさふさの毛が由来である。


 ふさふさがポーズを取ると、子どもはうさふさに飛びついた。


 私は、このロボットが、子どもに大人気だったのを思い出した。


 うさふさは、子どもを車に誘導して乗せてしまった。後部座席で、うさふさを真ん中に子どもが左右にわかれて乗っている。


 二人はしがみついている。


 後部座席にいたはずの、人型ロボットは助手席に座って、ナビをセットしていた。行先は交番だった。


 私は、うさふさの登場で人が集まりつつあった駐車場をでて交番に向かった。


 交番に着くと、うさふさは子どもをつれて交番に入っていった。


 人型ロボットも入っていった。


 交番は突然うさふさが入ってきてびっくりしていた。


 「警察官がどうしましたか」と言おうとして相手がロボットなので辞めた、うさふさの後に人型が入ってくると、


 女性警察官が、「さくらちゃん!!」と立ち上がってきた。感激している様子なのでファンなのだろう。


 さくらというのは、人型ロボットのことで、最初に公開したときの衣装に桜をデザインしたプリントがあったのでそのように呼ばれるようになった。


 さくらと、うさふさが揃って交番にいるらしいという情報は瞬く間に広がり交番の周りがざわついてきた。


 私は、うさふさにしがみついている二人のことを説明した。


 警官はうさふさの毛から顔を出した二人を見て、ため息をついた。


 「また、お前たちか。」


 ビクッと二人はして、うさふさの後ろに隠れた。


 私は、人が集まってきたので「お任せしていいですか」と聞くと、警官は調書を取らなければなりません。お付き合いいただけないですかね。


 私はあきらめて、警官の書類作成に協力した。


 この二人の子どもは常習犯であった。親は迎えに基本来ず、来たら来たで子供を怒鳴りつけひっぱたくので、誰もいない家に警官がそっと送り届けるのが通例なのだそうだ。


 警官がうさふさから子どもを引き離そうとするが、必死にうさふさの毛を掴み離れなかった。


 うさふさは、悲しい表情をしている。人工?知能は、悲しみを選んでいた。


 さくらが、警官に言った「本日はこの二人をお預かりしてはいけませんか?うさふさと一緒に寝かせてあげたいと思います。」という。


 警官は、さくらがロボットであることから、私に目をむけた。


 私は、「そのようにして、こちらは構いませんが、いいのでしょうか。」


 警官は、「よくはありませんが」といいながら、女性警官に目を向けると、女性警官は「この子らに、とても良いことだと思います。親が何か言ってきたら私が説教してやります!!」


 警官は、何か連絡あったら連絡ください。といった。外はすっかり暗くなっていたのに、人はロボット見たさに交番前に集まっていた。


 さくらが、最初に交番を出て、歩いて近くの公園へ向かった、集まった人は後について行った。


 人がいなくなったところで、車にうさふさと、子ども二人を乗せて家に帰った。


 さくらは、女性警官がパトカーで回収して届けてくれた。女性警官は異常にご機嫌だったらしい。


 家に連れて帰ると、子どもたちは車の中で寝ていた。


 うさふさは、器用に二人を抱きかかえて家に入った。


 さくらは、帰ってくると、私が着なくなった服を器用に子ども服へ裁断し、縫い合わせた。


 さくらは、子どもを起こして風呂に入れた。


 きれいになった二人に立った今できた服を着せて微笑んでいた。


 二人は照れているようだった。


 うさふさは、ソファベッドに座っていた。


 子どもはさくらに連れられて、うさふさの近くにくるとまた抱き着いた。


 うさふさは、二人を抱えて、一緒に寝ていた。


 さくらは、大きな毛布を二人と一匹に掛けた。


 私は、さくらに「つれてきてよかったのだろうか。」と聞くと、「わかりません。でも、喜んでくれると思います。」


 私も今日はこの部屋で寝ることにしよう。そう、さくらにつたえると。


 別室の大きなソファーベッドを持ってきて、うさふさ達のベッドと並べておいた。


 さくらが「今日はここでみんな寝ましょう。私は、なんだか、うれしい気持ちです」と言った。


 私もそう思った。


(おしまい)


 

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