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路上の怪事件?

 ホワイティのご飯は「実験の失敗作」がほとんどだ。

 塩がきつかったり、ほとんど味がしなかったり。この世の物とは思えない激しい色合いの物や、食べ物の形をしていないものまで種類は様々。

 ここ数日は野菜料理の実験が続いていたため、肉や魚にありついた記憶がない。大根が機械から出てきた時点で、ホワイティは職務を放棄した。

 そろそろお肉が食べたい。お魚が食べたい。食に対する欲求が、職に対する忠実さを上回る。


 そして、見つけてしまった。

 ぴちぴちと跳ねる、活きの良いお魚。

 突進してくるあじの開き

 普通の猫なら、相手が干物であろうと何であろうと食い気が勝つ。が、不幸にしてホワイティは使い魔。危険な魔法生物には近づかないようしつけられ、不自然な生き物には警戒するだけの知識や知能を備えている。

 よって。

「ふみゃあああっ!」

 食い気は、恐怖心に負けた。

 毛を逆立てて飛び下がる。が、あじの開きがたまたま石につまづき、ホワイティの方に向きを変えたからさあ大変。

 ホワイティは逃げる。ぐるぐるとその場を逃げる。あじの開きはそのつもりもないのにそれを追う。通りのど真ん中でぐるぐると輪を描くお魚と猫。そこへようやくエリカが追いついた。

 猫、お魚好き。これ、世間の常識。魚、猫追いかけない。これも常識。

 故に。

「あー! それはー、あたしのー、あ~さ~ご~は~ん──!」

 とっちゃー、や~~ぁ~~~~……と腰の砕けそうな寝ぼけ声で叫びながら、お箸を振りかざしたエリカ、輪の中に参戦。突然現れた追跡者に、ホワイティは尻尾をぱんぱんに膨らませて更に逃げる。ぐるぐると逃げる。自分が輪を描いて走っている事に気付く余裕はもはやない。通りの真中でぐるぐると輪を描くお魚と猫と人。

 なお、今のエリカに「振り向いてお魚を捕獲する」という思考はない。

 やがてあじの開きは再び石につまづき、通りの真中を真っ直ぐにぱたぱたと逃げて行った。

 それに気付かず、通りの真中でまだぐるぐると輪を描く猫と人。

「あらあら、どうかしました?」

 玄関からチャムの声。次の瞬間、ホワイティは声の方向に突進して弾丸の如く家の中に逃げ込んだ。

「ねこが~、あたしの~、あさごはんを追いかけたんですぅ~」

 チャムはホワイティの方を振り返る。

 壁際で毛を逆立てているだけで、何かを取った様子はない。

「……何も持ってませんけど?」

「でもー、あたしのー、……あれ?」

 なんとなーく視線を向けたその先で、銀色の光点はぴちぴちと跳ねながら遠ざかりつつあった。

「あーー! ごーはーん──」

 またも駆け出すエリカ。

「……何なのかしらねえ?」

 チャムはしばらくそれを見送ると、玄関のドアを閉めた。

「じゃ、ご飯にしましょうか」

「ふなぁ……」

 諦め風味のホワイティ。いつも通りの朝ご飯。

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