literary club ~文芸部~
少女は思った。
どうすれば面白い小説が書けるのだろうか、と。
人肌恋しい雪の降るある日。
少女の姿は騒がしい教室の中にあった。
窓から入ってきたであろう一片の雪が、真っ白なノートに落ちる。
少女はそれを振り払うことなく、じっと眺めていた。
ほんの少しずつ溶けていく雪。
そしてついにノートに灰色の模様だけを残し、消えてしまう。
その濡れた場所を乾かすかのように、少女は溜息をついた。
ことの始まりは昨年の十一月。
そのころ特にこれといった趣味も興味もなかった少女は、
なにか新しいことを始めたいという思いを持ちつつ
行き先も決めずに校内をふらふらと歩いていた。
「あ……。」
ふと少女は足を止める。
少しだけ空いたドアの隙間から中を覗くと、自分と同じぐらいの歳の人たちが
それぞれに何枚かの原稿用紙を持って真剣な表情で話し合っていた。
かっこいい。すごく、かっこいい。
形の見えない探し物がたった今見つかった。
少女は一つゆっくりと深呼吸をすると力強く足を踏み出した。
ドアを開けたことで集まった視線も何故か心地よくて。
「私も…私も文芸部に入りたいです…!」
◇ ◇ ◇
「よく覚えてたね〜」
突然後ろから声をかけられ、拓人は椅子から一瞬だけ浮かんだ。
「せ、先輩!近いです!」
拓人が書いていた原稿用紙を覗き込もうとする所為で
顔と顔を数センチまで近づけた凛花を手で押し返しながらそう言う。
「しゃって、みひゃいんひゃもん(だって、みたいんだもん)」
押されて上手く喋れていないながらも、言い返す凛花。
もちろん、その目は拓人の原稿用紙から離さない。
「だもん、じゃありません!」
「みしゃいでしゅし?(みたいですし?)」
「言い方の問題じゃないですってば!」
「え〜〜」
しばらく不満そうにしていたが、突然ハッとした表情になりにやにやしだした。
「ど、どうしたんですか」
恐る恐る聞いてみると。
「拓人、お前わたしのことが好きだったんだな」
一人でうんうんうなづきつつ、そう言った。
…悔しいことに間違ってはいない。惚れているのは事実だ。
だけど今はまだ教えません。
そう、心の中で語りかける。
凛先輩は僕のことを大人っぽいと思い込んでいるようですが、
本当はすごく勇気なしの意気地なしなんですよ。
まぁわざわざ訂正なんてしませんけどね。
拓人は少しも表情を変えずに溜息をついた。
「はぁー…どうせそんなことだろうと思いました」
非難の叫びをあげる凛花から視線を外した拓人は、再び原稿用紙に向きなおる。
◇ ◇ ◇
「もちろん」
恐らく部長なのであろう、真ん中に座る女性が発したその言葉に少女は目を輝かせる。
「い、いつから来ていいですか?」
「なに言ってんの、もう活動中じゃん。」
「あ、あ、ありがとう……ございます……!」
ぺこり、とお辞儀をした少女はまるで予定されていたかのように一つだけ空いていた机に座り、
少女の世界を綴りだした。
少女の名は凛花と言った。
~Fin~
拓人、可愛…げほんっと(笑)
とある友人が「文芸部に入ることになったんだけど小説が書けない」と嘆いているので
ネタにさせていただきましt((
かくいう私は管弦楽部だったり。
その友人が執筆を楽しめるようになることを願って。
そして、この小説に関わってくださった全ての方に感謝。
最後までありがとうございました!