幕間【勇者side】
人狼族とのシーンが終わり、次の町へ行くインターバル中。丁度町の広場で休憩をしていたワーウルフを見つけ、賢者は彼女の下へと小走りで駆け寄った。
「あ、賢者……」
「こんにちは。……この間は、お茶、ご馳走様」
「別にアレくらい……。っ!?」
賢者の手が突然ワーウルフの頬に触れる。驚いた彼女はビクッと身を竦ませた。だが、逃げようとはしない。代わりにピンッと耳と尻尾が立っている。
「な、なによ!」
「この間の怪我、大丈夫だった?」
「ふん! 人狼族の回復力を舐めてもらっちゃ困るわ! あれくらい何ともないんだから!」
思わず口をついて出た強がりな台詞だったが、正しく意味を捉えた賢者はふわりと笑った。
「そっか、良かった」
「…………」
可愛くない言い方だったって後悔したのに。賢者は少しも嫌な顔をしないで笑ってくれた。自分が敵だと分かっていても心配して、臆せず触れてくれた。それが嬉しくて気恥ずかしくて顔を真っ赤にするワーウルフ。その顔を見て、我に返った賢者も顔を赤くする。
「あ、ごめん! 勝手に触ったりして!! その、変な意味じゃ……」
「なっ……! 何言ってんのよ馬鹿!! 四天王である私がアンタみたいな人間意識するわけないでしょ!!」
再び飛び出した強がり。けれどそれを聞いた賢者は沈んだ声を出した。明らかにがっかりと肩が落ちている。
「そうだよね……。ごめん」
「~~~!!」
違うの!と言いたかったけれど、賢者は敵なのだ。敵にそんな言い訳する必要がどこにある?
何も言えなくなってしまったワーウルフ。あからさまに意気消沈する賢者。そんな二人を物陰からそっと覗いている人物が……、一人、二人、三人。
「何なんだ。あの中学生日記」
「なんだかこれ本格的にヤバくない? ねぇ、勇者」
「あぁ……。そうだな」
盗賊の憂いに、勇者は重々しく頷いた。