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逢瀬【勇者side】

 

 前回の戦いの後、散り散りに分かれた(ことにシナリオ上なっている)勇者のかつての仲間達。その中の一人、盗賊である若い優男と無事に合流した勇者一行はとある小さな町を訪れていた。町の入口に立っている住民に話しかければ、町の名前を教えてくれるのはセオリーだが、情報収集と次のイベントを起こす為に話しかけた町民からはいきなり不穏な話を持ちかけられてしまった。


「隣街が人狼族に襲われ、いずれ此処も……」

「え! 人狼族!!」


 大袈裟なほど驚く賢者に勇者は怪訝な顔をする。ここの所やけに落ち着きが無くて様子がおかしいと思っていたのだ。けれどそんな勇者の心配を他所に、当の賢者の心は浮かれていた。


(……も、もしかしたらこれはあの子に会えるフラグかも)


「(おい!! 馬鹿賢者!! 口元がにやけてんぞ!!)」

「(え、う、嘘!!)」


 周囲に聞こえないよう勇者に指摘され、慌てて表情を取り繕う。不安と悲しみにくれる町民の話を聞きながら、口元が緩んでいては話にならない。

 すると次々に町民達が勇者の下に集まってきた。そしてやがて町長が出てきてお決まりの台詞を放つ。


「誰か人狼族を退治してくれる勇気ある者はいないのか」

「は、はい!! 僕達が行きます!!」


 大きく手を上げて宣言したのは勇者ではなく賢者。張り切って請け負ってくれた彼に町長も町民達も皆顔を輝かせる。


「本当ですか!!」

「勿論です!! ですから今すぐ人狼族のいる場所を教えてください!!」


 その後町長の自宅に通され、詳しい話を聞かされる。そのシーンが終わるやいなや賢者は立ち上がって町長宅から飛び出していった。


「おいこら!! 賢者!! 装備も整えずに……」

「僕先に行ってますからーー!!」


 勇者の忠告も聞かずに走り去っていく。長い付き合いになる彼らだが、普段穏やかな賢者がこんな風に暴走する事なんて今まで無かった。


「……なんだあいつ」


 しきりに首を捻る勇者の横で、鮮やかな青色の長髪を靡かせた盗賊の男がにやりと口の端を上げる。


「アレは……恋だねぇ」

「恋ぃ!!?」


 大袈裟なほど驚く勇者。後ろでそれを聞いていた戦士も驚きを隠せないようだ。


「相手はまさか、……人狼族か?」

「また厄介なのに惚れちまったもんだ」


 仲間達はそれぞれの感想を口にして、一先ず装備を整える為に町の武器屋へと向かう。仕方が無いので賢者の分も買っといて、合流した時に装備させることにした。


 因みに今回のシナリオでは勇者のパーティーに女性はいない。白魔術師や僧侶などいつもなら必ず一人は加わるのだが、今回はヒロイン様の強い要望と……やはり裏でお金が動いている事は勇者一行には知らされない大人の事情だ。

 

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