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邂逅【勇者side】

 

「愚かな人間共め! この地が暗黒に染まる様を精々指を咥えて眺めているが良い! 己の無力さを悔やみながらな!!」


 不気味な高笑いと共に明瞭な声でそう宣言した魔王とその後ろに控える四天王達が天から落ちた雷光と共に視界から消える。魔王達の姿が見えなくなると、それまで王都を覆っていた暗雲は消え、再び普段と同じ青空が戻った。だが、本当の意味でこの地に光が戻るのはまだ先のこと。戦いは今始まったばかりなのだから――


「おい、どうした賢者?」


 初めて勇者一行が魔王達と邂逅するシーンが無事終わり、肩の力を抜いた勇者が後ろを振り向くと、共に故郷の村から王都へやって来た賢者が呆けた表情で突っ立っていた。何かとのんびり屋の彼だが、重要なシーンを終えたばかりにしては気が抜けすぎている。

 自分にかけられた声に数秒遅れで気づいたのか、賢者は珍しくもごもごと言葉を発した。


「え、あ、いや……、なぁ、勇者」

「ん?」

「前、あんな子いたっけ?」

「あんな子?」

「ほら、ワーウルフの」


 そう言われて先程魔王の後ろに並んだ四天王の顔ぶれを思い出す。ワーウルフと言えば、犬耳と尻尾をつけて、毛皮を基調とした野生的な服を着た少女の事だ。


「あぁ、そういえば前回のクエスト、お前人狼族(ワーウルフ)との戦いの時は別行動だったもんなぁ。あれ、前回から新しく人狼族の長になった奴だよ」

「……人狼族の長」

「そ。確か長やってた父ちゃんが引退して、後を継いだって聞いたなぁ。それがどうした?」

「あ、いや。初めて見る顔だったから……、珍しくて」

「まぁ、いっつも顔合わせるのは同じメンバーばっかだもんな」


 さーて、休憩しようぜ。腹減った、と伸びをしながら歩きだす勇者に続いて賢者も足を進める。けれど魔王達との邂逅の場となった王城の前庭を一度だけ振り返った。そこにはもういない筈の姿を名残惜しむように。

 

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