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自動防霜の勝利と、二つの黄金

53歳の農業試験官が、転生、15歳の男爵家の3男坊になり、

貧しい男爵領を救い、仲間になる転移者たちと出会い、

第1次産業革命を飛ばし、自然エネルギーを中心として起こす

産業革命と、緩やかな民主化を推し進めて国の発展をめざす!

AIを相棒に執筆、noteにも投稿しています

①自動防霜ファンの完成と、湿地の奇跡


水車が立てる力強い水もとの音とともに、


木製の巨大なプロペラファンが


「ブワッ、ブワッ」と風を切り、


畑の上空へと温かい空気を送り届けていた。


山あいの果樹園に設置された


『水力ダイレクト駆動・防霜ファン』。



渓流の揚水水車の回転力を、


バルドの打った鋳鉄ギアと長軸(ロングシャフト)


でダイレクトに伝達するこの機械仕掛けは、


ユージーンが夜通し魔法を使わずとも、


寒冷な放射冷却の夜に


自動で地表の冷気を吹き飛ばしてくれていた。


「すごい……! ユージーン様が


毎晩つきっきりにならなくても、


風車が勝手に回って冷気を散らしてくれていますぞ!」



老農夫のゴードンが、


自動で回り続ける木製ファンを


見上げて歓声を上げる。


ユージーンは安堵の息を吐きながら、


ゴロゴロと力強く回り続ける水車の軸受を見つめた。


(よし……これで防霜の自動化は完全に軌道に乗ったな)


秋になれば、


この果樹園一面に最高品質のリンゴが


たわわに実るはずだ。


それを氷室で熟成させ、


シードルやブランデーに加工し、


『重ね板バネ(サスペンション)付き馬車』


で傷一つつけずに王都へ運ぶ。


(それに、この水車の回転運動……。


いつかバルドたちと銅線と磁石の実験を進めれば、


魔法に頼らない『もう一つの目に見えない力(電力)』


を取り出せるはずだ)


ユージーンは密かに胸の中で未来への


大きな布石を抱きつつ、


水路の点検のために山裾へと足を伸ばした。


整備した石張り水路の排水口付近で


水が絶えずじわじわと染み出し、


小さな湿地帯のようになっている場所を歩いていた時のことだ。


「ん……? なんだ、あの草は……?」


ユージーンの足がピタリと止まった。


水辺のぬかるみに、群生して風に揺れる背の高い草。


その穂の先には、


長いヒゲのような針『ノギ(芒)』がついている。


「ノギ……!? まさか……!」


ユージーンは泥に膝をつくのも構わず駆け寄り、


その穂を夢中で手に取った。


皮を剥くと、中から現れたのは、


小粒ながらも堅く透明感のある丸い殻粒。


(間違いない……! ソラナム(ジャガイモ)に続き


……これはイネ(野稲・北方イネの原種)じゃないか!!)


前世、日本の農業試験場で何十年も


米と向き合ってきた


農学研究員・山田雄一郎の血が、


激しく沸き立った。


「この寒冷地の湿地で自生しているということは、


圧倒的な耐寒性を持った古代米の種だ……!


鳥の餌や雑草扱いされていたようだが、


僕にはわかる……!


これこそが、日本人の魂の穀物??『お米』だ!」


ユージーンは宝物でも扱うかのように、


その野稲の穂を大切に収穫袋へと納めた。


②黄ばんだ麦畑と、土壌改良の三本柱


野稲という思いがけない宝物を発見した


ユージーンだが、領内全体の主食問題を解決するため、


すぐさま本丸である「小麦畑の改革」へと着手した。


ベルグフェルド領の館の前に広がる広大な小麦畑は、


見るからに生育不良を起こしていた。


芽は黄色くひょろひょろと萎れ、


土は水はけが悪く泥ねばり、酸性に強く傾いている。


「ユージーン様、


この土地では昔から固くて酸っぱい


黒パンになる麦しか育ちません。


そういう土地なのです」


諦め顔の農民たちに、


ユージーンは爽やかな笑顔で首を振った。


「土地のせいじゃないよ。


土が呼吸できていないだけさ。


次の三つの方法で、


この畑を黄金の小麦畑に変えてみせるよ!」


ユージーンが打ち出した『土壌改良の三本柱』は、以下の通りだった。


?【暗渠(あんきょ)排水の敷設】


水路建設の技術を応用し、


畑の地下数十センチに木樋(もくひ)や


砕石を埋め込み、


余分な地下水を外へ逃がす道を作る。


(2)【酸性中和(石灰・木灰の散布)】


泥炭質の酸性土壌に、


木灰や細かく砕いた石灰岩の粉を大量に漉き込み、


土のpH(酸度)を小麦が好む中性近くまで戻す。


(3)【ノーフォーク農法(三体輪作システム)】


同じ作物を作り続けて土が痩せるのを防ぐため、


『クローバーなどのマメ科(窒素固定)』


×『ソバ(緑肥・速成)』×『小麦』を


順々に植え替える輪作システムを導入!


「土の中にいる目に見えない小さな生き物(根粒菌)が、


空気を栄養に変えて土をフカフカにしてくれるんだよ」


地下排水と石灰散布、そして輪作の知識。


現代農学の理にかなった科学的アプローチに、


ゴードンをはじめとする農民たちは


「土が……土が手の中で柔らかく解けていく……!」と感動の声を上げた。


③水力製粉工場と、二つの「白い宝物」


土壌改良が進むと同時に、


水車小屋の横ではさらなる大仕掛けが完成を迎えていた。


「おいユージーン!


頼まれていた『水力大型石臼』の据え付けが完了したぞ!」


大工棟梁のガルツが汗を拭い、


ドワーフのバルドと技師ルーカスが


歯車と回転軸の噛み合わせを最終チェックしている。


揚水水車の回るパワーを、


バルドの作ったギアボックスで水平の回転運動に変換し、


二枚の巨大な石臼を自動で高速回転させる『水力製粉工場』だ。


「すごい……! 手作業で重い石臼を回していた時は


一袋挽くのに一日がかりだったのに、


水車ならあっという間に挽けてしまう……!」


ふるいにかけられて出てきたのは、


これまでの皮混じりの黒い粉とは一線を画す、


絹のようにさらさらと真っ白な『極上白粉(小麦粉)』だった。


「よし! この極上白粉と……摘果リンゴの皮から


起した『天然リンゴ酵母』を使って、


最高のパンを焼こう!」


さらにユージーンは、


水路の湿地で摘んできた『野稲』の籾(もみ)を


丁寧に取り除き、


木臼でかるく精米して、ツヤツヤとした白い米粒を揃えた。


「そして……僕の魂の料理もね!」


厨房で薪をくべ、片方のオーブンでは白パンを焼き、


もう片方の土鍋には水と精米した


お米を入れ、じっくりと火にかけたのだった。


④食卓の歓喜と、二つの主食


その日の夕食。ベルグフェルド家の食卓には、


かつてない甘く香ばしい香りが充満していた。


「まあ……! なんて芳しい香りでしょう!」


母のマリオネットが品良く手をあてて歓声を上げる。


給仕によって運ばれてきたのは、


竹かごに盛られた焼き立ての『天然酵母の白パン』だ。


外側はこんがりと薄い狐色に香ばしく焼き上がり、


ナイフを入れるとパリッと心地よい音を立てる。


中は雲のように真っ白で、湯気とともに甘いリンゴ酵母の香りが広がった。


「お兄ちゃん! これ、ふわふわだよ!


雲を食べちゃってるみたい!」


十一歳の妹マリアンヌが、熱々の白パンを小さな手でちぎり、


口いっぱいに頬張って大はしゃぎする。


「……ッ!? なんという柔らかさだ……!


噛むと粉の甘みが溢れ出してくる……!」


長男クラウスが目を見張り、


父男爵も「硬くて酸っぱい黒パンとはまるで別物だ……!」


と感無量の面持ちで白パンを味わった。


寒冷で貧しく、


ずっと硬いパンを噛み締めて苦労してきた


母マリオネットは、ふんわりとした温かいパンを


一口噛み締めると、胸がいっぱいになったように目元を拭った。


「ユージーン……こんなに美味しくて優しいパンが食べられるなんて……。


お母さん、幸せだわ……」


「喜んでもらえて良かった、母上。……


でも、今日のご飯はこれだけじゃないんだ」


ユージーンはそう言うと、


大事そうに両手で運んできた土鍋の蓋を、


一気に開けた。


パッ……!真っ白な湯気とともに立ち上ったのは、


どこか懐かしく、甘く豊かな穀物の香り。


鍋の中には、一粒一粒が真珠のようにツヤツヤと輝く、


炊きたての『銀シャリ(白米)』が


ふっくらと立ち上がっていた。


「……む? これは……小さな白い粒か? パンとは違うようだが……」


不思議そうにする父男爵や兄たちに、


ユージーンは木スプーンでご飯をすくい、


出汁と少量の塩を添えて配った。


「水路の近くで見つけた『野稲』という穀物のお米だよ。


噛めば噛むほど甘みが出るんだ。食べてみて!」


次男のラインハルトが、


真っ先にご飯を一口パクリと口に含んだ。


「んぐっ……!? ……つ、ツルッとしてて、


モチモチしてて……う、美味いッ!


なんだこの噛むたびに溢れてくるモチモチした甘みはッ!?」


豪快に叫ぶラインハルトに続き、


父男爵も、クラウスも、一口食べた瞬間にスプーンが止まらなくなった。


「美味しいーっ! ユージーンお兄ちゃん、


わたしこの粒々のご飯、だーいすきっ!」


マリアンヌが弾ける笑顔でお代わりをねだり、


母マリオネットもうっとりと目を細めた。


「まあ……パンとはまた違う、


お腹の底からじんわりと元気が湧いてくるような……


本当に不思議で美味しいお米ですね」


長男クラウスは、白パンの皿とご飯の土鍋を交互に見つめ、


眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせた。


「……素晴らしい。小麦の土壌改良と水力製粉による『極上白粉とパン』は、


王都の貴族や富裕層へ高値で売れる我が領の看板商品になる。


そして、この『お米』という穀物は……寒冷な湿地でも育ち、


領民の身体を芯から支える新たな主食となる……!」


クラウスは立ち上がり、ユージーンの肩を力強く叩いた。


「ユージーン! 小麦の本格輸出計画と、


お米の本格的な品種選別・水田開発計画を、


すぐに立ち上げよう! お前は我がベルグフェルドの真の財産だ!」


⑤未来へ繋がる黄金の穂畑


家族の歓声と笑顔に包まれながら、


ユージーンは胸の奥が熱くなるのをじんと感じていた。


(パンで家族を笑顔にし、


お米で自分の魂を救う……。


農学者として、これ以上の幸せはないな)


1次産業(小麦の土壌改良&耐寒性野稲の発見)


× 2次産業(水力大型石臼による製粉&


天然リンゴ酵母の白パン・炊飯)


× 3次・6次産業(王都への高級白粉ブランド輸出&領内の完全食糧自給)。


ユージーンの手によって、


ベルグフェルド領の農業革命は、


果樹から主食へ、


そして領地全体の産業へと確実にその領域を広げていた。


自室に戻ったユージーンは、


窓の外で月光に照らされる暗渠排水の施された畑と、


元気に回る水車を見下ろした。


(よし……土壌も整い、主食の基盤もできた。


秋になれば果樹園のリンゴも小麦も大収穫だ。……


次は、収穫した作物をどう加工し、どう世界へ届けるかだな!)


バルドの作るサスペンション馬車、


シードルとカルヴァドスの醸造、


そしていずれ挑戦する水力発電への夢。


16歳の青年の胸には、53年分の情熱と科学の光が、


どこまでもどこまでも熱く、


誇らしく輝き続けているのだった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

初めての執筆ですが、本人は楽しんで作っています。

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