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婚約者が「聖騎士に選ばれた!やった〜!」と言った時には既に

作者: 井上さん
掲載日:2026/03/18

名前を借りました


名前の由来が分かる方、今日もお仕事お疲れ様です!

 この国には聖女がいる。

祈りの力で、病や怪我を治す。


 その聖女を守る為に、聖騎士がいる。

騎士をしている私の婚約者エキスカが、聖騎士に選ばれるかもしれないらしい。


 月に1度の婚約者との交流のお茶会で、エキスカが言った。


エキスカは、聖女を崇拝し、聖騎士になるのが子どもの頃からの夢だった。


騎士になり、魔物の討伐で怪我をした際、聖女に怪我を治してもらって以来、益々聖女に傾倒していった。


 聖女エイヒは美人だ。周りの聖騎士も若くてイケメン揃いらしい。逆ハーレムだ。


エキスカも若くてイケメンなので、聖騎士の候補に上がったのだろうか?


 私、ヘーベルは侯爵家の長女。

エキスカは、侯爵家の次男で、我が家に婿入りする予定だ。

 聖騎士になったら、どうするのだろうか?

領地経営してくれるのだろうか?

聖女第一なのに?


その時、妹のプローブがやって来た。


「ご機嫌よう。エキスカ様」


「やぁ、プローブ嬢。今日も綺麗だね」


「そんなぁ…」


 イケメンに言われて顔を赤くするプローブ。

許可してないのに、エキスカの隣に座る。


 プローブは、人の物が欲しくなる病気なのだ。

私は、よくプローブに、持っていたドレスやアクセサリーを「良いなぁ…欲しいなぁ…」と言われて、譲っていた。

 最初の頃は抵抗していたが、プローブはしつこくて、何度もねだり、しまいには泣き喚くので、両親は根負けして「早くプローブにあげなさい」と言った。

するとプローブは調子に乗り、毎回泣き喚くようになった。


 結局プローブにあげる事になるなら、何も持たない方が良い。私の持ち物は最小限になった。


 成長するにつれて、なのか、私の持ち物が少ないからなのか、最近は「欲しい」は少なくなっていた。


でも、根本は変わっていなかったのか、それとも、最近言わなかった反動なのか、エキスカが欲しくなったようだ。


 エキスカが来る度に、腕に絡みついている。


プローブにも婚約者がいる。伯爵家の嫡男コントラだ。


コントラは地味な見た目だったから、イケメンのエキスカに目移りしたのだろう。

コントラの家は、伯爵家とはいえ古くからある名門だ。王家の信頼も篤い。


 婿入り予定なのに聖騎士になりそうなエキスカと、名門伯爵家をいずれ継ぐコントラ、どちらが良いだろうか?


聖女命のエキスカと結婚しようものなら、妻より聖女を大事にしそうな気がする。


先程も、今度2人で行く予定だったお茶会には、聖女様に仕事で呼ばれたから行けなくなった、と言っていたし。

 もし聖騎士になったら、聖女にベッタリになりそうだ。


 まぁ、プローブがエキスカをもらってくれるなら、嬉しいかも知れない。

会う度に、聖女の話しかしない男と、一緒にいるのはウンザリしていた。


それなら、私はコントラと交流しようかな?

月に1度のお茶会を、合同でやるのも良いかも知れない。

きっとプローブは、エキスカにアピールするだろう。


 それとも、新しい婿候補を探そうか?

プローブが跡継ぎになって、領地経営するのは無理だと思う。


この国では、長男か長女が跡継ぎになれるので、私は領地経営を勉強している。

 プローブは、嫁に行くからいらないと言って、勉強していない。

伯爵家に嫁に行ったら、伯爵領の領地経営の手伝いをしてもいいはずだが?





 ひとまず父には、エキスカが聖騎士になるかもしれないと伝えておいた。

聖騎士になったら、聖女第一で、仕事が大事だからと、こちらの事は顧みない気がするとも伝えた。


その後の事を考えるのは父だ。私はもう知らない。






 月に1度の交流のお茶会を合同でした。


コントラとは、プローブと婚約した時に挨拶したきりだったから、知らないも同然だ。


プローブは、エキスカの隣に座り、ずっとエキスカと話している。


「プローブがすみません」


 私はコントラに言った。


「いえ…まぁ、僕は地味ですから…」


「眼鏡を外したら、イケメンとか無いんですか?」


 小説によくあるパターンだし。まさかのイケメン説もあり得る。


「え…?」


 コントラは、驚いた顔をした。


「まぁ、好みは人それぞれですから」


 私は笑って紅茶を飲んだ。


コントラは、黙って私を見ていたが、プローブを見た後、紅茶を飲んだ。







 数日後、父から呼ばれて執務室へ行った。


「ヘーベルとエキスカ殿の婚約と、プローブとコントラ殿との婚約を解消し、ヘーベルとコントラ殿、プローブとエキスカ殿と改めて婚約をする事になった」


 父が言った。

きっと、プローブがエキスカと婚約したいと言ったんだろう。


「かしこまりました」


 私は頷いてから聞いた。


「この家を継ぐのはプローブですか?」


「そうなるな」


「では、私とコントラとの婚約を早く進めて、なるべく早く結婚できるようにしてください」


「何故だ?」


「エキスカとの結婚が延ばされています。何度も婚約者が変わるのが嫌なので、早く結婚したいんです。周りの友人は、既に結婚してるんですよ」


 エキスカは、騎士になるから、騎士になったばかりだから、仕事が忙しいから、と、結婚を延ばし延ばしにしている。最初の結婚予定から、既に1年経っていた。


それを思い出した父は


「分かった。早く進めよう」


 と言い、手続きをしてくれた。


コントラの両親も、婚約者が変更になった事により、また変更などされたらたまらないと、早く結婚させる事に納得し、来月には結婚式を挙げる事になった。


 急いで結婚式の準備をする。






 婚約者との交流のお茶会は、今回は別々にした。


「結婚を急がせてごめんなさいね」


 挨拶の後、コントラに言う。


「いや、気持ちは分かるよ。ヘーベル嬢は、本当は去年結婚してるはずだったんだろ?」


「そうなの」


「プローブ嬢は、知ってるんだよね?」


「…どうかしら。何も考えてないから…」


 話をしたはずだが、理解していない可能性もある。

プローブは、ただ私の婚約者が欲しいだけだから。


でも、言わない。


 家を継ぐのはプローブで、エキスカが婿入りして、2人で領地経営しなければいけない事も言わない。


 エキスカが、聖騎士になって聖女第一になるかも知れない…とも、プローブには言わない。


 私は、現実を知って、私に領地経営を押し付けるかも知れないプローブから逃れる為に、早く結婚して、実家から離れようと思ったのだ。

 プローブ可愛さに、プローブの望みを叶えた両親の事も、放置する事にした。


 嫁入りしたら、めったな事では実家には帰れない。

だから、さっさと伯爵家に嫁入りしてしまえ、と急いだのだ。


 コントラは、嫡男として領地経営の勉強を真面目にしている。

誠実な人で、こまめに手紙や贈り物をしてくれる。


 何も贈らないエキスカとは大違いだ。

婚約時の顔合わせの時に、アクセサリーを貰って感激したら、不審がられた。

仕方ない。前の婚約者が悪い。


 コントラは、同情してくれた。

何度か一緒に出掛けたりもした。

 1ヶ月間だったが、充実した婚約者がいる生活を送れて、コントラには感謝した。


 あまり派手ではない結婚式を挙げ、新婚生活が始まった。


結婚式の時、エキスカは「聖騎士に選ばれた!やった〜!」と言っていた。

今後、どうなるかが見ものである。






「姉様、エキスカと1度も会えないの」


 一月後、プローブが伯爵家にやって来た。

案の定だ。エキスカは聖女第一だから、休日も、聖女と一緒にいるらしい。


「そうなの」


 私は、ゆったり紅茶を飲みながら答えた。


「聖女様に呼ばれたからって、交流のお茶会にも来ないのよ!手紙も来ないし、贈り物も無いの!信じられないわ!」


「そうなの」


 元からそうなのよ。


「父様からは、領地経営の勉強しろって言われて!嫌になっちゃうわ!」


 むしろ、言われないと思っていたのかしら?

跡継ぎなのに?


「そうなの」


「姉様何とかしてよ!」


 プローブが喚いたが


「ごめんなさいね。今から領地の話し合いがあるの。格好いい、顔の良い婚約者がいて、プローブが羨ましいわ」


 私が、心にも無いことを言うと


「まぁ、格好いいし、顔の良いのは当然よね。私の婚約者だし。それじゃ姉様、ご機嫌よう」


 プローブは満足そうに帰っていった。


「格好いい、顔の良い婚約者が羨ましいのかい?」


 後ろから声がした。

夫が、不満そうに後ろから抱きしめてくる。


「あら、焼き餅?」


 振り向き、夫の頭を撫でる。


「そうだよ」


「ふふっ…格好いい、顔の良い聖女様第一の婚約者より、妻第一の夫の方が良いに決まってるでしょ」


 私がそう言うと


「本当に?」


「妻第一の夫かしら?素敵な旦那様」


「妻第一の夫だよ。可愛い奥さん」


 妹の事も実家の事も忘れて、イチャイチャする。


「プローブが、今の貴方を見たら後悔するわね」


 今のコントラは、眼鏡を掛けていない。

私が、眼鏡を外したらイケメン?と聞いてから、私の前でだけ、眼鏡を掛けないようにしている。

 イケメンまではいかないが、悪くはない。好みは人それぞれだ。


「奥さんの好みの顔かな?」


「そうよ。私と結婚して良かったかしら?」


「良かったよ。とっても幸せだ。可愛い奥さんは?」


「私も幸せよ」






 結局、エキスカは聖女第一で、婚約したまま、結婚は延期延期が続いた。

 今から新しい婚約者を探すとなると、かなりの年齢差か後妻しかない。

いつ戻るか分からないエキスカを、プローブは仕方なく待っていた。


 結婚適齢期をだいぶ過ぎて30代に入り、イケメンが崩れた頃に、聖女から捨てられて、エキスカは、プローブの下に戻り、2人は仕方なく結婚した。

 エキスカは普通の騎士に戻り、生活は最低限になった。

聖女にだいぶ貢いでいて、聖騎士の給料は残っていなかったらしい。


 聖女は、相変わらず若いイケメンを侍らせているらしい。若くないからエキスカは捨てられた。


 父は、エキスカが聖騎士になってすぐに、領地経営の勉強をしないプローブを諦め、親戚から養子をとり、教育して跡を継がせた。




 聖女第一の婚約者と婚約解消できて良かった。

欲しがりの妹が婚約者を奪ってくれて、本当に良かった。


 婚約者が「聖騎士に選ばれた!やった〜!」と言った時には既に、婚約を解消していたから、私は幸せな結婚生活を送れたのだった。



読んでいただきありがとうございます

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