第1章 内線を使えば自分の席から社内の人と会話ができる!
「おい、どうなってんだよ!」
目の前の社長室から我が社の社長の声が聞こえる。
ここで「どうしました?」と駆けつけるのは野暮である。とりあえず様子を見る。
「いやぁ意味わかんねぇよ!」
このタイミングで行くのもよくない。本人が「意味が分からない」と言っている状況に駆け付けても、私にも意味が分からない。もっと情報が必要だ。
「なんなんだよ!あっ…そういうことか」
解決したようだ。行くまでもなかった。
不必要な業務が発生せず、日本の国民総生産が僅かに上昇した。
内線が鳴る。社長室からだ。目の前なのだから直接声をかけてくれればいいのに。めんどくさいので受話器を取らず5歩先の直接社長室へ。
「なんでしょう?」
「直接来るなよ!電話したんだから電話で返事して?」
「すみません、この方が早いかなと」
「そうかもしれないけどさ」
「それでなんでしょう?」
「そうそう、ユーチューバーっていつやってんの?」
「いつ?」
「ユーチューバーだよ!みんな見てんじゃん!ユーチューバー!」
「YouTuberですか?、いつって、まぁいろいろですけど、毎日やってるんじゃないですか?」
「えっそうなの?すごいな!何時?」
「何時?」
「何時からやってんの?」
「何時っていうか、時間は特に決まってないんじゃないですか?でもライブだったら夜が多いと思いますよ」
「夜?、今夜もあんの?」
「誰かはやっていると思いますよ」
「へぇー、なんちゃん?」
「なんちゃん?」
「なんちゃんで見れんの?」
「なんちやんって、どのチャンネルってことですか?」
「そうだよ!」
「まぁいっぱいありますよ」
「いっぱい?とりあえずなんちゃんで見れんの?」
「お好きなのをご覧になったらいいんじゃないですか?ゴルフ系のチャンネルとかもあると思いますよ」
「そうなの?ユーチューバーってゴルフなの?」
「YouTuberはゴルフではないですけど、ゴルフのYouTuberもいると思いますよ」
「へぇユーチューバーのゴルフってなんちゃんで何時からやってんの?何曜日?ゴルフだから日曜?」
なんだかよく分からないので、日曜日の午後2時から8チャンネルじゃないですか?とか言っておいた。そしたらたまたまゴルフ番組が放送されていて、それに演歌歌手が出ていたので、社長はしばらくユーチューバーは演歌歌手だと信じることになった。




