Singing Bird ~カラクリ仕掛けのオルゴール~
なろうラジオ大賞7への投稿作品です。
ヴィヴァルディの「四季」より「春」が冒頭で流れています。
少し寂しくもの悲しい物語ですが、楽しんでいただけたら幸いです。
タン タンタンタンタララ~ン ララ タンタンタンタララ~ン
トゥル トゥ~ルルラ ラ ラ~
シリンダのピンが櫛を弾くと、ヴィヴァルディの『春』。
どうも、鳥です。こう見えて、元人間です。
可哀想に病死してしまった私は何の因果か転生を果たしたんですが
すぐにはそれを理解しておりませんで。
転生直後は頭越しに交わされる会話で目覚めました。
お目が高いだの、お値打ち物だの、お買い得だの
会話はそんな物騒な中身で、ギョッとした私は飛び起きようとして
真っ暗な中で、全く身動きが取れない状態だと言うことに初めて気が付きました。
何かの実験体としてか、臓器売買されるんだと恐怖におののいたのです。
キィッと小さくきしむような音がしたかと思ったら
無理やりぐいっと明るい中に引っ張り出されました。
すると『春』の旋律が流れだし、私は曲に合わせて動き出しました。
そのときになって漸く状況が飲み込めてきました。
私、オルゴールの仕掛けの鳥になってました。
なんで?普通、転生って物語の登場人物にでしょ?
百歩譲って、せめて自分で自由に動ける動物がよかった。
なんで、鳥の人形?絶望しかない。
でも、そんな私の気持ちなど知るよしもない男性が私を買い求めました。
ゆらゆら揺られて運ばれ、ことりと置かれた気配。そして
「エリ、誕生日おめでとう。プレゼントだよ、開けてごらん。」
そう男性の声がして、包みを解かれ、蓋を開けられると
再びさっと視界が明るくなって、私は『春』に合わせてくちばしを開け、身体を揺らします。
「わぁ、きれい。」
興味津々の体で私を覗き込むのは小さな女の子でした。
でも、その子を見た瞬間、私には分かってしまった。
白すぎる肌。赤味のない少しコケた頬。骨ばった腕。
唯一救いなのは、私を見て微笑んだその目に生気があることだけど。
転生する前の私みたい。この子、長くない。
エリの元にやってきてから、私はほぼ光の中にいる。
ほとんど蓋は閉められない。私は音楽に合わせて歌っている風に動く。
ずっと開けっぱなしすぎない?と思ったその晩激しい雷雨になった。
もう、嫌な予感しかしない。私が死んだ夜とよく似ていたから。
あぁ、ほら、エリの呼吸が苦しそう。震える手でゼンマイを巻いてる。
陽気な『春』が流れ出す。がんばれ!私は歌う。
でも、こう言う願いは大抵叶わない。エリの呼吸が細くなっていく。
エリの目が閉じられて、最後の息が吐かれた。
ビンッ、私のゼンマイが切れたのは同時だった。




