0098 - 第 2 巻 - 第 3 章 - 06
その後2日間、集団は計画通りに行動した。狩り、休息、移動。良いリズムで前進を続けている。
男性は、麻里香の傍に付き添う大翔と、殴られて負傷した敏之、そして60代の年配者を除き、全員が狩猟活動に参加した。49人の集団の内、男性は17名で狩りに参加するのは14名。女性2名を加えて計16人で交代で狩りを行っていた。
新しく狩りに加わった者たちは千里の指示に従い、鹿など自分が負傷するリスクの高い動物には手を出さなかったが、ウサギや野鶏などの獲物だけでも収穫は非常に多く、慧子が捌ききれないほどだった。
皆の積極的な参加のおかげで全員が満腹になれて、夜も交代で警備を行い、集団の安全性は高まった。
事件から3日後、つまり人々がこの世界に飛ばされてから7日目の正午、集団はついに新しい池にたどり着いた。
この池は前のものよりさらに大きく、同様に水質が澄んでおり、水中に多くの魚がいる。見える空はより広く、周辺の資源も以前より豊富だった。
狩猟チームは千里の指揮の下、周囲を巡察し、危険や人の活動痕跡がないことを確認した。皆はとても喜び、ひとまず安堵する。
千里:「より良い場所が見つかるまで、とりあえずこの新拠点で活動する。斗哉、何人か集めて盾をもっと作ってくれ」
斗哉:「適当に作ったもんだぜ、これ。どれくらいの効果があるか保証できねえぞ?」
千里:「構わない。今のものよりちょっとだけ強化すれば十分だ。今手に入る材料じゃ、真面目に作ったところで大して変わらんだろう」
斗哉:「わかったよ」
千里:「それと、武器のアップグレードも必要だ。斗哉のは別として、他の人のは粗すぎるし、損耗も激しい。適した材を見つけて、いくらか加工しよう」
進:「うん……人に向けるかもしれないからね」
健一:「それじゃあ俺、石をいっぱい拾ってくるよ。なんかあった際にみんなも投げれるように」
千里:「ああ。でもたくさん拾うなら1人じゃ大変だ。誰か誘って」
健一:「了解!」
彩乃:「……あなたがリーダーに向いてるとは前から思ってたけど、向きすぎない? 何でもきちんとしてるし、超冷静だし、リーダーになったって内心喜んだり慌てたりしてる感じも全然ないし。私の方が1個上なのに、むしろあなたの方が年上に感じちゃうときあるよ」
駿:「だろ? 俺が言ってたのそういう感じだよ!」
彩乃:「ねえ、もしかしてどこかで本当のリーダーしてたの……?」
千里:「まあ。ネトゲーでレイドの団長やってたのもカウントするならだけど」
彩乃:「えっ!? ゲ…ゲームの中だったの? えええ………………」
宏人:「ゲームだからってそんな顔するなよ。今までちゃんとできてるんじゃないか」
彩乃:「あ、うん……そうだね。ごめんね」
千里は気にしていないと微笑みで返した。
しばらく雑談した後、皆はそれぞれ自分の仕事を始めた。
一方、前の拠点では、高木団体も今日もまた手に入れたものを堪能していた。
高木はテントから出てきて、池の畔で何やら弄っている黒水に近づいていく。すぐ後にハチマキをした男が卑猥な笑みを浮かべてテントに入った。
高木:「どうだ、順調か」
黒水:「棒は技術いらねえもんで、がりがり弄ってりゃいい。だが弓はダメですわ。めんどくせえし壊れやすい。それにその1張り作るのにまだ3、5日はかかります」
高木:「おう、そうか。じゃ弓はひとまず1張りでいい。棍棒を先に仕上げろ。明日には持たせて探しに行かせる」
黒水:「はいよ」
黒水は作業を再開する。彼は加工した棍棒の太い方の先端に、動物の骨の破片を石で敲き込んでいた。動物の骨の断面は比較的鋭いため、このような棍棒は貫通能力を持ち、正真正銘の武器となる。
ルナ:「また女攫いに行くの?」
二人の傍らでは、山田が野鶏を焼いており、ルナは両手に焼き鳥の腿を持って食べていた。
この拠点を占領して以来、高木団体の物資生産は消費を大きく上回り、食料に困ることはほとんどなくなった。それに加え、高木が事前に言った通り、各々が欲しいものを手にできており、のびのびと自由気ままに過ごしている。
高木:「その段階はもう終わった。次の標的は奴らの戦力だ。戦力を潰せば、女も手下も自然と俺たちのものだ」
山田:「潰すって……あいつらに何をするつもり……ですか?」
高木:「奴らの態度次第だな」
山田:「………………」
ルナ:「段階って、結局あんた何がしたいわけ?」
高木はマスクを鼻の上にめくり上げ、焼き魚を手に取って口に運んだ。口元を吊り上げ、陰険な光を宿した目で、成功後の絵図を心に描く。
高木:「言っただろ、やりたい放題になるんだ」
翌日、8日目の朝。
探索に出て間もない千里が、蔓で一枚の岩板を引きずりながら拠点に戻ってきた。岩板が下ろされると、好奇心から数人が集まってくる。
斗哉:「なんだこりゃ?」
千里:「ふふっ! 調理器具だ!」
岩板は灰青色で、花崗岩のようなもの。長さ55cmほど、幅30cmほど、厚さ5cmほど。両面に多少の凹凸はあるものの、比較的平坦だった。
慧子:「調理器具? 岩板焼きか」
千里:「ええ。さっき岩場を見つけて、この岩板が目に入った。肉を焼くのにちょうどいいと思って」
慧子:「おお、いいじゃない」
千里:「斗哉、手伝ってくれ」
千里は斗哉ともう一人の男性に、先ほどの岩場へ石塊を運びに行かせ、他の数人にはたくさんの枯れ枝を集めさせた。自身は岩板を縛っていた蔓を解き、水で比較的平坦な面を清めた。
石塊が運ばれてくると、彼は池の畔から少し離れた場所にかまどの基礎を積み、前方の吸気口を広く、後方の排気口を狭くするように調整。その上に岩板を載せ、枝で四隅を補助の支えとして、簡易的な石かまどを作り上げた。
柴に火をつけ岩板を空焚きにし、約40分予熱した。岩板の色は先ほどより白っぽくなり、上の空気が明らかに揺らめいている。水を数滴撒くすと、水滴は2秒ほど跳ねて気化した。いい頃合の温度になった様子。
千里は昨日獲った子鹿の腹の部分を岩板の上に載せた。肉が岩板に触れた瞬間、大きなジュージューという音が響く。腹肉を掴み、岩板の上で往復させて摩擦し、腹肉の脂を使って油膜を張った。
続いて数切れの鹿肉を載せ、細い枝を料理用の長箸として肉を焼き始める。岩板から伝わる音と香りが、さらに多くの人々を惹きつけた。
「わあーっ!! すごい!」
「いい匂い!」
「岩板焼きだ!」
「おおおーっ!!」
6、7分後、最初の肉が焼き上がった。肉は全体的に火が通っており、表面は少し焦げ目がつき、食欲をそそる香りを放っている。千里は最初の肉を岩板の端に取り分け、皆に試食を促した。同時に第二ロットの肉を載せて焼き始める。
斗哉:「どれどれ。あむぅ…………ん。相変わらず味気ないが、直火で焼くよりはずっとうまいな」
千里:「火加減が調整しやすいから、肉汁と油分がよく保たれるんだ。みんなも食べてみて」
すると数人が斗哉のように手で鹿肉をつまみ、ふうふう吹いて口に入れた。
女性:「美味しくないけど、美味しい!」
男性:「やぁー、タレがあれば完璧なのにね!」
男性:「後で照焼きチキン作ってくれよ!」
千里の岩板焼きは大成功だった。肉に均等に火を通せるだけでなく、やり方も簡単で誰でもすぐに覚えられる。火傷に注意し、焼け焦げた炭化物を枝でこまめに掃除するさえすれば、現時点で一番いい調理法であることに間違いなかった。
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