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0097 - 第 2 巻 - 第 3 章 - 05


 約1時間半後、大部隊は千里が言っていた場所に到着。皆は休憩を取り、慧子が狩猟チームが朝獲った獲物を捌き、亮太が進んで手伝った。


 ある巨大な根元の下で、麻里香は身体を丸めて座り込んでいた。


 移動するうちに、彼女はこれが夢ではないのだと徐々に理解していた。


 顔を深く腕と膝の間に埋め、止めどなく涙を流している。


 少年の声:「…………早乙女さん、大丈夫?」


 女性の声:「ちょっと、あなた……!」


 最近よく耳にしていた声が、自分にそう問いかけた。


 大翔だ。


 もう一人は、麻里香が救出されてからずっと彼女を助けている都守だった。都守は眉をひそめ、こんな時にそう聞く者がいるなんて信じられないという顔をする。


 麻里香はゆっくりと顔を上げた。表情は硬く、輝きを失った涙ぐんだ目で大翔を睨みつける。


 麻里香:「………………大丈夫に見える……………?」


 大翔:「…………ごめん……」


 麻里香:「…………………………」


 大翔:「…………………………」


 麻里香:「………………あっち行って……」


 大翔:「………………………………」


 大翔は何も言わず、陰鬱な表情でうつむくだけだった。


 その様子を見て、麻里香は暴発した。枯れ葉の混じった砂土を掴み、大翔に向かって投げつける。か細かった声は咆哮へと変わった。


 麻里香:「どっか行ってよッ!! 私に構わないでッ!! 私を守るって言ったくせに! 肝心な時にどこにいたのよッ!?」


 他の者たちは驚き、彼らの方へ視線を集めた。


 大翔:「…………………………ぐっ…………」


 痛いところを突かれたようで、大翔は拳を握りしめた。


 麻里香は立ち上がり、泣き声混じりに怒りと悲しみをぶつける。


 麻里香:「大丈夫なわけないでしょッ!? 私がずっと大切にしてきた純潔があんな男どもに………………っ! 男なんてみんな死んじゃえッ!!」


 そう言い終えると、彼女は巨大な根元から出て、人々の輪の外へ歩き出す。


 大翔:「……っ! 早乙女さん!」


 大翔は慌てて彼女の手を掴むが、力強く振り払われる。


 麻里香:「触らないでッ!!」


 麻里香が衝動的に集団から離れてしまうことを危惧する大翔は、彼女を抑えようと抱きしめた。


 麻里香は「離してッ!!」と叫びながらもがく。大翔はより強く抱きしめるしかなかった。


 彼は後悔の念に駆られながら、ただひたすらに「ごめん」を繰り返す。


 しばらくもがいた後、麻里香は動きを止めた。大翔の胸に顔を埋め、大声で泣き出す。メイクは崩れ、髪は乱れ、涙が大翔の服を濡らした。


 麻里香:「……ううううう……もうここにいたくない…………お家に帰りたい………………ぐすん……ううううう………………」


 その言葉は多くの人の本心でもあった。誰も口に出さなかっただけ。


 麻里香の泣き声に触発されるように、那帆ともう一人の女子学生も再び泣き出した。春や他の女性たちが彼女たちをなだめながら、自分たちもまた目を潤ませる。


 男性たちは思わずうつむき、何もできずにいた。


 麻里香は10分以上泣き続けた後、体力の限界で眠ってしまった。他の女性たちも次第に落ち着きを取り戻した。しかし、集団の空気は非常に重く、息が詰まるような感覚を覚えさせられる。


 さらに約2時間後、千里たちもここに到着。その頃には少しだけ空気が和らいでいた。慧子と亮太はまだ肉を焼いている。


 宏人:「どうだった?」


 千里:「ヤツらをしばらく惑わせられると思う。あの池の出口じゃなく、ヤツらの知らない方向へ進んだって気づかれる頃には、俺たちは十分に離れただろう。もしそこで諦めてくれれば一番いいんだけど、警戒はしておくに越したことはない」


 宏人:「それができても十分な成果だよ」


 斗哉:「で、オレらはどこへ行くんだ? これまで通り水に沿って行くのか? それじゃ結局見つかるんじゃねえか?」


 千里:「それは仕方ない。見つかるのを恐れて水源から離れたら、先に持ちこたえられなくなるのは俺たちだ」


 斗哉:「ん…………」


 千里は皆の方に向き直って開口する。


 千里:「みんな聞いてくれ。俺の考えは、まず新しい水場を見つけ、そこを拠点にする。魚がいればそれは一番いい。狩りの時間を幾分か節約できる。今は狩りに費やす時間が多すぎるから、効率がよくない。だから、体力に自信のある男性には皆狩猟班に加わってほしい。狩りに出かけるのと拠点で警備するのを交代でする。そうすれば、ヤツらに対抗する戦力を練る十分な時間が確保できる」


 高校3年生の男子生徒:「わかった! 俺加わるよ! 主にウサギと野鶏なら、そんなに怖くないから」


 千里:「ああ」


 30代の魚捕り男:「魚のいるとこに着くまでなら、俺もそうするか……」


 千里:「感謝する」


 14歳の男子中学生:「……僕も……やってみます」


 千里:「頼む」


 彩乃:「じゃあ、私も入っちゃうかなー。自信はあんまりないけど、野鶏を捕まえるくらいなら多分できるから」


 千里:「うん」


 眼鏡をかけた18歳の男子高校生:「……一緒に狩りに行くのはいいけど……あいつらと戦うつもりなのか?」


 千里:「戦いになるかどうかはわからない。だけど、戦える力は持っておかないといけないんだ」


 40代の男性:「向こうは皆20歳前後の若者だ。こっちは人数は多いけど、若者は少ないし、男も少ない。本当に大丈夫なのか? たとえば俺なんか、双方が枝を持ってたとしても、あいつらには敵わないのだよ……それに奴らはナイフも多いぞ」


 千里:「ああ、すごく現実的な問題だ。それについては、おおまかな案がある。昼間も言ったが、本当に戦いになれば双方に死傷者が出るかもしれない。斗哉、進、宏人さん、駿、それでも昼間のように、先頭に立ってヤツらと戦う意思はあるか?」


 駿:「まったく問題ないな」


 斗哉:「…………戦わずに済むならそれが一番だ。だが、相手が本当に向かってくるなら、ぶつかるしかねえ」


 進:「……うん、もし避けられない衝突なら……オレも戦うよ」


 宏人:「うーん……やっぱりできる者は苦労するか。わかったよ。ケンカの経験はないけど」


 千里:「ありがとう、みんな。詳細は後で話し合おう。前衛は俺たち5人だ。ナイフを持った相手は俺が対処する」


 最後の一言の時千里は拳を握りしめ、語気は力強く、眼差しにも怯えがない。全身からオーラーが放たれているように感じられた。


 斗哉:「……死ぬの怖くないのか?」


 千里:「もちろん怖いさ。だけど、自分だけ逃げて、みんなから罵られることの方がもっと怖い」


 斗哉:「おまえ……」


 千里:「安心しろ。カッコつけたいがために命を危険にさらすつもりじゃない。ナイフを持った3人のチンピラ野郎くらいなら、俺一人で対処できる」


 駿:「さすが千里の兄貴だ!」


 進:「やっぱりすごいな!」


 紗奈:「すごーい!!」


 「マジか!」


 「本当か? カッコイイなあ!」


 「中国カンフー!?」


 ……


 突然の賞賛に、千里は一瞬たじろいだが、それから続けた。


 千里:「……まあ、もし全員が俺一人に集中してきたら多分敵わないがな。っていうか、ナイフ持ちが分散しすぎたら俺一人ではカバーしきれない。だからみんなの力も必要だ。例えば前衛2人で1人の相手を抑えるとか、突破されるのを防ぐために、後衛の前にさらに中衛を置くとか。紗奈、健一、彩乃さん、中衛を頼めるか?」


 紗奈:「えっ!? う…うん!」


 健一:「真ん中から石投げるならできるよ!」


 彩乃:「先頭は無理だけど、中間で漏れを拾うくらいなら……多分いけるかな……」


 千里:「よし!」


 颯真:「……そ…それなら俺もやる。3人中2人が女じゃ……女性じゃあ、後ろにいるのが恥ずかしいから……」


 千里:「それはよかった。じゃあ頼んだよみんな。その時は、完全に戦闘能力のない年寄りや、子供と女性は木の下に寄り添って。他の人は後衛として、枝を持って集まり、彼女たちを守ってくれ」


 「おおー! なんだかそれっぽいぞ!」


 「本当にあの人たちを倒せるなら賛成よ!」


 「やっつけてやろう!」


 3人の女子学生を除いて、皆の消沈していた気分は積極的になり、自信に満ちていった。


 千里:「それじゃあこの方法で行こう! 食べ終わったら続けて移動する。今回はどれくらいかかるかわからないけど、ヤツらから離れれば離れるほどいい」


 「おう!」


 「いつから狩り始めるんだ?」


 「狩り教えてくれよ」


 こうして千里は集団をリードし、再び皆に期待を持たせる。皆は多かれ少なかれ励まされた。





 読んでくれてありがとうございます。

 もしよかったら、文章のおかしなところを教えてください。すぐに直して、次に生かしたいと思います。(´・ω・`)

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