0096 - 第 2 巻 - 第 3 章 - 04
皆は拠点に戻った。かなり意気消沈している。
斗哉は石を拾い、池に向かって力いっぱい投げつけ「あのゲス野郎どもがッ!!」と罵った。
「どうしてこんなことが起こるの…………」
「あいつらほんとに畜生だよ!」
「銃を持った警察がいればいいのに。銃があればあいつらなんて……」
「それ、万一銃が奪われたらさらにヤバくなるんじゃ?」
「うっ、それもそうか……」
皆それぞれに事件について討論していた。
千里:「皆さん、聞いてください。今は非常事態の中の非常事態です。誰かが皆の行動を決め、管理する必要があると思います。つまりリーダーを決めることです。現状を見るに、ここでは俺が最も適任だと思うので、暫定的にではありますが、俺が皆のリーダーをさせていただきたい。どうでしょうか?」
彩乃:「遂に言い出したね。私はもちろん賛成よ」
進:「うん、それがいい」
慧子:「ああ、私もあんたが一番適任だと思う」
紗奈:「賛成!」
宏人:「問題ない」
斗哉:「…………さっき、おまえがいなかったら、オレの性格だと本当にやり合ってたかもしれねえ。認めるしかねえ、おまえはやる奴だ。オレも賛成だ」
「とっくにそう思ってたよ」
「そうだね、言うも言わぬも同じような気がする」
「賛成です。じゃあ、これからどうするんですか?」
気分が沈んでいる者や他の理由で黙っている一部を除き、他の者は基本的に千里がリーダーになることに賛成した。
千里:「ありがとうございます」
慧子:「てか敬語はもういい。そんなもん言ってる場合じゃないから」
千里:「そうか。じゃあそうするよ。今から俺たちは急いでここを離れないといけない。みんな移動の準備を急いでくれ。他の事は後にする」
「おう!」
「わかった」
こうして皆はそれぞれ準備を始めた。
女性たちは池の畔の一角を囲み、男性たちを遠ざけ、自ら希望した者があの3人の女子学生の体を清めるのを手伝った。
千里は紙とペンを借り、簡易的な地図を描いた。ほどなくして皆の準備が整い、彼は計画を説明する。
千里:「ヤツらの行動はちょっとおかしい。本来ならさっきのような演説で目的を達成できたはずなのに、犯罪行為をした。あの高木って男が、新しく加わったヤツに犯罪の既成事実を作らせ、完全に俺たちから切り離して、自分たちの戦力にしたんだと思う」
宏人:「一理ある。俺たちはそんなクズ要らないからな」
千里:「さっきの連中の行動や態度を見るに、少なくとも高木は元の世界でも何か怪しい過去があったかもしれん。悪い方向に考えれば、ああいうヤツはおそらくこのまま俺たちを見逃したりしない。ヤツの弱肉強食理論から考えると、おそらく俺たちを見つけ出し、武力でヤツが価値があると思う人を奴隷化しようとするだろう。今俺たちを行かせたのは、枝をより良い武器に加工するとか、俺たちを襲う計画を立てるとかの準備のためかもしれん。もちろん、俺の考えすぎならそれが一番いいんだけど」
慧子:「そう言われると私もそんな気がしてくるわ。少し主観的かもだけど、これ以上あいつらが人間らしく振舞うと信じ続けるよりはずっとましね」
千里:「うん。だから、アイツらに見つかりにくくするために、俺たちはこの池の出口の方向を沿って移動するのはダメだ。ちょうど今朝、他の湧き水や渓流を見つけた。この森にはこういう池の数は少なくないと思う。だからここにこだわる必要はない。早く新しい拠点を見つければいいんだ」
進:「なるほど、だからさっきあんなに気前よく譲ったんだ」
千里:「地図を描いた。斗哉、先頭に立ってみんなをここまで連れて行ってくれ。ここにも渓流がある。ここに着いたら、まずはそこで肉を焼いて食べて休んでて」
斗哉:「あ? おまえは?」
千里:「俺はまずこの池の出口と近くの渓流の辺りで足跡を偽装する。その後、みんなが通った道に沿って足跡を消す」
進:「すごい…………」
駿:「兄貴、なんでなんでもできるんだ?」
千里:「兄貴って呼ばないでくれ。俺はただこういう方法を思いついただけだ。実際の効果がどうかは保証でない」
駿:「それでもすげーよ!」
楓:「本当に頼もしいわ」
千里:「事が成ってからにしてくれ。俺は途中でシャンパンを開けるような、失敗フラグっぽい感じが好きじゃない。話を戻す。何人かに俺について来てもらう必要がある。一人で偽装できる足跡は少なすぎて、バレやすいから。体力がある人が要る……進、紗奈、健一、彩乃さん、体力に自信はあるか?」
進:「ああ!」
紗奈:「そ…そこそこと思う!」
健一:「お…俺は野球部だぞ! 全然問題ない!」
彩乃:「OKよ」
千里:「よし。じゃあ、誰かと片方の靴を交換して。そうすれば一見して足跡が多いように見えるから。宏人さんと駿は大部隊の最後尾で後方に注意を払ってくれ」
宏人:「了解」
駿:「おう!」
皆が動き出そうとした時、敏之が負傷した腕を押さえながら近づいてきた。
敏之:「そ…その……奪われた俺のお金、どうすればいいんだ……?」
斗哉:「は? おっさん、今の状況わかってんのか?」
千里:「……残念だが、今はヤツらに要求する時間も理由もない」
斗哉:「あったとしてもそんな労力使いたくねえよ。どうせ今、金なんて紙切れ同然だ」
敏之:「うっ……うう…………」
千里:「それでは行こうか!」
こうして全員が千里の計画に従って行動し、現在の拠点を離れた。
斗哉が地図を読めないかもしれないと心配し、楓も先頭に立った。
大部隊の移動途中、那帆ともう一人の被害者はまだ涙を流している。そして麻里香は見つかってから今に至って、無表情で反応が鈍く、目が恍惚となっており、泣くことも話すこともなかった。
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