0093 - 第 2 巻 - 第 3 章 - 01
翌日。即ち人々がこの森に飛ばされた4日目。
【麻里香】
頭を上げてないのに、すごく高くて大きい木々の葉や枝が見えてる。
木漏れ日がキラキラしてて、ちょっと綺麗。でもこの景色、モノクロに見えるし、揺れてる。
痛い。
周りに人がいっぱいいる。
男たちがずっとなにか言ってる。顔を見てないのに、気持ち悪くニヤニヤ笑ってるのがわかる。キモい。
女の人が泣いてる? 1人? それとも2人?
痛い。
臭い。
でもこれきっと夢。最悪な夢。
起きたらなにするんだっけ?
あ、思い出した。玲奈たちとモールで化粧品見るんだった。
どこからが夢?
森に来たときからだよね。
じゃあ進くんに会えたのも夢かぁ。好きなタイプの男の子とやっと出会えたのに。残念。
あ、視界をナニかが遮った。
男の人だ。
イタイ。
クサイ。
キモチワルイ。
クルシイ……
まだ夢から覚めないのかな。
【全体】
春は森の中を歩きながら、トイレに行ったきりなかなか戻ってこない那帆を探していた。
那帆がこの2日間で少し元気を取り戻したので、彼女の気分も明るかった。
2日目のあの件で、那帆はその日の昼に何も食べなかった。夜になって空腹がひどかったため、春の説得でようやく涙を流しながら焼きウサギを食べた。
春:「どこに行っちゃったんだろう、迷子になったりしてないよね?」
すると、巨木に遮られたどこかから微かに声が聞こえてきた。
女性の声:「……ううっ…………もうやめてください…………うっぐっ……」
男性の声:「まだまだこれからだぜぇ?」
男性の声:「ひゃっははっ! 今日から楽しみ放題だな!」
女性の声:「んうぅぅぅぅぅ――!! んうぅ――!!」
男性の声:「抵抗すんなよ、すればするだけ押さえつけられるんだからな? ほら、隣のあきらめてる子、みんな優しくしてやってるだろ」
男性の声:「その分こっちの楽しみは減るけどな、ハハハ!」
それは女性たちの泣き声と哀願、そして男たちの興奮した言葉だった。
そしてその哀願する声は、那帆の声にそっくりである。
春は「え?」と喉から声が漏れ、一瞬で顔から血の気が引いていった。
すると、2人の男がその場所から出てくる。春はすぐに口を押さえて隠れ、心臓が爆発しそうに鼓動し、全身が震えた。
比口:「げー、カチコチで押さえても下向かねえや」
倉岡:「オレもだ。出ねえな、はは! あっ、そういやまだもう1人捕まえてこなきゃだったか?」
比口:「ああ。ルナ入れて5人の女だ」
倉岡:「やっぱまたJKか?」
比口:「できればな。JDでも可」
倉岡:「なんでよ、兄貴の趣味か? それともおまえの?」
比口:「バカかお前、なん年も働いた社会人より学生の方が騙しやすいし、従わせやすいだろ」
倉岡:「おーおー。じゃあそういうことなら、JCやJSの方がもっといいんじゃねえ?」
比口:「おいおい、マジかよお前……そんなんでタツのか? さすがのオレでも手出せねえぞ」
倉岡:「な…流れで言ってみただけじゃんか!」
比口:「おう、お前の変態思考のおかげでシッコ出たぜ…………ふぅ……さっさと戻ってもう一発いってくるわ。向こうの狩り班が戻る前に」
倉岡:「おい、待てよ!」
春は恐怖で涙を流していた。
――「お…おまえら!」
中年男性の声が反対側から聞こえた。
倉岡:「は?」
敏之だった。彼は緊張した表情で比口と倉岡に向き合い、言葉を続ける。
敏之:「まさか犯罪なことをしているのか?」
比口は周囲を見回し、他に誰もいないのを確認すると、「お前一人か」と聞き返した。
敏之:「近くで声がするから何かと思ったら、おまえらの話す内容を聞いた。女の子たちに無理やり何かしているのか?」
倉岡:「だったらどうすんだ?」
敏之:「やめるんだ! そんなことしてはいけない!」
敏之は厳しい表情で指をさして叱責した。
倉岡:「……おい、どうする?」
比口:「拳でする」
倉岡:「オッケー」
そう言うと二人は敏之に近づき、指の関節をポキポキ鳴らした。
敏之:「お…おまえら……!」
敏之は逃げ出そうとしたが、彼の速度では到底逃げ切れず、すぐに比口に背後を回られた。
敏之:「ま…待って! わ…分かった! もう邪魔をしない。お金をあげるから逃がしてくれ、通報もしない。どうだ?」
そう言うと敏之は札束でパンパンになっていた財布を取り出す。比口と倉岡はすぐに目を輝かせ、比口は「ヒューッ~ヒューッ~」と口笛を吹いた。
倉岡:「うはっ! すっげえー金だぜ!」
敏之:「1人1万……いや、2万円あげるから、だから……」
倉岡:「あ? はははははっ!!」
比口:「草生える。何言ってやがるんだ?」
敏之:「何を……?」
比口:「てめえをぶっ倒して奪えば全部オレらのもんじゃねえかッ!」
倉岡:「へへッ!」
二人は言いながら敏之に殴りかかった。
敏之:「や…やめ……っ! うおっ!!」
敏之は地面に叩きつけられた。
倉岡:「自分から金持ってくるバカが! ハハっ! って、そういや金ってまだ使えるのか?」
比口:「使える使えない関係ねえよ、あった方がいいに決まってるだろ!」
倉岡:「そりゃそうか! ははは!」
二人は好き放題に敏之を殴りつける。
その隙に、春は恐怖で震える足で拠点へと急いだ。
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