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0092 - 第 2 巻 - 第 2 章 - 09


 それぞれがやるべきことに取り組んでいると、時間はあっという間に過ぎ、気づけば夕暮れ時となっている。狩りに出ていた者たちも戻ってきた。


 倉岡:「うっひょー! 兄貴スゲー!!」


 ルナ:「わあお~~~」


 その間に千里たちは3羽のウサギと3羽の野鶏を仕留め、かなりの収穫があった。しかし、最も遅く拠点に戻ってきた高木の狩猟チームにはやや見劣りがする。


 高木たちは2頭の子鹿を獲っていた。


 彼らは意気揚々と座り、自分たちで話し始めた。以前と同じく、全員が見渡せる場所に焚き火を焚いて陣取り、獲物を他の者と分け合う気はまったくなさそうだった。


 集団の方では、自ら志願して池に飛び込み、数匹の魚を捕まえた者がいた。1匹の魚で2人分の食事が賄える。紗奈たち女性陣もいくつかの果物を見つけ、今夜の彼らの食べ物も少なくない。


 夜、新しく加わったメンバーは簡単な自己紹介を行った。池で出会った女性キャンパーと眼鏡をかけた18歳の男子高校生以外の人員構成は以下の通り。


 男子大学生1名、20歳の男性青年1名、40代男性1名;女子大学生2名、20代女性3名、30代女性1名、40代女性3名。前の拠点を離れてから出会ったのは計14人である。


 心と体に少し余裕ができたため、皆はあの異変について多くを語り合い、見ていなかった者も誰かがスマホで撮影した写真を通じて異変の過程を知った。また、動画ファイルはすべて破損している。


 千里:「……男性28人、女性34人、合わせて62人。年齢は10代から30代が多い。異変発生時に屋内にいた人数と屋外にいた人数は大差ない。ほとんどが互いに面識がなく、当时の所在地も広く分散している。うーん…………共通点を見つけるのは難しいな。唯一比較的明確なのは、光になった時に身体的接触が密だった者同士が一緒にいることだ」


 進:「そう考えると、斗哉と楓先輩が一緒にここに来られたのは不幸中の幸いだね」


 斗哉:「ああ」


 楓:「……ええ。でも聞いた情報からすると、今のところ私たちが出会った人数はまだ少なすぎるわ」


 千里:「ああ、俺が見た光になった人も100や200じゃきかない。範囲がそんなに広いなら、少なく見積もっても5、6000人にはなるだろう。そんな大勢の人が、この森の他の場所にいるか、まったく知らないどこかに分散しているかだ。間隔がどれくらいあるかもわからない」


 慧子:「……元々私は半信半疑だったけど、今はこの空を見ているだけでも信じざるを得ないわ。ここは本当に別世界なんだね」


 紗奈:「そうだね、知ってる星や星座が1つもない……」


 敏之:「………………けっ」


 亜衣美:「…………………………」


 颯真:「…………」


 高木:「……」


 現在の状況を改めて認識し、全ての人がそれぞれの思いを胸に考えにふけった。


 千里:「ま、それはさておき、これからのことを話し合おう。狩猟チームに加わりたい人はいるか?」


 紗奈:「あ……私でも……いい?」


 千里:「お? 本当か? やりたいならもちろん構わない」


 紗奈:「うん、ウサギや鶏なら、もしかしたら私にもできるかもしれない」


 進:「人手は多ければ多いほどいい。歡迎だよ、紗奈」


 紗奈:「うん!」


 その時、颯真が近づいてきた。


 颯真:「オ…オレも! オレも入る……」


 千里:「えっと、君の名前は何だったっけ? 体育会系か?」


 颯真:「……龍崎颯真だ。体育会系じゃない……でも多分できると思う」


 彩乃:「中二病なのよ、彼」


 颯真:「ちゅ…中二病じゃない! 棒で獲物を攻撃するだけでしょ? 簡単だろ!」


 千里:「君もオタクだったのか。歡迎だが、狩りは君が思っているのとはちょっと違うぞ。明日の朝、見学に連れて行ってあげるよ」


 颯真:「あ…ああ」


 30代の男性と40代の男性も近づいてきた。


 30代の男性:「こんばんは、学生さんたち。陸より水中の方が得意なんでね。ここに魚がいるなら、魚捕りは俺に任せてくれ」


 40代の男性:「私もだ。体力は多くないかもしれないが、魚を何匹捕るくらいならできる」


 千里:「わかった、ありがとう。助かる」


 彼らに感謝を伝えた後、千里は他の人々に向かって「他にいないか?」と尋ねたが、これ以上応える者はいなかった。


 千里:「……うん、今はこれでいいだろう。拠点建設にも人手が要るし。俺からは以上だ」


 千里が「皆も話したいことがあればどうぞ」という意味を込めていたが、他の者は大勢の前で話したいことは特になかったため、皆ゆっくりと解散し、それぞれの時間を過ごし始める。脇にいた高木の団体の者さえも前に出てきて他の人と話し始めた。


 進が見知らぬ星空を仰ぎながら物思いにふけっていると、とても可愛く着飾った女子高生が近づいてきて尋ねた。


 とても可愛く着飾った女子高生:「おいくつですか?」


 進:「ん? 16だ」


 とても可愛く着飾った女子高生:「へぇ~同い年なんだね。わたしは早乙女麻里香さおとめ まりか。あなたは?」


 進:「天宮城進」


 麻里香:「へえ~~~! すごいかっこいい名前~!」


 進:「あはは……」


 麻里香の服装はとてもファッショナブルだった。明るい黄色の肩まで届くショートヘアで、毛先は軽くカールしており、天然なのかパーマなのか判断し難い。3日間の野外生活を経ているにも関わらず、薄化粧は崩れておらず、とても自然で可愛かった。服装は流行りの夏のさわやかスタイルで、ショートスカートとルーズソックスが脚を細長く見せる。ピンクのネイルと身に着けたいくつかの小さなアクセサリーが女の子らしさを滲ませており、ファッション雑誌のモデルにも引けを取らない。


 麻里香:「進くんって呼んでもいい?」


 進:「いいよ」


 麻里香:「やった! 進くんってイケメンだし、優しそうだし、狩りもできるし、完璧な男の子だね! ねえねえ、わたしとお友達になってくれない?」


 進:「……うん」


 麻里香:「本当? やった~! ねえねえ、進くん彼女いる?」


 麻里香は満面の笑みを浮かべて進に近づき、進も微笑みながら平然と対応する。二人はそうして話し始めた。進は可愛い女の子に好意を示されても緊張していない。慣れていたからだ。


 一方で、麻里香の後方に座っていた男の子は、やや歪んだ表情で顔を背けた。


 その男の子は佐藤大翔さとう ひろとという。彼と麻里香は高校一年の同級生だが、異変発生時には一緒におらず、偶然出会ったのだった。


 一昨日の朝に出会って以来、大翔は麻里香の面倒を見てきた。彼は常に不安げな麻里香を励まし、食料を探してきた。二人は一昨日と昨日の昼間、ベリーや果物を食べてどうにかやり過ごし、昨夜人の声を辿って集団を見つけたのだった。


 学校ではほとんど接点がなく、話もほとんどしたことがなかった二人だが、ここに来てから2日間一緒に野外生活を過ごし、大翔の行動も着実に麻里香の助けになっていた。


 そのため、青春期の少年は多少「彼女は俺のことが好きになるかもしれない」、「俺は彼女の中で重要な存在になっていく」といった考えを抱いていた。


 そしてついさっきまで自分と一緒にいた麻里香が、今では自分の目の前でイケメンな男の子に自分が見たことのない一面を見せている。彼は非常に面白くないと感じているようだった。


 別の場所では、千里が20歳の男の前にやってきた。


 千里:「よお、张三ちょう さん。まさかここで中国人に会えるとは思わなかったよ」


 张三:「………………その名前で呼ぶな、ケイン(Kane)と呼べ。Kでもいい」


 千里:「ああ、そっちも千里で呼んでくれ。Kはどこの出身?」


 张三:「……広東だ」


 千里:「おっ! 俺も広東だ! 俺は広州、Kは?」


 张三:「…………俺もだ」


 千里:「まさか同郷だったのか!?」


 日本に旅行に来て、異世界に飛ばされた。同じく日本に旅行に来て、そして異世界に飛ばされた同郷の人に出会う。千里は明るく笑った。これは3日間で最高に嬉しい瞬間。


 彼は握手を求めようと手を差し出したが、ややうざがっている张三に無視された。


 张三:「馴れ馴れしくするな、俺はそういうのには乗らん」


 そう言うと、张三は踵を返して去り、気まずい千里を残した。


 张三:「ディウっ(けっ)……なんで中国人はどこにでもいるんだよ。俺は『みんな』ってもんのために頑張りたくないわ」


 张三はブツブツと呟きながら、巨大な根元の傍らの暗がりへ歩いて行った。その時、手に火傷の痕がある男が彼のそばに来て話しかけた。


 手に火傷の痕がある男:「よう、兄ちゃん」


 张三:「………………なんだよ」


 手に火傷の痕がある男:「さっきの話聞いたぜ。いいこと言うよな。なんで『みんな』だのなんだのってのに自分の時間と労力使わなきゃなんねえんだよって話だ」


 张三:「だよな!」


 手に火傷の痕がある男:「そうそう、人間は自分のために生きなきゃな」


 张三:「その通りだ! えっと、名前はなんて? 話が合いそうだ」


 手に火傷の痕がある男:「比口ひぐちだ。なあ、オレらんとこ来ねえか?」


 张三:「お前らんとこって……ああ、確か数人あの連中と一緒に行動しなかったっけ?」


 比口:「ああ。あのガキ共は毎日『皆で協力し合う』だの抜かしてうるせえんだよ。狩りなんて実は簡単なもんさ、あいつらはカッコつけてるだけだ。オレらにはオレらの生き方がある。あいつの言うこと聞く必要なんてねえ。なあ?」


 张三:「まったくだ!」


 比口は张三の反応が完全に望んでいた通りであることを確認し、口元を思わず歪ませた。


 比口:「だったらオレらんとこに加わるべきだぜ。いい話、お前にも教えてやるよ」


 张三:「どんな話だ?」


 比口:「まあまあ、まずはこっち来いよ、オレらの仲間のところで語り合おうぜぇ」


 张三:「お…おう、わかった」


 こうして张三は高木の団体の陣地に連れて行かれ、その後彼らは何かしらのことを話し合った。密談する数人の影が、焚き火で揺らめく。


 かくして、人々はこの池の拠点でそれぞれのことをしながら、星空が見える最初の夜を過ごした。





 読んでくれてありがとうございます。

 もしよかったら、文章のおかしなところを教えてください。すぐに直して、次に生かしたいと思います。(´・ω・`)

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