0086 - 第 2 巻 - 第 2 章 - 03
四人でかなり歩いたが、適した獲物は見つからなかった。
千里:「一緒に歩いてる効率はあまり高くないみたいだな。今俺たちは4人いるから、二手に分かれた方がいいと思う」
進:「そうだね」
斗哉:「いいぜ。どう分ける?」
千里:「進と斗哉、君たちは何年もの友達だから、連携はうまく取れるだろう。君たち二人で一組ってのはどうだ?」
進:「いいん……じゃないかな?」
斗哉:「なんでそんな自信なさげなんだ?」
進:「なんでだろうね……」
斗哉:「てめえ! 見てろよ、あいつよりでけえ獲物仕留めてきてやる!」
進:「はいはい。じゃあ頑張ろう」
千里:「なら大西さんは俺と一組で」
駿:「おう」
千里:「俺と大西さんは小渓流に沿って行く。あっちに池とか沼とかないか探してみる。中型と大型の動物に遭遇する確率も高いだろうし、俺たちの方が体格もいいから、獲れても運びやすい。君たちはそっちへ。もし熊みたいな大型動物に遭遇したらすぐ逃げろ。ここに目印にしやすい小さい木があるから、元の道を戻ってくるように」
彼らは今回は紙とペンを持ってきており、簡単な地図を描くために他の者から借りたものだ。
進:「わかった」
斗哉:「……おう」
こうして四人は二手に分かれ、それぞれ別の方向へと向かった。
斗哉:「……なあ、進。お前、千里ってやつをどう思う?」
進:「ん? 物知りだし、武術もできるし、人もいいし、すごく頼りになるって思うよ」
斗哉:「本当にそんなにいいやつなのか? 大学生自体にあまりいいイメージないんだよ、オレ。それにあいつ外国人だし」
進:「外国人だと何か問題か」
斗哉:「なんかよく知らないことだらけって思わないか? 考え方とか習慣とかさ」
進:「別にないと思うけど」
進と斗哉の二人が話しながらしばらく歩くと、また前回と同程度の大きさのウサギに出くわした。
斗哉:「逃げた! 追うぞ!」
前回と同じく、ウサギが前を走り、二人が後を追う。追いつきそうになるとウサギは素早く方向転換。彼らも多少の経験はあったが、まだうまくはいかないようだ。
斗哉:「チッ!」
進:「……っし! ぐっ……ダメか!」
間合いがかなり詰まった時、進は竹刀状の枝を振るったが、惜しくも外れた。
進:「千里みたいにやろう! 小さい枝を何本か拾って妨害するんだ!」
斗哉:「おう!」
すると彼らは追いかけながら適当な小枝を拾った。
進:「こうしよう! 少し離れて、左右から挟み撃つんだ!」
そう言って二人は少し距離を取った。進が左で、斗哉が右。
ウサギが急に方向転換して二人の間の隙間から逃げ出さないように、進は少し腰を落として重心を低くし、武器代わりの竹刀状の枝を地面に擦らせながら走って音を立て、ウサギを怯えさせ簡単に方向転換できないようにした。
斗哉が「そらッ!」と叫びながらウサギの前方に小枝を投げつけた。前回のウサギほどではないが、このウサギも大きく反応する。この方法はウサギの逃走速度を効果的に低下させた。
ウサギの数回の方向転換と二人の数回の攻撃の後、ウサギは進の左前方へと走り出し、二人の攻撃範囲から逃げ出そうとしているようだった。
進は直ちにウサギの意図を察知したが、彼の手にはもう小枝がない。そこで彼は左前方へと加速し、タイミングを計りながら右下から左前方へと<武器>を振り出した。
武器が土煙を上げ、ウサギの上半身を捉えた。しかし力不足で、ウサギはすぐには止まらなかった。
ウサギは驚いて反対方向へ逃げ出したが、そこはちょうど、斗哉がいる位置だった。
進:「斗哉っ!」
斗哉:「おらあッ!!」
ドンッ!!
鈍い音がして、斗哉の棍棒武器は見事にウサギの頭部を直撃した。ウサギは地面に倒れ、痙攣する。
斗哉:「やったぜ!」
ザァ――ッ!
慣性で進の体はまだ前へ進んでいる。減速するため、彼は再び武器の先端を地面につけてブレーキとし、止まった両脚と武器が土と枯葉を巻き上げながら地面に3本の線を描き、ようやく止まった。微かに土の匂いが立ち込める。
斗哉がウサギを掲げた。
斗哉:「どうだ! オレら二人だけでも獲物狩れたぜ、な!」
進:「ああ。千里のお手本があったからだけどね」
斗哉:「学んだもんが勝ちだ、へへっ!」
二人の顔には再び、喜びと自信に満ちた笑顔が浮かんだ。
進は手の甲で頬に伝う透明な汗を拭った。その整った面差し、颯爽たる英姿、実力相伴う自信は、実に心を奪われる――
と、傍らに佇む人たち、特に女性たちはそう思った。
進:「わあ!?」
斗哉:「どっからこんなに人が??」
彼らは龍崎颯真たち11人の団体。空腹の彼らはゆっくり移動している最中、進と斗哉の狩りの物音を聞きつけ、二人の方へやってきたのだった。
進が状況を説明し、拠点に水があって肉が食べられると伝えると、彼らの反応は紗奈たちが朝見せたそれと全く同じで、非常に興奮していた。
拠点へ戻る道中、進と斗哉は先頭を歩いていて、斗哉が小声で進に話しかける。
斗哉:「あいつら11人もいるんだぞ、連れ帰って本当にいいのか? 肉が足りなくなるだろ」
進:「人が増えれば狩りできる人手も増えるだろ。ほら、オレたちと状況が違って男が多いんだ」
斗哉:「そうは言ってもよ……万一、拠点の野郎どもみたいに他人事みたいな態度だったらどうする?」
進:「えっと……そうならないじゃないか、多分」
斗哉:「…………」
拠点に戻ると、拠点にいた他の者たちは大きく驚く。二人がまたウサギを1匹獲って戻ってきただけならず、そんなに大勢の人を連れてきたとは思ってもみなかった。
颯真たちは水源にひざまずいてがぶがぶと水を飲んだ。水を飲み終わると焼肉の香りを嗅ぎつけ、食い入るように見つめている。
慧子:「プレッシャーだなあ……」
すると、焼肉の香りに惹かれて慧子の近くへ行こうとした亮太は足元に注意を払わず、誤ってピアスをした男青年にぶつかってしまった。
ピアスをした男青年:「いてえなぁ、おい」
亮太:「ご…ごめんなさい……」
ピアスをした男青年:「またオマエかデブ! 昨日の件を根に持ってわざとぶつかってきたんだろ!」
亮太:「ち…違います! わざとじゃないです!」
雲行きが怪しくなるのを見て、斗哉がすぐに声を荒らげて止めた。
斗哉:「やめろ! 謝ってんだろ!」
ピアスをした男青年:「ああん?! 謝りゃ済むと思ってんのか?」
斗哉:「じゃあどうしたいんだ? 言っとくが、ここにいるなら食い物にはありつける。だがここにいたきゃ騒ぎ起こすんじゃねえ」
ピアスをした男青年:「………………ちっ」
ピアスをした男青年は非常に不服そうな表情を浮かべたが、何も言わずに踵を返して離れていった。
おそらく食い物にありつくため、今は一時的に我慢しているのだろう。斗哉はそう思いながら彼の背中を睨んだ。
宏人も近づいてきた。
宏人:「またあいつか。昨夜もあんなに癇癪起こして、でたらめ言ってたぞ。小谷、あいつのことは相手にしなくていいんだ」
亮太:「…………すみません……」
その一方で、慧子は声を張り上げる。
慧子:「ねえ――誰か焼肉手伝って――」
人数が増え、処理すべきウサギももう1匹いるため、彼女は1匹目のウサギを焼き終わってから2匹目ウサギを処理するのでは遅すぎると考えた。
タバコを吸う30歳の男性が「俺がやる俺がやる、焼くだけなら俺でもできる」と言いながら慧子の傍へ歩み寄った。
慧子の前には火床と、ぐるりと刺された焼肉の串、そして彼女の手には焼いている最中の串が何本かある。肉は既にしばらく焼かれており、もうじき食べられそうだった。
慧子:「……手伝いに来てくれるのはありがたいけど、光多さん、そのタバコ消してもらえない? 灰が焼肉に落ちるとよくないから」
光多:「大丈夫、落とさないからよ」
慧子:「…………」
その返答を聞き、慧子は眉をひそめ、烤肉を光多に渡さなかった。
進:「光多さん、一旦タバコを消していただけませんか? ここは喫煙者より非喫煙者の方が多いですし、誤って灰が落ちるのも確かによくないですから」
光多:「おおお、はいはい、消します消します。狩りをしたのはあんたらだ、あんたらの言うことは聞くよ!」
進:「……」
光多がタバコを消した後、慧子は串肉を光多に渡し、自分は進の手から2匹目のウサギを受け取ると処理を始めた。
斗哉:「…………」
この一連の会話を聞き、斗哉はこの場にいる者たちを見回し、何かを考えているようだった。
やがて、光多の「焼き上がったぞー!」という呼び声と共に皆は火床の周りに集り、そして斗哉と進、慧子の相談の下焼肉が分配された。
これらのウサギは脂が乗っており肉量も多かったが、1匹でこれほど大勢に分けるには遥かに足りない。そのため、まずは後から来た11人と狩猟チームに分けることとした。その者たちが最もエネルギーを補給する必要があったからである。次に、70歳近くの年配男性と2人の中学生へと渡った。
斜め前髪の長い男:「……ざけんなよ……」
初日から団体にいた斜め前髪の長い男が小声でぼやく。他の者たちも一旦散り、2匹目のウサギを待つことにした。
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