0083 - 第 2 巻 - 第 1 章 - 10
【団体3】
女子短大生、ふくよかな中年男性、浅黒い肌の男の三人は日が暮れ際に別の小団体に出会った。女子高生2名と30代女性1名からなり、同じく全員が互いに知り合いではない。
彼女たちが留まっている場所には2メートルほどの段差があり、段差の岩の裂け目から一筋の清水が流れ出て、その下には小さな水溜まりがある。中の水は非常に澄み切って清潔だ。水溜まりから溢れた水は目立たない小さな渓流となり、他の場所へと流れ去っている。
水分を補給した後、双方で情報交換が行われた。
女子短大生は佐久良亜衣美、ふくよかな中年男性は桧前敏之、浅黒い肌の男は大西駿、スカートを穿いた女子高生は高須那帆、ズボンを穿いた女子高生は寿寿木春、30代女性は熊村慧子とそれぞれ名乗った。
所持品について、那帆は異変の混乱の中で鞄を失くしており、彼女は何も持っていないと言える。春はスマホを失くしていた。慧子の鞄の中にはウエットティッシュ、手指消毒液、ノート1冊、ペン、手鏡、簡単な化粧品、未開封の使い捨てマスク2枚、財布、鍵、身分証明書、ヘアゴムなどが入っており、大多数の女性が出かける際に持ち歩く物品と大差ない。
亜衣美:「5倍」
初步的な交流の後、空腹の3人の女性は亜衣美のお菓子を食べたがった。
慧子:「5倍は高すぎるんじゃないか――って言いたいところだけど、こんな状況で売ってくれるだけありがたい。じゃあ少し売ってちょうだい」
那帆:「あの……私、お金を持ってないんです……」
慧子:「大丈夫、私がおごるわ。春ちゃんの分も私が出すよ」
春:「いいんですか? そんな、ご負担になりすぎでは……」
慧子:「大人の財力をナメないでよ、これくらい余裕だ。このおぞましい場所でずっと付き合ってくれた御礼ってことで。それに戻ったらどうせガッツリ補助金せしめるんだから、二人とも安心して食べなさい!」
那帆と春は互いを見合わせ、そして揃って慧子にお辞儀をして感謝した。
春&那帆:「ありがとうございます!」
慧子が財布を出すと、亜衣美はリュックを下ろす。
亜衣美:「毎度」
エネルギーを補給した後、6人はこれからの対策について話し合ったが、どうやら何ら価値ある結論も出なかった。
真っ暗な夜、火を起こす道具もサバイバルの知識もない彼女たちは、やむなくスマホの照明機能で小さな一画を照らし巨木の根元に寄り添い、浅い眠りについた。
【団体4】
スマホの照明を使っている団体はもう一つあった。
颯真、美空、彩乃、宏人、亮太、健一の六人は昼間のうちに続々と5人と出会った。それぞれ20代男青年2名と女青年1名、男子中学生1名、30代女性1名。合わせて11人の団体となった。
他の団体同様、彼らもサバイバルの道具はなく、互いに知り合いではない。違うのは、彼らは口にできる食物を見つけられなかったことだ。
キノコなどの野生の菌類を見つけたことはあったが、宏人と彩乃の強い説得により食しなかった。男子中学生が自分のチョコレートを1枚食べ、女青年が自分のビスケットを1袋食べた以外、他の者はこの森に来てから何も食べておらず、何も飲んでいない。
空腹のため、全員の機嫌は悪く、すぐにかっとなる情緒が出やすかった。
トトトトトン。ピアスをした男青年が自分のスマホ画面を力いっぱい連打しながら罵る。
ピアスをした男青年:「まだ圏外かよ、クソが! ネットないじゃなんもできねえじゃん!」
ぐうーううううううううぅぅ――
ピアスをした男青年:「うるせえぞ! デブっ!」
亮太:「ご…ごめんなさい……」
ピアスをした男青年:「謝りゃいいのかよ! その腹なんとかしろ!」
亮太:「……うっ…………」
その理不尽な要求に、宏人は少し我慢できなくなった。
宏人:「そんなこと誰にできるんだよ。お前の腹が鳴ったら、自分に同じこと言えんのか?」
ピアスをした男青年:「アぁ!? テメーに関係ねえだろ? ただでさえイラつくのに、こいつの騒音まで我慢しろってのか?」
宏人:「聞きたくなければ出て行けばいい」
ピアスをした男青年:「どこにいようがオレ様の勝手だ。テメーが指図すんじゃねえよ!」
宏人:「…………」
宏人と他の何人かはこのピアスをした男青年がどういう人間かを理解した。
宏人は彼と議論するのを諦め、自分が休んでいた場所に戻る。他の者も何も言わなかった。
ピアスをした男青年:「逃げやがった。笑えるわ」
傍らで、空腹ですでに長く話していない颯真の心の中ではこう考えていた。
…………これじゃない…………
……なんで何も起こらないんだ?
今のこれはただのつまらんサバイバルじゃないか。異世界のイベントは? 特典は?
それともあのキノコがそうだったんじゃ? 食べたら能力を得られたのか?
さっきのやつの言う通りだ。なんで南のやつ指揮ってんだ? あんな脇役は俺にどうすべきか聞いてくるんじゃないのかよ?
俺の可愛いヒロインは?
ああ……くそ。腹減った。
最悪の異世界初日体験だぜ。
興奮してもとより少ない体力を消耗したため、ピアスをした男青年もどこかに休みに行った。
その後、誰も何も言わなかった。
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