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0082 - 第 2 巻 - 第 1 章 - 09


【団体2】


 高木と山田、キャバクラ嬢と手に火傷の痕がある男、この4人は移動中に出会い、その後続々と20代の男性2名と20代の女性2名と行動を共にし、男5人女3人合計8人の団体となった。


 千里たちが足を止めたのと同時期に、高木たちも移動を停止した。


 だが明日に狩りをする計画している千里たちとは違い、高木たちは午後中に早速狩りを開始し、見事に野鶏2羽と雛鶏3羽を捕まえることに成功していた。正確には高木と、高木に指揮された山田の二人が捕まえたのである。


 高木は山田以外の者に「食いてえか?」と聞く。


 5人はこぞって頷いた。


 高木:「なら持ってる物全部出してみろ。使えそうなもんがあるか見せてみな」


 高木は野鶏を山田に渡すと、2人の20代女性の元へ行き、持ち物を公開するよう目で促す。2人の女性は高木への畏怖と食物への渇望から、その要求に従った。


 一人目の女性の鞄には化粧品やその他の私物が少しあるだけで、この状況で価値あるものは何もなかった。


 二人目の女性の鞄には私物の他に、いくつかの紙と刃先の鈍いハサミがある。どうやら切り絵愛好家のようだった。高木はそのハサミを見て眉を上げた。


 高木:「おっ、これはいいな。徴収するぞ」


 そう言うと彼はハサミを自身のジャケットのポケットの一つにしまった。続いて、ややだらしない格好の20代男性の前にやってくる。


 高木:「おまえは?」


 だらしない格好の男:「ハッ、タダでくれるのかと思ったら、そういうことかよ」


 だらしない格好の男はズボンのポケットから折り畳みナイフを取り出し、「カチッ」と音を立てて開くと、刃を上にして高木へ向けた。


 2人の20代女性:「きゃっ!」


 その動作と外見、そして邪悪な表情から、彼が善人でないことは誰の目にも明らかだった。高木以外の者は恐怖で一斉に2歩後退する。


 だらしない格好の男:「その鳥、オレがもらう。そこのオマエも、パンよこせ」


 そんな口調と要求に、手に火傷の痕がある男は非常に不愉快そうだった。


 だらしない格好の男:「へへ、パンだけだと思ったら肉もいただけるぜ」


 高木:「……はあ…………」


 高木はため息をついた。声がマスク越しで低く響いて。


 高木:「おまえ、頭悪いだろう」


 だらしない格好の男:「ああん!?」


 だらしない格好の男は青筋を立て、高木を睨みつける。


 高木:「おまえ、コンビニの前で店の邪魔したり、路地裏でガキンチョから金巻き上げたりするタイプのチンピラだろ? そんなことやるのはおまえの自由だけとよ、相手を選べや」


 高木の体格はだらしない格好の男より明らかにがっしりしていたが、だらしない格好の男は意に介さない。


 だらしない格好の男:「ハッ! オレにはナイフがあるんだぜ! てめえに何ができるっていうんだ?」


 高木:「……どうやら本当に頭が悪そうだな」


 だらしない格好の男:「てめえ! もう一度言ってみ……」


 だらしない格好の男の言葉が終わる前に、高木は素早く一歩踏み込み、左手でナイフを持った相手の手をはたき、同時に右拳をその鼻めがけて放った。


 ドン! 鈍い音と共に、だらしない格好の男は後方へ倒れた。


 彼は鼻血の出る鼻を押さえ、恐れた目で高木を見つめる。


 高木:「理解した?」


 高木の口調はとても落ち着いている。


 だらしない格好の男の喉がうなるような音を立て、硬直したように頷いた。


 ナイフを恐れないばかりか、一撃でこれほどのダメージを与え、そのスピードも異常だと、だらしない格好の男は自分と高木の差を理解した。


 高木:「ならナイフをよこせ」


 だらしない格好の男は先ほどの気勢完全に失い、震える手で高木に自分の折り畳みナイフを差し出した。


 高木は腰を屈めてナイフを受け取ると、柄の端を摘んでひらひらさせる。


 高木:「他に何かあるか?」


 だらしない格好の男は必死に首を振った。


 高木:「そう」


 そして高木はナイフを摘んだ手を伸ばし、他の者に尋ねた。


 高木:「鶏さばけるやつおるか?」


 彼のナイフに対する畏怖も興味もない態度は、他の者も恐れさせた。もう一人の20代男性を除いて。


 この男性は沈着だった。


 落ち着きのある男:「他にできるやつがいないなら俺がやろう。それほど上手くはないが、焼き鳥店の厨房で働いた経験がある。俺、なんも持ってないんで、労働で報酬と交換ってことでいいか?」


 高木:「おお、そりゃ助かる、頼むぜ。ほれ」


 そう言うと、高木はその男性の元へ行きナイフを渡した。男性は手の中のナイフを見つめ、高木のあっさりした態度と無頓着さに驚く。


 落ち着きのある男:「……兄貴、もしかして極道の方か?」


 高木:「とんでもない。俺はただの小市民だ」


 落ち着きのある男は山田を一瞥し、再び高木へ向き直る。


 落ち着きのある男:「……黒水くろみずだ。兄貴、俺も子分にしてもらえないか?」


 高木:「おお、いいよ、歡迎だ」


 黒水:「あざす。じゃあ俺は今から鶏をさばくか? 火はどうする?」


 高木:「先にやってていいから」


 黒水:「あいよ」


 黒水はナイフを持って山田の傍らへ行き、声をかけた。


 黒水:「よろしく頼む」


 山田:「…………よろしく」


 山田が野鶏を黒水に渡すと、黒水は野鶏の毛をむしり始めた。


 黒水:「兄貴、ここ水がないんで、血抜きが不完全で臭みが出るかもしれん。それに毛も完全には取れないぜ」


 高木:「おう」


 軽く返事すると、高木はキャバクラ嬢と手に火傷の痕がある男の前に来て「おまえら、何かないか?」と尋ねた。


 キャバクラ嬢は非常に積極的に協力した。ただし彼女の鞄にも化粧品等の品物しかなく、それ以外には単体で大きな包装の錠剤1つと、開封されたコンドーム1箱のみ。


 キャバクラ嬢:「私の物じゃ役に立たないかもしれないけど、とっても気持ち良くしてあげるから、ちょっと分けて~」


 彼女は妖艶な声でそう言いながら身体をくねらせる。他の者はすぐにその意味を理解した。


 高木は「ほお……」と彼女を品定めするように見て、少し考えた。


 高木:「いいぜ。名前は?」


 キャバクラ嬢:「ルナって呼んで」


 高木:「店での名前か、まあいい」


 ルナと高木が何らかの取引を成立させたのを見て、手に火傷の痕がある男は視線を逸らしながら小声で呟く。


 手に火傷の痕がある男:「けっ、安い女だ」


 しかしそれでも聞かれた。ルナは少々機嫌を損ねる。


 ルナ:「私だってこんな安売りしたいわけじゃないのよ、こんな状況じゃどうしようもないでしょ。それにあんた、私のこと言える立場? あんただってやってたじゃない」


 手に火傷の痕がある男は返事をしなかった。


 高木は振り返って最初の20代女性に尋ねた。


 高木:「おまえはどうする?」


 その女性は恐れおののいて一歩後退し、微かに首を振った。


 一人目の女性:「わ…私はいやです!」


 高木:「おう、そうか。なら分けねえぞ」


 そう言うと再び手に火傷の痕がある男の方に向き直る。


 高木:「おまえはパンだけか? 交換するか?」


 高木がだらしない格好の男を一撃で倒すのを見た後、手に火傷の痕がある男は自分が敵わないことを悟り、<再び自分なりの“交換”を持ちかける>という考えを放棄した。


 手に火傷の痕がある男:「交換する! するよ!」


 今高木がまだそれを望んでいる内にすぐに交換すべきだと考えた。さもなければ、高木が自分と同じことをしだしたら、自分は何も残らなくなる。


 高木:「怖がるなよ、奪いやしねえ。奪うなんて馬鹿のすることだ」


 手に火傷の痕がある男:「……はは…………」


 高木は山田が用意した薪の方へ歩き出す。途中で振り返り、後ろの数人に「ライター持ってるやついないか?」と尋ねると、全員が首を横に振った。


 そして彼は薪の傍らに来ると、ジャケットのポケットからライターを取り出した。


 なぜ自分がライターを持っているのに他人に尋ねたのか?


 と、彼が薪に火を点けている間、他の者たちは皆そう考えていた。


 焚き火が熾ると、高木はずっと黒水の後ろで彼がどう野鶏をさばくか観察していた。その間、誰も何も言わず、皆野鶏という食物を待っている。


 喉を切って血抜きし、毛をむしり、腹を割いて内臓を取り出し、各部分に解体すると野鶏の処理は完了した。最後に削った細い枝に肉塊を刺し、焚き火の上で焼く。


 野鶏の皮は徐々に縮み、脂が焚き火に滴り落ち、骨の断面がじゅうじゅうと音を立てる。一日中空腹だった数人は焼肉の香りを嗅ぎ、口の中に絶えず唾液を分泌した。


 野鶏が焼き上がると、高木は全員に脂で光る鶏肉の串を配った。彼自身と山田が最も多く、次いで手に火傷の痕がある男、ルナと黒水、さらにその次がハサミを徴収された女性、最後が折り畳みナイフを徴収されただらしない格好の男だった。


 何も提供しなかったあの女性については、高木が先ほど宣言した通り、肉を分け与えなかった。


 これらの野鶏の串は生臭く、完全に火が通っておらず、塩気もない。だが空腹と疲れで、どうすることもできないこの状況で肉を食べられるというだけで、皆は十分に満足していた。


 高木はマスクを外さず、マスクを鼻までめくり上げ、口を出して食事をした。彼は鶏肉の串とパンを食べながら、何も提供しなかった女性を一瞥する。


 高木:「おまえの分はねえぞ。なんか役立つことするか、自分で食いもん探して来い。だが俺も鬼じゃねえ、欲しいならあの内臓食ってもいいぜ」


 彼は顎で地面に捨てられた野鶏の内臓を指さした。その女性は侮辱されたと感じたが、怒りを表に出すことしかできない。


 今は既に夜で、周囲はほとんど何も見えず、たとえこの団体から離れたいと思っても今は時機ではない。だから彼女は巨大な根本に遮られた場所を見つけて座り、体力を温存するため身体を丸めて休むしかなかった。


 この状況を見て、ハサミを徴収された女性が彼女の傍らへ行った。


 ハサミを徴収された女性:「元永もとながさん、これ一緒に食べましょう」


 元永:「…………ありがとう。でも本当にいいの?」


 ハサミを徴収された女性:「いいのいいの」


 元永:「………………ありがとう、都守つもりさん」



 読んでくれてありがとうございます。

 もしよかったら、文章のおかしなところを教えてください。すぐに直して、次に生かしたいと思います。(´・ω・`)

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