0081 - 第 2 巻 - 第 1 章 - 08
【団体1】
森の中だと太陽の光は木々に遮られ、どうしても薄暗くなりやすい。この巨木の森ともなれば、なおさらだ。
日が沈む時間帯になり、周囲はすでにかなり暗くなっていた。
千里、進、斗哉、楓、紗奈、貴柳、真部の七人は一日中探し回ったが水源は見つからず、しかし同じ原因でこの森に来たらしき人員を8名見つけた。それぞれ女子中学生1名、女子高校生1名、20代女性2名、40代女性1名、20代男性1名、30歳の男性1名、60代男性1名で、合わせて女性5名と男性3名。
全員、こんな状況で役に立つようなものは何も持っていないと語った。唯一役に立ちそうなのは、30歳の男性がタバコ用に持っていたライターだけ。
彼らは比較的広い場所を見つけ、地面の落ち葉や枝を整理し、ライターで焚き火を起こした。皆疲れて会話もなく、ただぼんやりと焚き火を見つめながら休息している。
誰もまともな食物を口にしていない。先ほどいくつかのベリーや果樹を見つけたが、それらの果実は見た目も悪く数も足りず、ないよりましという程度だった。
紗奈は自分の分の果実を手に持ち、黄緑色の果皮を親指でなぞり、一口かじった。
舌に感じたのは、渋味が大半で、他は微かな酸味と甘み、そして後から来る苦味だった。
紗奈:「……まずい……」
だが水分を摂取するため、我慢して食べるしかなかった。
千里:「……野生の果実ってこんなもんだよ。味は甘くなくて、果肉はふっくらしてないし、種はでかい。普段食べてる果物は何十代もかけて人工的に選抜・栽培されてきたものだ。野菜も同じ」
千里の声にも朝のような元気はなかった。
紗奈:「そうなんだ……」
千里:「……みんな、明日は狩りに行こう。ここが果てしなく広い森だってことはもう確かだ。俺たちはサバイバル生活をしなければならない」
皆も自分たちの状況は理解していたが、他人からそう言われると、気持ちはさらに沈んだ。
千里:「道中で子鹿、野鶏、ウサギ、リスを見かけた。それから、何だかわからない小型動物もいた。見たことないのは置いといて、鹿やウサギとかは、普段見るのとちょっと違うけど、多分似たようなものだと思う。だから狩りに行こう。ついでに水源も探す」
皆は顔を見合わせ、反応はあまり積極的ではなかった。
斗哉:「できなくはないけど、狩れるのか? こんなに人数がいて、鹿1頭狩れたとしても一日も持たないだろ? それとも、狩ったもん勝ちとか?」
千里:「……こういう非常時こそ助け合うべきだと思う。ここには子供も老人もいる。少なくとも俺は自分だけ考えたりしない」
斗哉:「わ…わかってるよ! オレもそう思うけど、ただはっきり聞きたかっただけだ」
千里は斗哉に微笑み返す。二人の会話を聞いて、皆の表情は少し和らいだ。
千里:「では、ここで狩りの経験がある人はいますか? いたら手を挙げてください」
15人の中、手を挙げる者は一人もいない。
千里:「俺も経験ないです」
千里の自問自答の冗談に、皆は少し笑いをこらえた。
千里:「では、<狩りを成功させられる自信>がある人は? 俺は、ちょっとある」
再び皆は顔を見合わせた。
斗哉:「じゃあオレもいけるだろ」
斗哉は形だけ手を挙げた。
進:「教えてもらえれば……」
進は手を挙げた。
紗奈:「…………うーん……」
紗奈も手を挙げたいようだったが、その自信はないようだ。
千里:「無理しなくていい。皆経験ないんだから、実際どうなるかわからない。自信が十分じゃないなら、俺たちが試し狩りしてくるのを待ってからでもいいよ」
紗奈:「うん……ごめんね、ちょっと怖くて」
千里:「大丈夫。では他の人はどうですか」
相変わらず顔を見合わせるばかりで、もう手を挙げる者はなさそうだった。
千里:「どうやら俺たち3人だけみたいだな」
斗哉は20代の若い男を一瞥したが、何も言わなかった。するとタバコを吸っている30歳の男性がニヤリと、タバコのヤニで汚れた歯を見せながら開口する。
30歳の男性:「いやー、君たち三人ともまだ学生だろ? やるじゃん、頑張れよ! 俺は体力に自信がなくてな、絶対無理だわ。だからパスするよ」
千里は軽く会釈した。
千里:「では、年配の方以外で、可能な方は、俺たちが狩りをしている間、他の方向の探索を手伝ってください。無理に狩りをする必要はありません。水源や他の食べ物を探すのを手伝うだけでいいです。そうすれば効率が上がります」
紗奈は積極的に「はい、私やります!」と返事し、他の大半の人も軽く頷いて同意した。
千里:「よし、その時は必ず最低でも2人一組で、それにあまり遠くまで行かないようにね。進、斗哉、俺たちは休もう。明日夜が明けたらすぐ出発だ」
進:「ああ」
斗哉:「おう」
空は完全に暗くなり、すでに夜になった。
周囲は焚き火に照らされた場所以外ほとんど何も見えず、彼らは<闇に包まれる>とはどういうことかを身をもって体験した。
誰かが空を見上げたが、見えたのは巨樹の枝と葉、そしてその間から漏れるかすかな光だけで、空は見えなかった。気温は低くないのに、不気味な寒気を感じさせられる。
彼らは空腹、疲労、不安、悲しみを感じていたが、千里、斗哉、進の三人の存在が、明日へのわずかな希望を抱かせていた。
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