0080 - 第 2 巻 - 第 1 章 - 07
【シーン5】
森のどこかで、2人の男性と1人の女性がそれぞれのスマホ画面を見ていた。
手に火傷の痕がある男:「めっちゃ明るくね? もうすぐ19時だぞ?」
眼鏡をかけた18歳の男子高校生:「だからここは日本じゃないって言ったでしょ」
2人の男が時間について議論していると、傍らにいた若い女性がお腹をさすりながら口を挟んだ。
女性:「それよりお腹空いたわ。ねえ、メガネ君、そのパン半分くれない? そしたら1回、シてあげるから~」
女性は変なジェスチャーをしながら言い、男たちはすぐその意味を理解した。
手に火傷の痕がある男は焦りと不满を見せた。
手に火傷の痕がある男:「なんでコイツだけ?」
女性:「だってあなたのインスタントラーメン、粉々じゃない。それにお水もないし、あんなの食べたくないわ」
手に火傷の痕がある男:「押し合いへし合いで潰れたんだから、しょうがないだろ」
手に火傷の痕がある男はコンビニの袋を提げており、中には量販の5食パックのインスタントラーメンが入っていた。三人が出会う前、彼は既に1袋をそのまま食べて空腹を満たしていた。
一方、眼鏡をかけた18歳の男子高校生の食パンは、彼自身もいくらか食べていたが、残りの量はリュックからはみ出るほど多く、状態も非常に良かった。
眼鏡をかけた18歳の男子高校生:「…………結構です。自分でも食べなきゃいけないので」
彼は2秒躊躇して断った。
女性:「お願い~! 少しもくれないと、この森出る前に餓死しちゃうよ~」
眼鏡をかけた18歳の男子高校生:「うーん……」
彼がタダで分けてやるべきか考えていると、前から彼のパンを狙っていた手に火傷の痕がある男が一歩前に出た。
手に火傷の痕がある男:「ちょっと待って待って。ちょっとあっちで相談しようぜ」
眼鏡をかけた18歳の男子高校生:「何の相談? ちょ…ちょっと……」
手に火傷の痕がある男:「いいからいいから」
手に火傷の痕がある男は眼鏡をかけた18歳の男子高校生の肩を押し、彼は半ば強制的に女性から離れた場所に連れて行かれた。
そして腕で彼の首を巻いた。
手に火傷の痕がある男:「なあ、わかるよな、これからは大人の時間だ。暴力は使いたくないから、高校生君は大人しくパンを預けてくれよ」
眼鏡をかけた18歳の男子高校生は沈黙し、これが強請りだと理解した。
頭を回転させ、まずはどうやって逃げるかを考えた。眼前のこんなチンピラに走って勝てる見込みはないと判断すると、思考を切り替え、どうやって損失を最小限に抑えるかを考える。
眼鏡をかけた18歳の男子高校生:「…………交換ってのはどうですか。ボクのパン全部あげますから、あなたのインスタントラーメン4袋をください」
手に火傷の痕がある男:「いやいや。お前のパンはオレがもらう。オレのラーメンはやらん」
眼鏡をかけた18歳の男子高校生:「もし本当にそうしたら、彼女があなたを怖がったり、見下したりするんじゃないですか? <人を隅に連れて行ったら、その人が進んでパンをくれた>、そんなの誰がどう見たってあなたが何かしたってわかるでしょ? 食べ物を全然残してくれなかったら、万一ボクが餓死したらどうするんですか? もしボクが彼女だったら、あなたがそういう人間だって知ったら絶対にどこかで逃げますよ。あなたもそれは望まないでしょう」
手に火傷の痕がある男:「………………」
眼鏡をかけた18歳の男子高校生:「交換すれば、あなたは欲しいものを正当に手に入れられるし、ボクの損も少ない。Win-Winじゃないですか? なんならもう一つ付けましょう。交換したらボクはあなたたちから離れます。そうすればあなたももっと楽しめるでしょう? どうです?」
手に火傷の痕がある男はその情景を想像し、もっともだと思い、下品な笑みを抑えきれなかった。
手に火傷の痕がある男:「…………わかった。でも2袋しかやらんぞ」
眼鏡をかけた18歳の男子高校生:「………………いいでしょう」
そう言うと、火傷痕の男は眼鏡をかけた18歳の男子高校生を放す。そして双方で食料の交換が行われた。
その後、彼らは女性の元へ戻った。
眼鏡をかけた18歳の男子高校生:「じゃあ、二人の邪魔はしないでおきます。ボクは自分で適当に歩くよ」
手に火傷の痕がある男:「気いつけよ兄弟」
女性:「一人で大丈夫?」
眼鏡をかけた18歳の男子高校生:「なんとかなりますよ。それじゃ」
挨拶をすると、眼鏡の男子高生は去って行った。
手に火傷の痕がある男:「じゃあ始めよ~か、お嬢さん~」
女性:「まずパン食べさせてよ、お腹が減って死にそう」
眼鏡をかけた18歳の男子高校生は去った後、速足で歩きながら呪いの言葉をつぶやいた。
眼鏡をかけた18歳の男子高校生:「くそ、最悪だ。キャバクラ嬢はどうでもいいとして、ボクは最初、なんであの働いてなさそうなチンピラと一緒に歩いてたんだ…………本当ついてない。はあ……粉々のインスタントラーメン2袋だけか。これで森を出られるのか? マジでここで死ぬんじゃないだろうな?」
彼は眼鏡を押し上げ、手に持った2袋のインスタントラーメンを見つめ眉をひそめた。
眼鏡をかけた18歳の男子高校生:「せめて包装が破れてないやつをくれよ…………」
【シーン6】
夕暮れ時、森のどこか。
短期大学の女子学生、ふくよかな中年男性、顔と腕が日焼けした若い男の三人がゆっくりと歩いていた。
中年男性:「腹減ったなぁ……お嬢ちゃん、またちょっと売ってくれ」
中年男性の要求に応え、女子短大生は大きなリュックサックを下ろして開け、中身――お菓子でいっぱいの状態を披露した。
女子短大生:「毎度」
中年男性は紙幣で満たされた財布から5000円札を1枚取り出して女子短大生に渡すと、しゃがみ込んでリュックの中から欲しいお菓子を選び始めた。
女子短大生とその友人たちは夏休みに大規模なお菓子パーティーを開く計画だった。友人の一人と買い物を終え帰宅途中、異変が起きた。友人は飲み物を、彼女はお菓子でいっぱいのリュックサックを担当していた。
そして今、彼女は自分と並んでいたはずの友人がどこにいるのか分からない。
一方、2人の男性は、財布とスマホなど最低限の外出必需品以外何も持っていなかった。
ぐうううううぅ。浅黒い肌の男の腹からかなり大きな音が鳴り響いた。
女子短大生:「……本当にいらない?」
浅黒い肌の男:「…………いらねえよ。5倍の値段なんか、俺には払えねえ」
女子短大生:「そ」
5倍。それは女子短大生と中年男性の間で交わされているお菓子取引の価格で、女子短大生が購入した時の価格を基準としている。
中年男性も高いとは思っていたし、お菓子はあまり好きではなかったが、この森を数時間歩き回っても出られず、たった2人にしか会えなかったため、飢えをしのぐために女子短大生からお菓子を買うしかなかった。
彼はビスケットの袋を開け、食べながらしゃべる。
中年男性:「いやー、今日たまたま大金を持ち歩いてて、たまたまそんなにお菓子持ったお嬢ちゃんに会えて、不幸中の幸いだよ。この森広くて、いつ食えるかわかんねえんだから、兄ちゃんも少し買ったらどうだい?」
浅黒い肌の男も中年男性の言うことは正しいと思ったようだが、懐具合が苦しいようだ。
浅黒い肌の男:「ぐっ……お…俺は実用価値を超えた部分にカネを払いたくねえ。俺はただのバイトだ。そんな無駄遣いできる金はねえ。それとお嬢ちゃん、いつ出られるかわかんねえ森の中で、その食い物金さえ出せば売るつもりか? このおっさん、見るからによく食いそうだぞ」
中年男性:「おいおい兄ちゃん、それは失礼だぞ。もぐもぐ。互いの合意の上だ、とやかく言われる筋合いはないだろう。もぐもぐ」
中年男性は食べながら抗議した。女子短大生も無表情で返事する。
女子短大生:「……もちろん売るよ。お金さえくれれば、私はなんでも売るし、なんでもする」
浅黒い肌の男:「……は?」
その言葉を聞き、中年男性は慌てて口の中のものを飲み込み、下品な表情になった。
中年男性:「お…おう? そういうことか。じゃあ……お値段は?」
女子短大生:「5倍」
中年男性:「ふむふむ」
浅黒い肌の男は少し呆れた。
浅黒い肌の男:「おまえら……今そういう話してる場合か? そんなことしてるヒマあったら、暗くならないうちにもっと歩いて出口探した方が……」
ぐうううううううぅぅ。
浅黒い肌の男:「………………」
彼の言葉が終わらないうちに、またもや腹が鳴った。しかも前より大きい音で。
女子短大生:「……なにか食べないと倒れるよ」
浅黒い肌の男:「…………」
女子短大生:「仕方ないわね。ちょっと負けとく。お菓子3点で3倍価格。これでどう?」
浅黒い肌の男:「……」
中年男性:「俺は? 俺もこの特典あるよな?」
女子短大生:「あるよ。だからもっと買って」
中年男性:「そりゃよかった! 買うよ!」
そう言うと中年男性は再びしゃがみ込んでお菓子を選び始める。
女短大生:「あなたは」
ぐうーううううううううぅぅぅ。
浅黒い肌の男:「………………くそ! 買えばいいだろ!」
浅黒い肌の男はやけくそになりながら、しゃがみ込んで選び始めた。
女短大生:「……毎度」
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