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0077 - 第 2 巻 - 第 1 章 - 04


【シーン3】


【とある少年】


 俺は龍崎颯真りゅうざき そうま。ちょっと特別な普通の高校生だ。


 どう特別かって?


 まず名前がかっこいい。小さい頃から友達やクラスメイトに羨ましがられたこと何度もある。


 それに見た目も悪くない。別に超イケメンってわけじゃないけど、少なくとも中の上くらいには入るだろう。時々女子からチラ見されることもある。


 頭も悪くない。授業あんまり聞いてないのに、成績は悪くない。中の辺りはキープしてる。真面目にやれば中の上くらいにはなれる。


 それから、小さな会社だけど親父が社長で、その従業員たちには結構敬意を払われてる。


 つまり、どの方面でもちょっと特別だけど、目立ちすぎるわけじゃない。満足してるよ。


 趣味は漫画と小説、そしてそれらのアニメ化作品。


 でもオタクじゃないからね? 特定の作品の特定のシーンについて熱く語ったりしない。自分なりの理解があるんだ。例えばあの状況で俺だったらどうする、とかさ。


 今この時、自分が何をすべきかわかってるのと同じように。


 「……ははは……本当に異世界だ!」


 空に異変が起きた時から「もしや!」って思ってたけど、予感が的中した!


 「よっしゃー!!」


 思わず超ド派手なガッツポーズを決めちまった、ハハ!


 異世界。特に魔法とか異能があるファンタジー世界のこと。俺が大好きなジャンルの一つだ。


 ここでチート能力を手に入れて、色んな事件や女の子に出会う。正義の味方になって事件を解決し、女の子たちにモテて、ハーレムを築く。


 「へへ……へへへ……」


 おっと、ニヤけすぎて変な顔になってないよな?


 コホン。本題に戻ろう。


 異世界に来る方法はだいたい二通りある。


 一つは異世界転生。トラックに撥ねられたり通り魔に刺されたりして事故死した後、神様からチート能力を貰って異世界に生まれ変わるやつ。


 二つ目は異世界召喚、あるいは異世界転移。まず1回死ななくていいし、そのまま召喚されたり転移されたりする。これもチート能力が貰える。


 さっき魔法陣とか見えなかったし、今いる場所が森だから、多分召喚じゃなくて転移だ。召喚なら王宮に出現するはずだからな。


 それから異世界のタイプも二種類ある。


 一つは地球と同じで、強さが全部感覚的な世界。


 もう一つはシステムがある世界。能力や状態が全部数値化されてて、ゲームみたいなやつ。俺はこっちの方が好きだ。便利だからな。


 「よし、じゃあ試してみるか。『ステータス』」


 ……何も起きない。


 「『ステータスオープン』」


 ……何も起きない。うーん……なんて言えばいいんだ?


 「『ウィンドウ』! 『メニュー』! 『鑑定』! 『設定』! 『セッティング』! 『コマンド』! 『数値』! 『強さ』! 『ログイン』! 『ログアウト』ぉぉぉぉぉ――! ゴホッ! ゴホッ! ゴホッ! ハァ……ハァ……」


 くそ、システムウィンドウ出て来ないじゃないか。それに神の声も聞こえて来ない。


 「システムものじゃないか。まあいいさ」


 つまり、まずは自分の実力がわかる場所に行かなきゃいけないってことだ。


 てことは絶対冒険者ギルドだ。


 よし! わかった! 流れはこうだ!


 この森を出る。


 街を見つけて入る。


 冒険者ギルドを見つけて登録する。


 能力を測るとき、測量用の水晶か機械が爆発して、人々の注目の的になる。


 すぐに話題人物になって、物語が始まる!


 「ふふ……ふふふ! はははははははははっ!!」


 気持ちいい! 気持ちいいな! 想像するだけで気持ちいいぜぇ!


 さっそく行くか! 走るぞ!


 魔物を倒して金を稼ぐ! 弱いと見せかけて返り討ちにする! 神装備ポンポン手に入れる! 英雄と讃えられる! ハーレム築き放題になる! はあ――はははははははははははははゴホッゴホッ!!


 って……でも数分走っても周りの景色がぜんぜ変わらないな。ここどんだけ広いんだ?


 ん? あれは?


 女の子だ!


 はやく行かなきゃ。


 俺:「ハァ……ハァ……ハァ……だ…大丈夫ですか?」


 一目で地球人だってわかる。俺と同い年くらい? 目が少し潤んでて、どうしていいかわからなそうな表情してる。こんな場所に転移しちゃって怖がってるのか?


 女の子:「だ…大丈夫! よかった、他に人がいて……!」


 ほら、やっぱり。


 俺:「ああ、大丈夫だよ。俺は龍崎颯真。双影高校の一年生。君は?」


 彼女は目尻を拭いながら返事した。


 「成島美空なるしま みそら。風澄学院の一年生」


 やっぱり日本人か。


 っていうか、最初に出会う女の子がヒロインだろ? 別に超可愛いってわけじゃないな……まあ、別にブスってわけでもないし、問題ないか。1人ぐらい多くても構わんよ、異世界だし……もちろん全員いただくさ、ふふふ。


 もしかしたら<吊り橋効果>でもうすぐ……グヘヘ!


 ……ってそういやさっきの異変、何百何千って人が光になって消えたよな。みんなこの世界に来たのか?


 成島:「ここがどこかわかる?」


 俺:「ああ、わかる。ここは多分異……」


 ――「ちょっとー!」


 俺の言葉は女の声に遮られた。


 成島と俺は声のした方を見る。ポニーテールにズボン姿の女がいた。


 女:「よかった、人がいた! ねえ、ここどこ? 何が起きたの?」


 大学生くらい? 多分俺のヒロインじゃないな。それともお姉さん系? でも俺は小さくて可愛い子が好みだ。


 俺:「ここは多分異世界です。さっきの異変でこの世界に転移されちまったみたいです」


 女大学生:「異世界???」


 成島:「え? なに……?」


 そうそう、そういう反応。この<自分だけが知ってる>感がたまんないんだよ!


 女大学生:「異世界ってアニメとかに出てくるアレ? ありえないでしょ」


 俺:「ここに来る前、空が真っ暗になって人が光になって消えていくのを見ましたか?」


 女大学生:「……見たけど」


 俺:「突然科学で説明できない異変が起きて、目が覚めたら訳のわからない場所にいて、スマホは圏外。それは間違いなく異世界転移です」


 女大学生:「……そ…そうなんだ……?」


 成島:「………………」


 二人とも浮かぬ顔をしている。


 女大学生:「じゃ、私たちどうすればいい?」


 俺:「まずこの森を出ましょう。そうすれば多分すぐ近くに街があるはずです」


 女大学生:「え? そう? なんでわかる?」


 俺:「そういうものですから」


 女大学生:「え?? そう……なの? わ…わかった。じゃあ早く行こう。あ、私は常石彩乃つねいし あやの。大学二年生だ。あんたたちは?」


 俺:「龍崎颯真。高校一年生」


 成島:「成島美空です。私も高校一年生です」


 女大学生:「お二人はカップル?」


 成島:「違います。さっき出会ったばかりです」


 ……成島は即否定か。初期好感度低いな。


 俺:「じゃあ行きましょう」


 女大学生:「どっちに進むかわかるの?」


 俺:「……わかりません」


 女大学生:「ええ?」


 俺:「勘でいいんですよ」


 女大学生:「はあ???」


 ……この女大学生、ちょっとうるさくないか。


 なんとか説得して、また歩き出した。


 長く歩いた。


 マジで長く歩いた。疲れた。30分は経ったか?


 何も起きないし、この巨樹の森の景色もぜんぜ変わらない。


 あとどれくらい歩けばいいんだ…………


 ん? 前の方に人がいる?


 あ、マジで人だ。でも男だ、3人とも。


 俺:「おーい!」


 一声かけると、3人はこっちを見て、そして歩み寄ってきた。


 近づいて見ると、3人のうち2人も高校生っぽい。1人はわりと背が高いデブ、もう1人は野球部だ。残る1人はスーツ姿で、20代のサラリーマンだろう。


 話してみると、事情は俺たちと同じで、転移されてきて、さっき知り合ったばかりらしい。


 デブは小谷亮太こたに りょうた。見るからに陰キャ。声に力がなくて、あんまり女の子の方を向けない。


 野球部は平山健一ひらやま けんいち。典型的な野球部のスキンヘッドに野球帽。新品のバットを背負ってる。


 サラリーマンは南宏人みなみ ひろと。なんか変わったもんはなさそうだ。


 脇役感がプンプンする三人組。やっぱこんなのがいないとな!


 「――でもどうして森のすぐ近くに街があるとわかったんだ?」


 サラリーマン……じゃなくて南が聞く。


 女大学生:「そうそう! 私もさっきそう聞いたの。変なの私だけかと思った」


 俺:「…………だってそういうもんですから」


 女大学生:「“そういうもん”ってどういう意味よ!」


 “そういうもん”は<そういう>もんって意味だろうが! 他にどう説明しろってんだ?


 平山:「……俺、普段あんまりファンタジーアニメ見ないけど……まさかアニメがそうだったから、そう思ってるだけなんじゃないだろうな?」


 俺:「ぐっ」


 違うって言うのか? たくさんの作品がそうなってるんだから、きっと理屈があるじゃないか。


 女大学生は平山の言葉を聞くと、露骨に嫌そうな顔をした。


 女大学生:「うそでしょ……信じられない。中二病が治ってないんじゃないの?」


 俺:「………………」


 信じる信じないはおまえらの自由だ! 後で恥じをかいても知らないかんな!


 あ、いけない。抑えなくちゃ。こいつらの無礼を許そう。


 俺:「ま…まあ、どうであれ、まずはこの森を出なきゃいけないのは同じじゃないですか。街があるかどうかはその時に確認するってことで」


 女大学生:「そうだけど……」


 この女マジうぜえー!


 南:「龍崎君の言う通りだ、先に進もう。俺たち三人はこっちから来た、君たちはあっちから来た。だから俺たちはまた別の方向に行くべきだ。そうすれば他の人に会える確率も上がる」


 女大学生:「さすか社会人。やっぱり私たちの中では南さんが一番頼りになる感じがする」


 南:「あんま期待しないでくれ、俺もかなり混乱してるんだ……」


 ちっ。


 何だよこの二人、デブみたいにしっかり脇役してればいいじゃないか。


 ちょっとムカつくけど、でも早くここを出ないと。


 街に着いたらこいつらをほっとく。


 6人ともどっちに行けばいいかわからないから、投票で方向を決めた。


 また30分以上歩いたが、誰にも会わないな。


 ……まただいぶ歩いた、ちょっと腹減ってる。


 ここマジで広いな、あとどれくらい歩かなくちゃいけないんだ?


 あ、もしかして<森の奥で魔物に遭遇するけど、実は聖獣で、いろいろあって俺の相棒になって、最後に森から連れ出してくれる>的な展開?





 読んでくれてありがとうございます。

 もしよかったら、文章のおかしなところを教えてください。すぐに直して、次に生かしたいと思います。(´・ω・`)

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