0064 - 第 1 巻 - 第 4 章 - 6
【萌花】
魔法薬では間に合わない。
ここには悠樹を救える魔法使いがいない。
じゃあ、他になにか血を速く補充できるものは?
輸血しかない。
でも、こんなに技術が遅れた世界で、それも人っ子一人いない森の中じゃ、輸血装置をどこで探せばいいの? 悠樹に輸血できる血液は?
あるわけないよ……
早く、他の方法を考えなきゃ……
いや待って。こんな時でも、悠樹ならきっと念には念を入れて、もう一度確認するはず。
「ねえ……輸血する方法、今ここで何かある?」
私の問いかけに、みんなは互いの顔を見合わせた。
「それはなんだ? 俺たちにできることはあるか?」
ダニエルさんがそう返してきた。
…………輸血の概念そのものがないんだ。……そりゃそうか。元々中世みたいな技術レベルだし、それに便利な魔法まであるんだもの。医療技術がこっちの方向に発展しなくても不思議じゃないよね。
そうだ、魔法。もし、ゲームの中にあるような、すごい魔法が存在するなら?
「……蘇生の魔法は?」
ダニエルさんはなにも言わない。ただ、苦い表情でゆっくりと首を横に振った。
……そうだよね。もしそんな魔法が本当に存在するなら、この世界だってもっと違っているはずだし……詩織ちゃんのおばあさんだって……
じゃあ輸血と魔法以外になにがある? 直接血を飲ませる?
ダメだ……飲んだ血は消化器官を通らないと吸収されない。時間がかかりすぎる。それに、酸素を運ぶ赤血球だって胃酸で分解されちゃう。
なら、他になにがある?
…………何ができる……?




