0057 - 第 1 巻 - 第 3 章 - 24
翌日、禁足の4日目。悠樹と萌花はスカーベンジャーギルドに向かい、ダニエルとランラを見つけた。
前もって話を通していたので、彼らは快く依頼を引き受けてくれた。
しかし残念ながら、彼ら以外に他のスカーベンジャーの応募はなかった。
ダニエルが紹介してくれた猛獣使いと、その人が馴らした黒豹が加わったことで、戦闘要員の戦闘力が満たされ、ついに出発条件はすべて整った。
一方、カーリンはライナ商会と良好な関係を持つ建築業者を呼び、詩織の記憶を元にアトリエと家の再建図面を作成させた。
カーリンは正式に詩織に賠償金を渡し、詩織はその賠償金でアトリエの再建費用を支払った。建築業者によれば、アトリエの再建はそれほど難しくないとのこと。
禁足の5日目。詩織とカーリンは行政センターで、アトリエの再建及び賃貸に関する手続きを済ませた。その後、皆それぞれの事前準備をする。
ライナ商会は約束を果たし、悠樹たち三人にヤク付きの牛車一台を贈っただけでなく、3名のスカーベンジャーの依頼料も負担し、さらに旅に必要な物資を多量に提供してくれた。
その日の夜、悠樹と萌花はベッドで楽しそうにこのことを話していた。
「ライナ会長、すごい気前いいよね。あんなにたくさんくれて。私、なにもしてなかったから、なんか気が引けるよ……」
「別にいいんじゃない。そういえばおれたち、<異世界でお金持ちを助けてたくさん報酬をもらった>とか、<地球でよくあるものを高値で売った>なんてネタ、まさか本当に体験したね」
「ふふふっ~そうだったね! 他になにかあるかな~うーん~旅の途中で女の子を助けたら好かれて、ハーレム展開になるとか?」
「なに言ってんの……」
禁足の6日目。皆で街に出かけ、装備や衣服を購入して、詩織の知り合いたちにも挨拶をしに行った。
数日前にあんなことがあった手前、詩織がこの町を離れ、アトリエがカーリンに管理されることになるのは、やはり思うところがある人もいるだろう。それゆえ、これは知り合いたちへ敬意を表す行為であると同時に、悪い噂を防ぐ手段でもあった。
禁足の7日目。皆は出発の準備をすべて終え、ライナ商会で休息を取っていた。
午後、アトリエの事件を担当している守護騎士隊長がライナ家に事件の進捗を報告し、禁足の解除を告げるために訪れて来た。カーリンは彼女を家に招き入れようとしたが、断られたので、皆はライナ家の門前で話をする。
隊長は犯人の動機を語った。
マーチ兄弟はスカーベンジャーで、メイジェ城出身だったが、仕事の関係でカールズ城に移り住んだ。彼らはスカーベンジャーの仕事に不満を抱き、一攫千金を狙っていた。しかし、知識も能力もないため、ただ日々を無駄に過ごしていた。
事件の前日、カーリンが彼らを見つけ、<迷惑客>として雇ったまで。
彼らはチャンスが来たと考え、悪事を働くことに決めて、カーリンの依頼内容を実行せず、詩織のアトリエに放火をした。
そして、噂を利用してカーリンを脅迫し、大金を要求した。
彼らは、相手がカーリンとポーラの人生経験の浅い女性2人だけだと考え、容易に成功すると信じていた。
しかし、ダニエルとランラの登場によって、彼らは計画が破綻したと思った。
彼らは、ダニエルとランラがカーリンの依頼内容を知っているものと勘違いし、捕まると思い込んで慌てて逃げた。
逃げる途中、彼らは真実を曲げる方法を思いついた。
彼らは、先手を打って群衆と詩織を味方につければ、虚言を皆に信じ込ませ、カーリンを逆に陥れることができると考えていた。
そもそも、放火を頑なに認めなければ、教会も彼らをどうこうできることはなかった。
実際、ダニエルとランラは依頼内容を知らなかった。そのため、マーチ兄弟が放火したという証拠や証言もなかった。
しかしそうとは知らず、彼らは詩織を味方につけようと自ら放火を認めてしまった。それが却って有罪の決定的な証拠となったのである。
最後、嘘も悠樹によってその場で打ち破られたため、極端な手段を取るしかなかった。
「――以上が犯人の動機と事の顛末だ。犯人のマーチ兄弟は罪を認め、この事件は収束した。それにより、この事件の関係者の皆さんの禁足が解かれた。自由に町を出て構わない」
「よし! さっそくダニエルさんたちに知らせに行こう、明日の朝の早い時間に出発するよ」
悠樹の言葉に萌花と詩織は頷いて返事した。
「おや? 君たちはカールズ城を離れるのか?」
「はい、メイジェ城に向かいます」
「そうか、では、旅が安全でありますように」
「ありがとうございます」
隊長の口調からは、三人の今後の計画に大して興味がないことが伝わってきた。
「これは教会から令狐さんへの慰謝金だ。受け取ってサインを」
「分かりました。ありがとうございます」
詩織は隊長が渡してくれた金袋を受け取り、書類にサインをした。これで、アトリエが放火された事件は完全に終了する。
悠樹は少し引っかかる点がある。
「……思ったより早かったですね、あの兄弟が罪を認めるなんて。最後まで粘ると思ってたのに」
「……ああ。まあ、そうだな」
隊長の微妙な反応を見て、悠樹は「まさかなんか暴力的な手段を使ったんじゃ……」と思った。
「では、私はこれで失礼する」
隊長はそう言って去っていった。
「それじゃあ、ギルドに行こっか」
「うん」「はい」
三人はギルドに向かい、同行する3名のスカーベンジャーに知らせた。
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