0048 - 第 1 巻 - 第 3 章 - 15
教会に到着したあと、皆はそれぞれの場所に分かれて調査を受けることになった。
教会には教会堂以外にも多くの区域があり、機能が豊富で、基本的に行政センターやスカーベンジャーギルドの管轄外の事務はすべて教会で行われている。例えば、犯罪者の逮捕や負傷者の救護など。
詩織、悠樹、萌花は一つの応接室へ、カーリンとポーラは別の応接室へ、マーチ兄弟は地下の尋問室へとそれぞれ案内され、ランラ、ダニエル、そして他数名の目撃証言者は教会堂に待機した。
皆の主張や証言は先ほどとおおむね同じだが、いくつかの細部が補足された。
マーチ兄弟が拘禁された以外、他の者たちは筆録が終わったあと、自由の身となった。
目撃証言を提供した者たちは教会を去り、他の者たちもやがて教会堂に集まった。
詩織、悠樹、萌花の三人は被害者として、財産損失の初歩的な見積もりなど、受ける質問が多く、他の者たちより遅れて出てきた。
三人が出てくると、カーリンが中年男性と話しているのを目にする。カーリンの紹介によると、その男性はカーリンの父親で、ライナ商会の会長だった。
会長の背は高くなく、ややふくよかな体格をしており、茶色のスーツを着ていて、善良そうな顔立ちをしていた。隣には女性の秘書が控えている。
カーリンがトラブルに巻き込まれたことを知ると、彼はすぐに教会に駆けつけ、先ほどカーリンが応接室から出てくるまでずっと待っていた。
三人がライナ会長に軽く挨拶を済ませると、カーリンとポーラは再び悠樹に一礼した。
「重ねてお礼申し上げますわ。猫森さん、本当に感謝いたします」
悠樹は「もう十分ですよ、大したことじゃないから……」と手を振りながら少し照れた様子で返す。
「それでは、失礼ながらお伺いしますが、私やライナ商会に何かご要望はございませんこと?」
「へ?」
カーリンの言葉に皆はきょとんとした。
「教会に来て、冷静になってから考えてみたのですが、貴方があの時私を助ける理由は全くなかったのではないでしょうか。隊長さんに教会に来いと言われた時、貴方はその場で何も言わず、教会に来てからお考えを教会に伝えることもできたはずですの。そうすれば、傷つけられるリスクを冒さずに彼らの嘘を暴くことができたのに。その時、貴方が前に出てくれたおかげで、私とライナ商会は大いに助かりましたが、貴方自身もそれにより危険にさらされることになりましたわ。ですから……失礼を承知でお聞きしますが、何か目的がおありではありませんこと? 私は……できるだけ貴方のご要望に沿うよう努めたいと思っていますわ」
カーリンの口調はとても落ち着いていて、無実が証明された喜びが感じられない。その言葉に悠樹はすごく意外だった。
「んー…………まあ……うん。そうだね。ちょっとはあるかな」
悠樹が頭を掻きながらそう返すと、カーリンは<やっぱり>といった表情を浮かべた。
「それは何でございますか」
「今ここで言うのはちょっと……また今度にしましょう」
「左様でございますか……分かりましたわ」
「悠樹、嘘ついてる」
萌花が突然横から割り込んだ。
「な…なに言って……」
悠樹が珍しく気後れした。萌花は少し不満そうに口を尖らせる。
「悠樹はマンガのヤサシイ主人公なんかじゃないんだから、こういう時は素直に言えばいいじゃない。ライナさん、聞いてぇ。実は悠樹は全然……えっと、完全にゼロってわけじゃないけど……でも、ほとんど本当にただの善意なんですよ」
「え?」
「私たちは確かにお願いしたいことはあるけど、それは商談です。それだけのためにあんなことする必要はなかった。悠樹はただ悪い人たちに好き勝手させたくなかっただけ。理不尽にいじめられている人が誰であろうと、そんなことを見たくなかっただけですよ」
皆の視線が悠樹に向けられた。
「おっ、いい男だな」と横にいたランラが微笑み、ライナ会長も眉を上げて顎に手を当てながら「ほほう。立派だのう」と称えた。
これには悠樹も複雑な気持ちだった。
「ん…ん……」
「そう……でしたのね……申し訳ございません! 勝手に決めつけてしまいまして……ご自身の危険も顧みずに……貴方様本当に素晴らしい方ですわ!」
「……そこまでのことじゃありません。守護騎士やスカーベンジャーさんたちがたくさんいたからこそできたことで、そうじゃなきゃおれは絶対にしなかったでしょう。まさか最後にあの二人が本当に襲ってくるなんて思わなかったけどね、はは」
悠樹はそう言いながら苦笑した。
ちょうどその時、この事件を担当する守護騎士の隊長も皆のところにやってきた。
「それは彼らが追い詰められていたからだ。君が言ったように、<放火罪>を犯した彼らはもともと店主に自分たちの言い分を信じさせ、教会の処分を軽くさせることを企んでいた。そうしなければ10年以上の監禁は確定的だった。しかしあの時、店主の発言は彼らの主張を否定するようなものだったので、彼らの目的は達成できなくなった。しかも、それによって<女性中傷罪>と<女性脅迫罪>も加わることになる。それらは重罪だ。もし大人しくお縄につけば、大方30年は牢屋で過ごすことになるだろう」
「そ…そうなんですか……」
悠樹と萌花は、以前詩織から聞いていたように、カールズ城では女性に対する犯罪の罰が非常に厳しいことを今、改めて実感した。
「だから彼らは一か八か賭けに出たのだ。だが、君を襲って人質にしようとした行為は、完全に<彼らがライナさんの主張はすべて真実だと認めた>と解釈できる。彼らの言葉に惑わされた者も、今では彼らを信じることはないだろう。これでさらに<傷害罪>と<公共の安全危害罪>が加わり、君たちが法を守り大人しくしていれば、もう彼らに会うことはないはずだ」
「胸がすく思いですわ!」
カーリンが得意げに笑った。
隊長はそんなカーリンを一瞥すると、詩織に向き直って話しかけた。
「賠償の件だが、残念ながら、マーチ兄弟は君に賠償できるものを何も持っていない。この場合、教会が一定の援助金を支給するが、君の損失と比べると、慰め程度にしかならないかもしれない」
「……はい。分かりました」
詩織は俯せた瞳でひどく落ち込んだ。
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