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0031 - 第 1 巻 - 第 2 章 - 25


 「それじゃあ、もう2点紹介します。この輪ゴムが入っている袋、これも珍しい素材でできてます。この素材で作った袋は防水防塵で、太陽の下で長時間放置したり火に近づけたりしない限り何年も使えて、他の物を入れるのにも使えます」


 「透明な素材で、防水に防塵……とても素敵な素材ですわね。うーん……銀貨2枚でいかがかしら」


 金貨や銀貨の具体的な価値が分からない悠樹はただ肯くだけだった。


 「もう1点はこれです」


 「布地ですの?」


 「違います」


 折りたたみ傘だ。ついさっき干したばかりだが、今は完全に乾き、まるでもとから濡れていなかったかのよう。


 悠樹が傘を持ち上げると、ベリッとマジックテープが剥がれた。


 この音だけでカーリンとメイドの注意が引かれた。詩織と同様、彼女たちもまたこのような音を聞いたことがない。


 続いて悠樹はシャッと傘の柄を引き出し、パッと一気に傘を開いた。


 「きゃっ!」


 「これは傘です」


 「かっ…傘ぁ?!」


 カーリンの認識では、傘は重くてかさばるもの。まさか自分の扇子のように折りたためるなんて信じられなかった。


 「しょ…少々拝借しても?!」


 彼女は落ち着かない様子で悠樹に傘を渡すよう促し、手にすると真剣に観察を始めた。


 独特な手触りの布地、細くて伸縮自在の骨組み、合理的な全体構造、どれも彼女を驚かせた。小声で「どうしたらこんなことができますの!?」と呟いて。


 悠樹と萌花はカーリンの様子を見て、<現代工業無双>という優越感に浸り、満足げな顔で無言のうちに、ぐっと親指を立て合った。


 自分たちの世界ではありふれた軽工業製品が、異世界では商会の商人さえ驚かす。これは異世界作品でよく見られるシーンであり、彼らが一度は経験してみたいと思っていた体験だった。


 「この傘、実際に雨を遮ることはできますの? それとも単なる工芸品ですの?」


 「もちろん遮れます。しかも普通の傘より性能がいいんですよ」


 「それほどすごいものですの……水で試してもよろしくて?」


 「どうぞ」


 「令狐さん、少々床を濡らしても?」


 「大丈夫です」


 「ありがとう存じますわ」


 カーリンは悠樹と詩織の了承を得ると、傘を床に置き、立ち上がって傘の上に左手の人差し指を伸ばす。


 「――『水生成』」


 悠樹と萌花は、彼女がコップの水を使って傘をテストするとばかり思っていたが、カーリンは魔法を使ったので彼らは驚いた。


 「おっ、ライナさんも魔法使いなんですね」


 「左様でございますわ。私はアクア様の恩寵を賜った水の魔法使いですわ」


 カーリンはそう言いながら左手を動かして、魔法で生成した水を均等に傘に落とし、その性能をテストした。


 水は傘に弾かれるか、傘の表面を伝って地面に流れて、休憩エリアの床を濡らした。悠樹と萌花はこれはさすがに失礼ではと思ったが、アトリエの主人である詩織は全く気にかけていない。


 なぜなら、<魔法で生成した水はすぐに消散する>というのがこの世界の常識だから。相手の了承を得ている限り、特に問題はない。


 もし相手が見知らぬ人であれば、礼儀を弁えた商会の令嬢であるカーリンはそうはしないだろう。


 だがカーリンと詩織は知り合いで、しかも二人とも水属性の魔法使いだから、この点についての認識は一般人より深い。したがって、彼女たちにとってこれは魔法使い同士の間では至って普通のことだったのだ。


 一通りのテストを終えると、カーリンは笑顔を見せて、折りたたみ傘を非常に気に入った様子。


 「精密な製造技術を有しているだけでなく、防水性能も普通の傘よりずっと優秀ですわ。研究価値と実用価値の両方を備えた、実に素晴らしい傘ですわ」


 「防水の他に、日除けもできますよ」


 「日除け?」


 「はい、夏に太陽の光が強い時に日差しを遮ることもできます。そうすれば暑さを和らげるだけじゃなく、日焼けも防げます。その性能も普通の傘よりいいはずです。ただ、ここで日除けに傘を差す習慣があるかどうかは分かりませんが」


 悠樹の説明を聞いたカーリンは、「まあ~」と瞳をきらきらと輝かせて、この傘をさらに気に入ったようだ。


 「本当に素晴らしいですわ! ぜひともこれを私に売ってくださいまし! 金貨8枚……いえ、金貨10枚を出しますわ」


 カーリンがまた金額を提示した。悠樹と萌花は依然として特に反応を示さなかったが、詩織はすごく驚いている。


 「気に入ってくれてなによりです。価格については、さっきも言った通り、現時点では返事できません。今見せれるのは以上です」


 「では、明日また参りますわ。もしよろしければ、他のお店でお値段をお聞きになる際には、どうかお急ぎでお売りにならないでくださいませ。お値段はまだご相談に応じられますわ」


 「そうします」


 「くすっ、明日の取引が楽しみでございますわ。それでは、私共はこれで失礼致しますわ」


 「あ、最後にもう1つ質問いいですか」


 「どうぞ」


 「<ミルクティー>というものを聞いたことがありますか?」


 その単語を聞いた萌花は、物品を確認する時に悠樹がはっきり説明しなかった謎が、ようやく解けた。


 「<みるくてぃー>? いいえ、存じ上げませんわ」


 「そうですか。じゃあ大丈夫です。こちらも明日の取引を楽しみにしています」


 「それでは、失礼致しますわ」


 そう言うと、カーリンとメイドは席を立って去っていった。




 読んでくれてありがとうございます。

 もしよかったら、文章のおかしなところを教えてください。すぐに直して、次に生かしたいと思います。(´・ω・`)

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