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0023 - 第 1 巻 - 第 2 章 - 17


 教会堂の4つの角にある柱の上方には、四大元素の創造神の石像が配置されている。左右の列の座席は、悠樹と萌花が知っている教会堂とほとんど変わらい。講壇の後ろのステンドグラスには、四大元素の創造神がゆったりと休息している姿が描かれていた。各都市の教会堂には、女神たちの石像のデザインと配置、そしてステンドグラスの内容がそれぞれ異なるという。


 教会堂には礼拝に訪れる市民の他、統一された鎧と装束を身に着けた人々が会話している。彼らは教会の『守護騎士』だ。彼らの役割は都市の治安を守ることで、毎日城内を巡回し、犯罪者を捕らえ、犯罪を取り締まることだ。大体日本の警察に相当する役目。


 都市内での犯罪、特に女性に対する犯罪の結果は非常に重い。法律と騎士たちのおかげで、人々はこの技術が比較的遅れている世界でも安心して暮らすことができる。


 この世界の教会堂には神父はおらず、教会から派遣され、あるいは都市に認められた管理人がいる。教会堂の管理人の人数は都市の規模によって異なり、都市や教会堂の規模が大きくなるほど管理人も多くなるのだ。


 魔法使いは魔法回路の鑑定から魔法の学習、魔法薬の制作まで、教会の助けを必要とする。そのため、基本的に全ての魔法使いは教会堂の管理人と接触し、教会に記録を残す。


 三人は教会堂で一人の管理人を見つけた。彼女は50代の、とても温和そうな女性だった。


 彼女は詩織の家と旧知の仲で、詩織の祖母が亡くなった際に教会を代表して詩織を多く助けた。詩織に悠樹と萌花という“遠縁の親戚”がいることを知り、とても喜び二人を暖かく迎えた。


 二人はその好意に少し罪悪感を覚えた。


 悠樹は魔法について色々なことを管理人に聞いた。これをする理由の一つは、詩織が述べた魔法に関する事柄を確認するためである。


 彼はまだ詩織を疑っているわけではないが、同じ事柄でも人によって細部を忘れたり、主観の考えの違いから食い違ったりするため、より確実にするための措置だった。


 そして彼が得た答えは、基本的に詩織が昨日言ったことと一致している。これによって、詩織への信頼が深まった。


 それからもう一つの理由は、知りたいことの核心的な質問を隠し、巧妙に導入するためだった。質問の数が多ければ多いほど、相手に本当の目的を見抜かれにくくなる。


 その後、詩織は管理人と世間話を交わしながら、<20年前に自分の家に来て祖母と友達になった女性>について尋ねる機会を得た。


 詩織の質問に対して、管理人は眉をひそめ、懸命に思い出しながら曖昧な断片的な情報を口にした。


 その情報から、管理人はその人本人に会ったことがなく、その人がどのような魔法回路を持っているのかも知らず、白い長髪で6歳~7歳くらいの娘がいたことだけは覚えているらしい。


 これ以上の情報は得られないと判断した三人は、管理人に感謝して教会堂を後にした。


 その後、三人は昨日のレストランに来て、テーブルに並んだ料理を前に昼食を取りながら午前中に集めた情報を整理した。


 「他の召喚された人の痕跡が全然見当たらないね……」


 萌花は少し落ち込んでいたが、悠樹は自信の笑みを浮かべた。


 「でも、おれたちはかなりの情報を集めた」


 「そうなの?」


 「そうだよ」


 萌花は少し驚き、首をかしげた。詩織も興味津々で説明を待っている。


 「まずは図書館について。スタッフさんから聞いた重要なことがあった。それは<フェンスビ央国の図書館は一般の都市の図書館よりも大きく、資料の数も種類も豊富だ>ということだ。つまり、本や資料から手がかりを探すなら、一番いい場所はフェンスビ央国だ」


 「はい、そのとおりです。フェンスビ央国は人も物も他の都市よりずっと多くて、繁栄した国です」


 詩織が悠樹の言うことを肯定すると、萌花はその国の様子を想像した。


 「繁栄した国……そうだね、繁栄してるからリソースが多い、リソースが多いから繁栄する。資料以外にもいろいろありそう」


 「そう。だからここで手がかりが見つからなかったら、フェンスビ央国に行けばいいんだよ」


 それを聞くと、萌花はにっこり笑って、さっきまでの消極的な気持ちがすっかり消えた。


 「そうだね、また方向が見つけたね! 他には他には?」


 「うん。次に、教会堂の管理人さんが教えてくれた情報だ。少ないけど、一番直接的な情報だった。『例の魔法使い』は20年前、令狐さんの家に滞在してた時、6歳か7歳の娘を連れてた。だから、娘は今26、7歳だろう」


 「祖母のあの友達が子供を連れていたなんて、私も初めて聞きました」


 「そういえば、令狐さん。この町とか付近の地域では、結婚する年齢は普通どれくらいですか?」


 「成人してすぐに結婚する人もいますけど、一般的には18歳から22歳くらいと思います」


 「そうですか。じゃあ20歳と仮定して計算すると、『例の魔法使い』は21、2歳くらいで娘を産んで、令狐さんの家に来た時には27、8歳で、20年後の今は47、8歳ってことだね」


 「『例の魔法使い』は今40代後半で、新元素の魔法使いで、賢者レベルの実力を持ってて、20代後半の白い髪の娘がいる。うん! 探す範囲をかなり絞り込めたね!」


 「うん。それに、管理人さんの反応からして、少なくともこの町の管理人たちはそういう人物を知らないと思う。この方面で最も権威のある場所でも知らないということは、少なくとも彼女たちはこの町にはいないし、ここでなにかしらの実力を披露したこともないだろう。もしかしたら、教会全体でも彼女たちの存在を知らない、または上層部は知ってるけど末端の管理人には伝えていないのかもしれない」


 悠樹がそう分析して、萌花は「なるほど」と何度も頷き、詩織は少し驚いた様子で「すごいです……」と小声で感嘆した。


 「以上のことから、おれたちは早くフェンスビ央国へ行く計画を練るべきだと思う」


 「うん!」


 もちろん、悠樹が言う“おれたち”とは、彼と萌花の二人のことだ。


 「もう一つ、スカーベンジャーギルドで知ったことがある。それは、おれたちは人探しの依頼を出せることだ」


 それを聞いた萌花は「はっ!」と声を上た。


 「そうだった! 他の人に『例の魔法使い』や他の召喚された人の手がかりを提供してもらえる!」


 「それだ」


 「あ、でも、そんなことをするにはお金がかかるんじゃない? 今は無一文だよ? ご飯でさえも詩織ちゃんにお世話になってるし……」


 「そこで最後のこれだ。お金は本当になんとかなるかもしれない――」


 悠樹はこの話は公共の場ではしづらいと言うので、三人は急いで昼食を終えて詩織の家に戻った。




 読んでくれてありがとうございます。

 もしよかったら、文章のおかしなところを教えてください。すぐに直して、次に生かしたいと思います。(´・ω・`)

 もしよければご評価を!

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