0118 - 第 2 巻 - 第 4 章 - 6(第2巻 完)
やがて、彼らは1階の中心区域にあるコンソール前に戻り、横を向いてあの黒褐色の床区域を見つめる。
千里:「ここは何を研究してた研究所なんだろうな。技術レベルは俺たちの世界にまったく引けを取らない感じがする。前に出会ったものとは同じ世界のものとは思えないよ。それに水も電気もあるってことは、どこかにはここに水と電力を供給している場所がきっとあるはずだ。後で探してみよう。だがその前に……」
進:「うん、ガラスの壁越しに下を見たら、この区域はまるで……」
紗奈:「早く言ってよ! いったい何なの?」
千里&進:「『転送の間』」
紗奈:「え? 転送……え? いまさらそんな展開になる?」
千里:「床に他とは明らかに違う区域がある。それに傍にはコンソールもある。それっぽくないか?」
進:「2階と3階のガラスの壁は、何かがここから溢れ出るのを防ぐためか、あるいは2階3階から何かが伸びてくるのを防ぐためかもしれない」
千里:「もしアレがあったら絶対そうだ」
進:「ああ。アレがあればファンタジー、なければSFだ。俺はファンタジーがいい」
紗奈:「ねえ……本当にその方向で話を進めるの?」
進:「フフ、春日原氏、オタクとしての覚悟がまだ足りませぬぞ?」
紗奈:「キャラ変わってるよっ!?」
千里:「じゃあ、試してみよう!」
進:「おう!」
紗奈:「え、操作できるの?」
進&千里:「できない!」
千里:「が、運試しでいろいろ触ってみる。どうせ何年も放棄されてるんだ、壊れても俺たちのせいにはできないよな? やらなきゃ損だ!」
進:「そうだ! 本当にできたりして」
紗奈:「なんでそんなに息ぴったりなの! 頼もしい二人はどこへ行った? ねえ! いつの間にか私がツッコミ役になっちゃってるの?!」
紗奈のツッコミを無視し、二人はコンソールを弄り始めた。
千里は直感で上の操作パネルを弄り、小さなディスプレイに反応が現れ、数字のようなものや波形が表示された。
千里&進:「おおー!」
しかし、それだけだった。
続いて進はしゃがみ込み、一体化した下部のケースを開け、内部の部品を確認してみたが、ほとんど理解できなかった。
だが、一つだけ彼にも、千里と紗奈にも分かるものがある。
進:「こっち来て見て!」
それは微かな虹色の光を放っていた。
紗奈:「……水晶?」
ケース内部の基盤の中、いくつかあるうちの一つのスロットの中に、長さ約20センチ、直径5センチの円柱形の水晶がはめ込まれている。元はプラスチックの蓋で覆われていたが、進はそこから光が漏れているのを見つけ蓋を外した。
千里:「電力供給が破壊されてるのにこのコンソールが動くのは、まさかこれがエネルギー源なのか?」
進:「あああ、スマホの充電が残ってたらよかったのに。写真に撮れなくて本当に残念だ!」
紗奈:「そうですね」
千里:「ワイヤレス充電できる場所もなさそうだ」
進:「くっ……あの時、出かける前にスマホを満充電にして、この世界に飛ばされたら電源を切っておけばよかった」
紗奈:「そんなのわかるわけないでしょ」
他の部品は理解できず、勝手に触るのも怖かった進は立ち上がり、千里と共にパネルの研究を再開した。
さらに数分いじくり回し、二人もどうやったか分からないうちに、あのとても大きいディスプレイが不意に淡く光る。突然映像が現れた。
映像の中の文字は依然として理解できないが、文字が上から下へ現れる方式とリズムは、何かを起動しているように見えた。
三人:「おおおおお──!」
しばらくすると、映像の中で数十行にわたって流れていた白色の文字が、数行の中央揃え太字の赤い文字に変わった。その下には2つの、選択肢のように見えるボタンがある。
進:「これは……どうする? 『確定』と『キャンセル』か? どっちがどっちだ?」
千里:「うーん……俺たちの習慣だと、カーソルがデフォルトで当たってる方がいいことだよな? でもこの赤い文字は警告みたいだし……分かんないなぁ」
紗奈:「急に慎重になるんだね」
進:「紗奈はどっちだと思う?」
紗奈:「私もこういうのわからないよ……多分右? ソシャゲだと『確定』ボタンって大体右にあるし……」
千里:「なるほど。じゃあ右を選んでみよう」
紗奈:「えっ? 私適当に言っただけだけど、もし何か悪いことが……」
紗奈が言い終わる前に、千里はデフォルト選択されている右側のボタンを押した。
そして次の瞬間、画面は真っ赤に変わり、中心にはカウントダウンする数字のようなものが現れ、ディスプレイの下部に隠れたスピーカーから大きな警告音と機械的なアナウンスが流れた。
『全員注意。全員注意。緊急転移プログラムが起動しました。関係者は直ちに転送エリアへ移動してください。緊急転移プログラムが起動しました。関係者は直ちに転送エリアへ移動してください』
千里:「うわっ、マジかっ!!」
進:「本当に本物だったのか!?」
紗奈:「えええええ??? なになに? どういうことなのよ!?」
紗奈は慌てて千里と進の服の裾を掴んだ。千里と進はディスプレイとあの区域の状況を繰り返し交互に観察する。
元々ただ黒褐色だった床が突如として柔らかい輝きに包まれ、白く光る大きな円が現れた。大円の中には同じく白く光る直線と曲線が次々と浮かび上がり、何らかの図柄を描いているかのように。その上の空中にも光の玉が現れ始めた。
『エネルギー低下、<裂け目>を長時間維持不能。エネルギー低下、<裂け目>を長時間維持不能』
千里:「『裂け目』?」
『デフォルト座標応答なし。目標世界のランダムな地点へ緊急転移します。デフォルト座標応答なし。目標世界のランダムな地点へ緊急転移します』
紗奈:「らっ…ランダムぅ!?」
進:「異世界転移!!」
『エネルギー低下。<裂け目>は18.23秒後に生成。維持時間6.11秒。エネルギー低下。<裂け目>は11.75秒後に生成。維持時間6.11秒』
千里:「まずい! 急げ!」
警告音と機械的なアナウンスが繰り返される中、三人は慌てて光る大円の中心へ走り寄る。大円の図柄はすぐに完成した。
進:「魔法陣っ!!」
千里:「ファンタジーの方だったな!」
紗奈:「ひぃぃぃぃ──!」
三人は大円の中心にたどり着くと、すぐに空中の光の玉は縦長の不規則なモノに変わった。モノの縁はギザギザで、虹色の光が滲み出し、周囲の空間を歪ませている。
最後、モノはまるで何かが引き裂かれた『裂け目』のようなものになった。
『裂け目』を通して、ぼんやりとどこかの景色が見える。
この光景を彼らは49日前に見た。しかし今、彼らにはそんなことを気にしている余裕はない。
千里が「腕を組むんだ!」と叫ぶと、進と紗奈はすぐにそれに従い、三角形を作った。
なぜなら、集団の人々から集めた情報によれば、『あの異変』が発生した時、密接に身体接触をしていた人々は同じ地点に現れたらしいが、他のすぐ近くにいた人々は姿を消していたからだ。
彼らは互いの腕を強く組み合い、手には枝で作った武器を握りしめ、身を少し前に屈してその瞬間を迎える。
閃光。
彼らは再び光と化し、消えた。
『エネルギー枯渇。エネルぎぃ…………………………』
コンソールのケースの中の虹色の微光が消えるとともに、コンソールの他の明かりも大魔法陣も消え去った。
この建築物は静寂に戻った。
とある場所。
千里と進はほとんど同時に目を開け、すぐに横たわった状態から身を起こし、周囲の状況を観察した。紗奈も物音で目を覚ます。
三人は続々と立ち上がった。
進:「全員いる、よかった」
紗奈:「……森? でも木が低くて小さいね」
千里:「これの方が普通の木だ」
紗奈:「そうだったね、あはは。樹海で50日近くもいて、なんだか感覚が麻痺してるみたいだよ。あとここどこ?」
千里:「植生があの樹海とまったく違う。まだ昼間だけど、空の色もさっきより少し遅い時間のようだ……二人とも、さっきより腹が減ってるとか疲れてるとかの感覚はないか?」
進:「うーん……特にない」
紗奈:「私も」
千里:「俺もない。それに頭もまだはっきりしてる。多分、ほんの短時間意識を失っただけだろう」
進:「つまり、ここはさっきオレたちがいた場所と時差があるってこと?」
千里:「ああ。あの日と同じだ」
進:「じゃあ、オレたちは本当にまた転移させられたんだね」
千里と進は顔を見合わせて笑った。その笑顔には期待がにじんでいる。
紗奈:「結論が早すぎっ! でも…………まあ、確かにそういうことだろうね」
進:「お? 春日原氏もついに偏見を捨てたの御座るか」
紗奈:「だからそのキャラは何なの……」
千里:「よし、行こう。今回は何が出てくるか見てみようじゃないか。まずは水源探しだ」
進:「おう!」
紗奈:「また出口の見つからない樹海じゃありませんように…………」
進:「今回はきっと違うよ。だって、同じ転移でも今回は明らかに魔法陣で転移されたんだから」
紗奈:「それって根拠になるの……」
こうして三人は会話を交わしつつ、この新たな場所での移動を始めた。
異世界転移者たち 第2巻 完
つづく
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
各巻を書き終えてから翻訳・推敲し、更新するというスタイルです。
なので続きは来年になります!
もしよかったら、文章のおかしなところを教えてください。すぐに直して、次に生かしたいと思います。(´・ω・`)
もしよければご評価を!




