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0115 - 第 2 巻 - 第 4 章 - 3


 夜、千里は皆に情報のまとめと提案を行った。


 千里:「数日この近辺を探索したが、残念ながら他には何も見つからなかった。みんながこの拠点を離れる時、俺たちと同じように池から流れ出る渓流に沿って移動した方がいい。それから、もしそれほど急いでいないなら、この拠点でもう少し物資を貯めて、A芋が消費され切る頃に物資を持って出発することをお勧めする。そうすれば、以後の生活がいくらか楽になる」


 慧子:「うん、道理にかなってる。A芋は本当に命を救ってくれるんだから、無駄にできない」


 斗哉:「ああ、狩りの時間と体力をかなり節約できるし、雨の日も飢えずに済むからな。それで行こう。みんな、異議はないな?」


 男性の声:「まあそんなところだろ」


 女性の声:「どこ行っても同じなら、そうするしかないよね」


 ……


 集団の人々はおおむねこの提案、すなわちこの拠点にしばらく留まることに賛同した。


 紗奈:「…………あの……千里、進。私も一緒に行ってもいい?」


 千里&進:「え?」


 人々の議論の中、紗奈のその言葉に千里たちは少し驚いた。


 千里:「紗奈も急いでるのか?」


 紗奈:「うーんん…………どうしても今すぐとは言えないけど、私もここに留まりたくはないんだ。ダメかな? ついていけると思うけど」


 進:「うん……紗奈の体力和戦闘力なら……」


 千里:「条件的には可能だ。だが正直に言うと、普通の森と比べて、この樹海は楽園と言っていい。十分な中型・小型の動物と魚が狩れて、この腹持ちのいい芋類が大量にある。さらには陸棲の大型肉食動物の脅威すらない。十分な道具がない以外は、キャンプとそれほど変わらない。だからここに留まる方がより安全だ。俺たちについて来ると何に遭遇するか分からない。それでも一緒に行きたいか?」


 紗奈:「うん!」


 紗奈は躊躇いなく、活気に満ちてうなずく。これには千里と進も再び驚き、互いを見合わせた。


 千里:「うーん………………」


 進:「オレは問題ないよ。千里は何を心配してる?」


 千里:「自分で言うのもなんだが……紗奈は女の子だよ? こんなところで男2人に付いて行くのは本当にいいのか?」


 以前あのような事件が起きたため、人々はこの方面に敏感だった。


 紗奈:「え? えっと……あはは……うん、二人を信じてる」


 進:「うん……」


 千里:「……信じてくれるのはありがたいが、どうしてそうしたいんだ? 進もそうだ、<その方が面白いかもしれない>ってだけじゃないだろう? 二人ともちゃんと理由を教えてくれ」


 そう言われ、二人は視線を落として数秒黙った。そして進が開口する。


 進:「…………千里と比べるたら、オレの理由は幼稚すぎるから言わなかったんだ。千里と行く方が面白そうなのはもちろん本当だけど、もう一つ俺にとってとても重要な点は…………早く現代の環境に戻りたいってことだ。蛇口をひねればきれいな水が出て、スイッチを入れれば電気がつき、店に行けば欲しいものが買える。電気と電化製品があればいろんなことができる。ゲームをしたり、アニメを見たり、エアコンを堪能したり、絵を描いたり……なんて快適だ。もしこれがファンタジー異世界の冒険なら問題はない、好きだから。でも今……ただこんな樹海で生きるのために狩りをする毎日……本当につまらないんだ」


 進の言葉は多くの人の本音を代弁していた。


 そう思わない者がいるだろうか。


 紗奈:「私…私も! 実は私、夢があるんだ……それは声優になること。小さい頃からずっとアニメやドラマの声に憧れてて、中学に入ってから練習を始めて、今は養成所に通って……実力はまだまだけど、頑張ってるの。だけどこの夢は『ここ』ではどうしても叶えられない。だから私も現代の環境に戻りたい。それに千里の話を聞いて、私もおじいちゃんのそばに帰りたい。私、おじいちゃんっ子なんだ。居合斬りを教えてくれたのもおじいちゃんだよ。夢をおじいちゃんに話したら、すごく応援してくれて……だから、おじいちゃんはまだまだ元気いっぱいだけど、心配をかけたくないから、早くそばに戻りたいの」


 千里:「なるほど! なるほど! 分かった! 一緒に行こう!」


 紗奈:「えっ? う…うん!」


 千里が突然興奮しぱあーっと笑顔になって、紗奈を驚かせた。


 千里:「倹より奢に入るは易く、奢より倹に入るは難しだ。進、それは幼稚なんかじゃない、人間の最も素朴な欲求だ。大多数の人が早く現代の環境に戻りたいって思ってるだろう。俺も含めてな。やりたいことを口に出して、そして行動に移す。俺は好きだ。俺自身もそうしてる。だからそれに自信を持っていい。二人の仲間ができて、嬉しいよ」


 進:「よかった!」


 千里、進、紗奈の三人は明るい笑顔を見せた。


 突然、傍らにいた颯真が会話に割り込んできた。


 颯真:「な…なら俺も行く! 俺も早くこのなんもない世界から出たい!」


 千里:「龍崎か、うーん…………」


 颯真は千里が何か言いづらそうな表情を浮かべているのを見て、思わずがっかりした。


 颯真:「……な…なんだよ?」


 千里:「悪いが、君の体力じゃ多分俺たちにはついていけないだろう。俺は一人一人観察してきた。君は大牙深のヤツらとの対決での働きは良かったが、狩りの時の持久力と速度はあまり良くはない。もし君が一緒に来ると、俺たちは頻繁に休憩を入れ、歩調を緩めなきゃならなくなる。だから……」


 颯真:「お…女が一緒に行くっていうならいいのに、俺はダメかよ!」


 千里に断られた颯真は少し逆上する。それを聞き、他の者たちも彼に対する態度を冷たくした。


 彩乃:「中二病も大概にして。遊びじゃないんだから」


 斗哉:「行くなって誰も言ってねえだろ。行きたいなら一人で行けばいいじゃねえか、なんでこいつらにまとわりつくんだ?」


 颯真:「ぐっ……!」


 颯真はとても恥ずかしさを感じ、拳を握りしめ視線をそらす。足元の小石を無性に蹴飛ばしたくなった。


 千里:「……紗奈は体力も戦闘力も優れてる。武術で鍛えてるからだ。俺と進も同じ。だが君にはその基礎がない。もし2ヶ月ほど鍛えれば、君も付いて来れると思うが、残念ながら今そんな時間はないんだ」


 颯真:「…………………………」


 颯真は興醒めだと思い、振り返り小声で「クソ」と呟くと立ち去った。


 その後、紗奈もあたふたと準備を始めた。


 斗哉:「これで戦闘力がだいぶ減るな。まあ、あいつらは全部やっつけたんだし、それになん日も経って他の人間は誰一人見てねえから、どうでもいいか」


 千里:「それでも注意した方がいい。後でまた役割分担を決めるんだぞ」


 斗哉:「言われるまでもねえよ」


 翌日、すなわち人々がこの世界に飛ばされた20日目、千里、進、紗奈の三人は夜明けとともに発とうとした。


 皆が三人を見送る。


 慧子:「去られると寂しいけど、うまくいくことを祈ってるわ」


 駿:「千里の兄貴、さようなら!」


 彩乃:「頼りになる3人が去るのは名残惜しい! でも仕方ないことね……ありがとう! さようなら!」


 健一:「これから俺も頑張らないと!」


 宏人:「千里、君からはいろいろ学ばせてもらった、ありがとう。道中気をつけてな」


 斗哉:「………………おまえらが簡単に死ぬとは思わねえが、ちゃんと気をつけろよ。もしダメなら戻って来い」


 千里:「ああ」


 紗奈:「今まで本当にお世話になりました!」


 進:「……みんな、さようなら。またいつか会えることを願って。斗哉と楓先輩も……元気で」


 楓:「…………うん」


 千里:「じゃあ、これで」


 そう言って、千里、進、紗奈の三人は渓流の方向へと歩き出した。


 30代の魚捕り男:「いろいろありがとうなー!」


 今吹:「さようならー!」


 斗哉と楓は彼らの後ろ姿を見つめる。


 楓が一歩前に出て斗哉と並ぶと、視線を変えないまま言う。


 楓:「……泣いてる?」


 斗哉:「…………泣いてねえよ」


 三人は集団を離れた。




【颯真】


 ……あいつら、もう行っちまったんだろ。


 見送りに行くもんか、別に親しくもなんでもねえし。なんかいいものないか探しに出た方がマシだ。


 「…………………………ちっ。くそっ」


 あんなこと言ってるけど、どうせあの女が可愛いからだろ?


 残念だ、あの女があういうのだと分かってたら攻略してたのに。


 あの天宮城って奴、まあまあイケメンだけど、俺とそう変わんねえだろ。アイツに会ってから、あの常石っていう女子大生はともかく、成島や他の女たちもたまにアイツをチラ見してた。なんで俺を見ないんだ?


 あとあのリーダー気取った奴、顔は普通だし、いつもわけのわからねえ正論ばっかり言う。聞こえはいいが、実際じゃあつまんねえ奴なだけだろ?


 くそ。あの二人のどこがいいんだよ? 俺よりちょっと筋肉があって、ちょっと強いだけじゃねえか? もし俺にチート能力があったら………………あっ!


 「そうだよ! 俺の問題じゃねえじゃんか! クソな神が俺をこのクソ世界に転移させたせいだ! ここにはなんにもねえ! 魔法もシステムもなにもかも! もっとマトモな異世界にして、チート能力くれたら、あいつらなんか屁でもねえよ!! おい! クソ神! 見てるんだろ! やり直しを要求する!! 早く俺をこの世界から転移させろおおお──!!」





 読んでくれてありがとうございます。

 もしよかったら、文章のおかしなところを教えてください。すぐに直して、次に生かしたいと思います。(´・ω・`)

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