0114 - 第 2 巻 - 第 4 章 - 2
またしばらくの沈黙の後、斗哉が頭をかきながらため息をつくような顔をする。
斗哉:「………………んなの言えるわけねえだろ」
慧子:「そうよ。あんたはみんなをたくさん助けてくれたんだから、誰が自己中だなんて言ったら、それこそ罰当たりだ」
駿:「まったくだぜ!」
楓:「ええ。知識、労働力、行動力、戦闘力、リーダーシップ、どれを取っても優秀だわ。千里がいなかったら、集団の今があるか怪しいもの」
紗奈:「そうそう!」
宏人:「はは、確かにな。それにこの集団はただのみんなが自主的に集まっただけだ。誰かが離れるのを止める権利なんてない。だから千里、誰に気を遣うこともないよ」
千里はほっとしたような笑みを浮かべ、皆に感謝を伝えた。
斗哉:「いつ出発するつもりだ?」
千里:「明日は物資の準備といくつかの説明があるから、明後日の朝だな。雨が降らなきゃ」
斗哉:「わかった。じゃあ千里がいなくなった後は、オレが正式にこの集団の頭になる。みんないいよな?」
慧子:「ふん、事件での働きはまあまああったし、責任も取るって言うなら、それでいいか」
彩乃:「ええ~~まあ、しばらくなら?」
斗哉:「……なんだよその言い草は……」
千里:「ははは!」
他の者たちもこぞって受け入れと同意を示し、温かい雰囲気が漂った。
進:「……千里、オレも一緒に行ってもいいか?」
千里が去ると言ってから、進の表情はやや真剣だった。
斗哉:「は? 進、おまえ……」
千里:「うーん……進には体力も戦闘力もあるし、もし望むなら歓迎するよ。でも本当にいいのか? そうすると斗哉たちとは離れ離れになるぞ」
進:「それは…………」
駿:「じゃあ俺も……あ、いや…………うーん………………俺も千里について行きたい、だけどみんなのことも助けたいし……どうすっかな」
千里:「二人とも迷ってるね。じゃあこうしよう。よく考えてみてくれ。お前たちにとって、俺と一緒に行くことと集団に残ることの意義を、そしてどっちの意義がより重要かを。明日の夜までに教えてくれればいい」
進:「うん…………」
駿:「わかった」
紗奈:「………………」
颯真:「…………………………………………」
翌日、千里は出発の準備を進めている。斗哉と楓は進を誰もいない場所へと呼び出した。
斗哉:「進、おまえも行くのか?」
進:「……ああ」
斗哉:「なんでだ? おまえには特に急ぐ理由なんてないだろ?」
進:「……かもな。でも、ここに残り続ける理由もない」
斗哉:「………………」
進:「あえて言うなら、二人のことだけだ。もし一緒に来てくれるならそれが一番いい」
楓:「…………」
斗哉:「行けねえよ。千里の奴の言う強行軍に、楓がついていけねえのは言うまでもねえ。それにおとといあんなこと言ったばっかなのに、オレも行ったら格好悪すぎだろ」
進:「そうだな」
楓:「……進と千里が去るのは、少し名残惜しいけど、それはあなたたち自身のための選択だから、仕方ないわ。でも、あなたまだ理由を言ってないわよ。友達と別れるんだから、理由を話すくらいはしてもいいと思うけど?」
進:「うん……オレは……」
斗哉:「ハッ! まさかおまえ……っ! ソッチだったのか……? だからいつも女に興味が……」
進:「断ッ! じてッ! 違う! オレはノーマルだぁ!」
進は元々二人に対して申し訳ないという気持ちで表情がやや曇っていたが、一瞬で斗哉のせいで呆れ顔に変わり、眉が逆さの八の字になった。
斗哉:「じゃなんでだよ」
進:「……そっちの方が面白いからかな。どうせ狩り生活を送るなら、目標に向かって一直線に進んで、この世界が一体どういうものか見てみたい」
斗哉:「んん……確かにそうか」
楓:「…………男の子って、本当にそういうの好きなのね」
斗哉:「ん? 安心しろよ楓、オレはお前を置いていったりしないぜ」
楓:「………………ふん」
進:「はは」
斗哉:「………………なあ。おまえらが行ったら、また会えるのか」
楓:「………………」
進:「…………分からない。ここがどんな世界で、何があって、離れた後戻れるのかどうか、全部わからない」
斗哉:「……」
進:「でもそうだとしても、オレは行くよ」
斗哉:「…………そうか」
斗哉は振り返り、進に顔を見せないようにした。
しばらくして彼は頭をかき、長い息を吐いた。再び振り返った時には、進にとっておなじみの顔に戻っている。
斗哉:「じゃあもう言うことねえな。行ってこい。道中で変なことになるんじゃねえぞ」
進:「…………ああ」
二人はパシッとハイタッチをする。これは彼らが以前一緒にゲームをする時、協力プレーで勝利した際のガッツポーズだった。
今はそんな時ではなかったが、なぜか二人は期せずしてそれをした。
その後、三人は拠点に戻り、進は千里と一緒に行くことを決めたと皆に伝えた。
午後、千里はいくらかの肉とA芋を準備し、芋の葉で包んだ。
千里:「うーん……あんまり持てそうにないな」
リュックサックのような物を入れる物品がなく、彼が持てるのはせいぜい服で包めるものだけになる。
その時、一人の男性が彼の前に現れた。
三浦:「……これ、あげるよ」
千里:「リュック? いいのか?」
三浦:「ああ。俺はしばらく使わないし、あんたたち道中で物を入れるのがないと不便だろ? 餞別だ。あまり使ってないから、きれいだよ」
千里:「おう、ありがとう! 助かるよ!」
三浦はうなずき、どこかへいった。すると駿が近づいて来る。
駿:「よかったな、リュックもらえて」
千里:「ああ、品質もいいし、これで本当にずっと便利になったよ」
駿:「……考えたんだけど、俺、ここに残るよ。ついていけばも早く出口が見つかるかもしれないけど、意義で言うなら、ここに残ってみんなを助けることの方がオレには大事だ」
千里:「そうか」
駿:「俺、高校中退してから数年、社会でなんとなくダラダラと過ごしてたんだ。日雇いの仕事で日々をやり過ごして、疲れるし面白くもない毎日だった。だがここに来てから、必要とされてるって感じたし、俺の行動が着実にみんなの役に立ってるのが、すごいうれしいんだ」
千里:「なるほど」
駿:「だから俺は集団に残るよ。今後どうなるかは今後でいいや」
千里:「うん、正しい事だと思うよ」
駿:「おお」
千里と進は準備を続けた。
皆の同意を得て、慧子は集団で元々使用していたライターを千里と進に渡した。大牙深の所持品から没収したものにより燃料の多いライターがあったため、千里は感謝の念を持ってそれを受け取った。
他の者たちも紙やペン、ハサミ、タオルなどを送った。最後に千里は凶器ではないものの折り畳みナイフを1本選び、彼らの出発準備は完了した。
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