0113 - 第 2 巻 - 第 4 章 - 1
翌日、斗哉たち4人は遺体の搬出作業を始める。彼らは手が直接遺体に触れるのを防ぐため、大量の葉っぱと芋の葉を持参した。
死後硬直が最も強い時間帯のため、手足を持って運ぶなどの方法は取れず、遺体の肩、腰、縛られた両足などを持ち上げてゆっくりと移動するしかなく、効率は比較的低かった。
千里はこの作業に参加せず、代わりに他の数人と共に芋畑でA芋を掘ることを選んだ。
帰路、進が千里に質問した。
進:「千里は、斗哉のしたことを正しいと思ってる?」
千里:「……分からない」
進:「…………」
しばらく沈黙した後、千里は話し続けた。
千里:「……一般人に刑罰を執行する権利を与えるのは、酔っ払いにナイフを渡すようなものだと思う。危険なことだ。だが、ここは日本じゃない。地球ですらない。一部の学者の見解によれば、<現存する法に依存できない場合、生存の合意の上に立ち、多数が認める規則が即ち法律となる>。集団の利益を守るために加害者に身体的罰を加えることは、この状況下では正しいのかもしれない。なぜなら、法律は天から降ってきた神罰なんかじゃなく、人が作ったもので、執行するのも人だからだ。みんなが反対しなかった以上、俺はその選択を尊重する」
進:「……そう……か……」
進は千里の言葉を消化するのに少し時間がかかるようで、その後は何も言わなかった。
遺体を水源から遠く離れた場所に運び出した後、斗哉たちは残る4人の犯罪者への罰を執行する。
千里:「…………俺は探索に行く」
斗哉:「……ああ」
千里が外出した後、2、3人がハチマキをした男を地面に押さえつけ、彼の両手を縛っていた蔓を解くと、大きな岩を右腕の上に置き、手のひらの下にも石板を敷き、同時に左手を押さえた。
ハチマキをした男:「……ちくしょう……っ! やめろ!」
斗哉:「恨むならテメーを恨め! フんっ!」
バットがハチマキをした男の手の甲に激しく打ち下ろされた。数回連続で。
ハチマキをした男:「ぐうぁああああああああああああああああああああ――!!!!」
森は音波を吸収する能力が強く、音は伝わりにくいが、悲鳴はそれでも千里の耳に届いた。
千里:「……程度をわきまえてくれるといいが」
ハチマキをした男の手を変形するまで叩いた後、他の3人も同様に処置された。バットですらいくらか凹みができている。
4人の犯罪者を再拘束した後、大牙深団体の襲撃事件は正式に一段落し、集団は以前の生活リズムへと徐々に戻っていった。
変形した右手、腫れ上がり血が出ている傷口、止まらない涙、動かせない身体。4人の犯罪者は激痛と後悔の中でこの日を過ごした。
翌日、空は暗い雲に覆われ、かなりの雨が降り出した。
森の中は非常に暗く、夜ほどではないが、歩くのも困難なほどだった。
大雨は池を打ち付け、池の水を濁らせた。
雨水は至極高い木々に遮られ、地面に落ちる雨量は多くなく、しとしとと、森の外との差はとても顕著だった。
人々は巨樹の下に隠れ、遮られた雨水は絶え間なく幹を伝って流れ落ちる。滑らかで真っ直ぐな幹は、水の膜をまとったか、あるいは水のカーテンが掛かっているかのようで、珍しい光景だった。
幹を伝って流れ落ちた雨水は最終的に巨大な根元へと流れ着いた。その周辺にはある程度水が溜まったが、浸水には至らない。雨水が流れ落ちる一方で、地面はスポンジのように貪欲に水を吸収していくからだ。
雨はほぼ一日中降り続き、することがない人々は灰色の空を見つめて思いに耽り、その表情にも明るさはなかった。
夕方になってようやく雨は上がった。暗雲も去り、空気はいつもよりずっと清新である。
未羽:「あ! ママ見て! にじぃ!」
30代の母親:「本当ね」
女性の声:「わあ~~! きれい!」
健一:「おおおお! 初めて虹の端っこ見たよ!」
……
池の水面には虹が架かり、人々の顔にも笑みが戻った。
千里はその雨上がりの虹を見つめ、ついに決心を固めた。
夜、彼は皆を呼び集めた。全員が前にように焚き火を囲む。
炎が揺らめく。彼は皆の顔を見渡し、そして一つ伝えた――
「俺はここを離れる」
斗哉:「は?」
紗奈:「え?」
進:「離れるって、どういう……?」
千里:「この拠点を、この集団を離れるということだ」
進:「………………」
楓:「…………」
彩乃:「え? どうして?」
駿:「なんかあったのか?」
千里によるこの唐突な別れの宣告に、集団の全員が唖然とし、顔を見合わせる。特に千里と親しい数人は目を大きく見開いた。
斗哉:「……急にどうした? まさか殺された奴の中におまえの同郷がいたからか? それともオレのやり方が気に食わねえか?」
千里:「いや、成人は己の言行の結果に責任を持つべきだ。あいつのことについては自業自得としか言いようがない。前の事件とは関係ないよ。俺はやるべきことをしに行くだけだ」
進:「やるべきこと?」
千里:「ああ。俺はできるだけ早く元の世界に戻らなければならない。俺を生み育ててくれたあの大地に、お袋の元に戻るんだ」
斗哉:「……誰もがそう思ってるだろ? なんでそんなに急ぐんだ?」
千里:「確かに、みんなもおそらく戻りたいと思ってるだろう。だが、それ上に俺に必要なのは『できるだけ早く』だ」
斗哉:「………………」
慧子:「んん…………」
千里が『できるだけ早く』を強調したことで、多くの者は彼の言葉の意味を理解した。
千里:「お袋は俺しかいないんだ。元々は夏休みを利用して日本に来て、日本料理の技術を少し学ぼうと思ってただけだった。あんなことが起こるとは思わなかった。彼女は今、一人ぼっちだ。それに『異変』のニュース報道や俺と連絡がつかないことで、きっとすごく心配している。だから俺は、一日でも早く戻らなければならない」
皆は沈黙した。多くの者がうつむき、視線を地面に向ける。
千里:「もちろん、この森……いや、十数日歩いても同じような景色が続いてた。もはや森なんて呼べない、樹海だ。この樹海が一体どれほど広いのか、出口はどこにあるのか、どうやって元の世界に戻れるのか、俺にも分からない。だが、川に沿って下流へ進み、まず人間のいる場所を見つけ、その後で戻る方法を探すつもりだ」
集団の者たちは最近大牙深団体の襲撃事件の対処に忙しく、多くの者にとって<ここが異世界である>という認識が弱まっていた。
千里のこの言葉は、それを皆に再認識させた。
千里:「俺は立ち止まることなく移動を続ける。そんな強行軍は老人、子供、そして大部分の女性にとって、速度も体力もついてこれない。それに、みんなのために狩りをする時間と体力の余裕はなくなる。だから、俺はみんなから離れて独りで出発するしかない」
駿:「うーん…………そうだな。移動と生存だけを考えるなら、千里が単独行動するのが効率は一番高いだろう……同じ時間で探索できる範囲が一番広かったからな」
斗哉:「そりゃ……確かにそうだが、でもよ…………」
千里:「実を言うと、俺にも<チヤホヤされながらみんなを元の世界に連れ戻る>という意思はあった。だが、それは『できるだけ早く戻る』ことと矛盾する。そしてその二者択一において、俺はほとんど迷わなかった。みんなは俺を自己中心的だと言っても構わない。反論できないから」
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