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0106 - 第 2 巻 - 第 3 章 - 14


 高木:「今すぐナイフを回収しろ! 急げッ! 四谷! おまえもナイフを後ろに投げろ! 奴らに奪われるな!」


 高木が突然大声で叫んだ。


 千里:「させるか! っ……!?」


 千里は高木団体より先に倉岡が落としたナイフを回収しようとしたが、視界の隅で黒水が自分に向けて弓を構えているのに気づき、後ろに跳んで避けざるを得なかった。


 次の瞬間、黒水が放った矢が、さっき千里が向かおうとしたナイフの位置への通路に飛来する。直後に張三が駆け寄ってナイフを拾い上げた。


 千里:「くそ……っ!」


 そして千里はすぐにピアスをした男青年四谷めがけて打ちかかった。


 しかしそれも一歩遅かった。四谷は地面に座ったまま左手で体を支え、千里の槍が振り下ろされる直前、ナイフを背後へ投げた。その直後に「ドンッ」と音を立てて気絶させられた。


 投げ返されたナイフはハチマキをした男が拾い上げた。


 千里:「……ぐっ」


 千里は高木団体と少し距離を置き、前衛4人が彼のそばに駆け寄った。斗哉は嬉しそうでありながらも悔しげな笑みを浮かべる。


 斗哉:「くそー、動きがあんなに速くできんのかよおまえ!」


 駿:「千里の兄貴やっぱ強えぇ!」


 千里:「すまん、失敗した……」


 元々、千里の計画は単独で3人のナイフ所持者を無力化し、ナイフを自陣に回収することだった。


 しかし高木もナイフが奪われることを警戒しているらしく、十数秒前まで高慢だった彼が焦った声で指示を出した。彼のそのような声を聞くのは誰もが初めてである。


 宏人:「何言ってんだ。あっという間に2人を倒して1人に傷を負わせたんだ。十分すごいよ」


 進:「その通りだ! 予想以上の結果だった。これからはみんなで行こう」


 千里は<みんなにもナイフに向き合わせてしまう>という現状に責任を感じていたが、前衛4人はもちろん、中衛のメンバーも彼の活躍で士気が上がっている。


 斜め前髪の長い男:「……こいつ、思ったより手強いな」


 張三:「…………まさか本当に武術やってたなんて……」


 高木:「慌てるな。2人減ったとはいえ、人数も武器もまだ俺たちが優勢だ。怖がることない」


 張三:「お…おう……そうだな! あの、このナイフは俺が持ってていい……ですか?」


 高木:「勝手にしろ。奪われるなよ」


 張三:「へっへい!」


 高木の許可を得て、張三は下品な笑みを浮かべた。


 高木:「あいつは俺が相手する。残りはおまえらでやれ。おまえら2人は左、おまえら3人は右だ。チャンスを見て<あれ>をやれ。弓は左を支援だ」


 比口:「……親分、人使いが荒いって……痛たたた……」


 高木の指示に従い、ハチマキをした男と傷を負った比口対斗哉と宏人、黒水が弓で支援。斜め前髪の長い男、張三、17歳の男子高校生対進と駿。左右ともに3対2となり、高木自身は千里と中央で1対1となる。


 高木団体が散開し、前方の高木が睨みを利かせているため、千里はナイフ所持者への攻撃を安易に再開できなかった。彼は他の前衛に「みんな気をつろ」と一言だけ伝え、前に出て高木と対峙する。


 高木:「……さっきの言葉は撤回するよ。まだ学生だと言うのにがあんな無駄のない動き、長年鍛えてきたんだな。あの自信っぷりに見合ってる」


 千里:「……」


 高木:「この拠点のものの大半は、おまえが作ったか提案したものだろ。武力も知識も影響力も持ってる。ここは地球じゃない。好き放題に奴らを支配できるはずなのに、もったいないことだ」


 千里:「……<力ある者が弱者を虐げるのは当然>ってのはお前らの考えだ。他人に押し付けるな。お前らには当然でも、文明人にとってそれは『悪』だ。類は友を呼ぶってな、刑法さえ束縛と言うお前らと俺を混同するんじゃない。俺はハッピーエンド主義者だ」


 高木:「『悪』ときたか。ふん。だがまさにおまえの言う通りだ、俺たちはおまえらみたいな己の欲望を殺し、自然の法則に逆らうのを善しとする偽善者どもとは一緒にいたくない。だから消えてもらうまでだ!」


 そう言うと高木は千里へと突進した。足音が乾いた地面を叩く。彼の速度もかなり速い。


 千里は長槍のリーチの優勢を活かし、守りではなく攻めで応戦、高木の左腹へ突きを繰り出す。高木は棍棒を振り、槍を払いのける。


 千里が槍をぐっと押さえ、たちまち右から左へ払う。高木は両手で棍棒を持ち、左顔面に迫る槍先を防ぎ、それを振りほどいた。


 千里は素早く槍を引き、2度目の突きを放つ。高木は後跳びで回避。


 高木:「…………」


 冷兵器の接近戦では、長さがものを言う。約1.8メートルの槍を使う千里、対約1.2メートルの棍棒を使う高木、千里の方が余裕があり、高木は接近することさえできない。


 その他の両サイドでは、前衛4人と高木団体の6人も戦闘中。


 左側の進と駿は左手に盾を持ち、それぞれ斜め前髪の長い男と張三に対峙。17歳の男子高校生はその二人のナイフ所持者の後ろにいる。


 斜め前髪の長い男:「なんだその武器? まさか木刀か? 舐めてんのかおい! おらおらっ!」


 進:「……」


 斜め前髪の長い男は骨の破片を埋め込んだ棍棒で進に打ちかかった。激しい攻撃のように見えるが、進は余裕を持って盾で受け流しながら相手のナイフに注意し、時折盾の枝で棍棒の骨の破片を引っ掛けて外す。


 張三:「ふっ! ふっ! ふっ!」


 張三も同様の棍棒で駿を攻撃するが、動作に技術はなく、力任せで、同じく対人経験の少ない駿でも容易に防げた。


 駿:「……たしかに中国人全員が武術できるわけじゃないみたいだな」


 張三:「なんの意味だ!」


 だが駿もまた張三の手にあるナイフを恐れ、積極的に攻め込めない。


 右側では、千里に傷を負わされた比口はハチマキをした男の後ろに立ち、1人で斗哉と宏人に対峙させている。


 ハチマキをした男は体格が良く、四谷のナイフを持っている。斗哉は盾を持たず、宏人には戦闘経験がないため、ハチマキをした男は1対2でも劣勢ではない。後方には黒水の弓支援もある。斗哉と宏人の方も楽ではない。


 斗哉:「ぐっ……あの野郎、ずっと後ろで狙ってやがる。手が出しにくいぜ。先にどうにかしてアイツを片付けないと」


 ハチマキをした男:「ハッ、させねえよ」


 斗哉:「……防御態勢だと? テメーらみてえな人間のクズでも仲間は守るんだな」


 ハチマキをした男:「んな低レベルな挑発には乗らんよ。ふッ!」


 ハチマキをした男が棍棒を振り斗哉を押し戻し、双方は膠着状態に入った。


 斗哉:「ちっ……」


 その間、高木は地面から小石を3つ拾い、突進しながら千里めがけて投げつけた。


 1つ目は千里の顔へ。千里は右に身をかわして避ける。高木はすぐさま残りの2つを投げ、1つは千里の現在の顔の位置へ、もう1つはさっきの位置へ。


 千里:「ぐっ……」


 現在地と元の位置を封じられ、千里は体を右下に沈めざるを得ない。高木は千里が石を避けている隙に、自身の攻撃が届く位置まで突入、素早く棍棒を振るう。


 この時、千里も下から上へ高木を攻撃できる。だが、高木の棍棒にも骨の破片が埋め込まれており、たとえ命中しても受けるダメージが大きいため、両手で槍を横に構えてガードを選んだ。


 千里は高木の攻撃を防いだものの、同時に高木に接近を許してしまった。


 高木は棍棒で千里を打ち続ける。千里は槍の握り位置を変えながら受け流し、払い、押しのけ、後退を余儀なくされた。


 このままではまずいと思った千里はタイミングを見計らい、右手で槍の上部を握った防御の流れで、槍先で高木の棍棒を絡め取るように数回巻きつけ、自身の左下へ押さえ込んだ。


 高木の棍棒は地面に押し付けられ、千里は槍先を棍棒と骨の破片の隙間に固定すると、自身の左腰を支点に、「ハァッ!」と右手を左上へ、左手を背後の右下へ一気に力を込める。


 槍は腰の辺りで鈍角を描き、槍先が高木の棍棒を弾き飛ばした。


 高木は驚いた。一瞬、無防備に見えた高木の体勢。しかしその反応速度は非常に速く、武器が飛び去るとすぐに拳を握り、千里の左顔面へ殴りかかる。


 千里:「ッ!」


 千里今の技は大きな隙を生んで、高木の拳を完全に避けるのは間に合わない。だから彼は後ろへ躱しつつ、素早く槍先を右へ引き戻し高木の腕を打つ。それ以上の行動はできない。


 千里の左頬に高木の拳が命中、彼は急ぎ数歩後退する。回避動作と槍先の打撃により衝撃は弱められ、ダメージは大きくなく、口の中に少し血が滲んだ程度で済んだ。


 高木は千里の槍先で野球帽を打ち落とされ、その過程で帽子が視界を遮り、千里は距離を取ることに成功した。打たれた腕のダメージは軽微。


 高木:「……ふん、ようやく届いたぞ」


 千里:「……」


 千里は口内から滲んだ少しばかりの血を吸い出して吐き捨て、再び構えた。





 読んでくれてありがとうございます。

 もしよかったら、文章のおかしなところを教えてください。すぐに直して、次に生かしたいと思います。(´・ω・`)

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