0101 - 第 2 巻 - 第 3 章 - 09
斗哉:「クソったれ! 本当に手ぇ出してきやがったな!?」
襲われた8人が他の者に事件の詳細を説明し、負傷した2人は簡単な手当てを受けた。
進:「どうする? 千里。見つかっちゃったんだし、また別の場所に移動する?」
千里:「……いや、ここでヤツらを待つ」
敏之:「そ…それは危なくないか?」
颯真:「そうだ。それじゃあそっちが好きな時にまた来れて、こっちが受身になっちゃうんだよ」
千里:「確かにその通りだ。だが、ここには多くの資源がある。ここを離れれば、また狩りに多くの時間を費やす状態に戻るかもしれない。その状態でまた見つかったら、状況がもっと悪くなる。だから少なくともヤツらの脅威が去るまでは、ここを離れるべきじゃない。それに、仮に移動したくても、俺たちの移動速度はヤツらには敵わない。元々人数が多い上に、今は負傷者まで出た。移動を選ぶのはリスクが大きすぎる」
皆はここに留まることの危険性も感じつつも、千里の言うことにも納得し、「うーん……」と唸りながら悩んだ。
千里:「ヤツらが帰る前に言ってたこと、演技に思えたりする?」
進:「そうは見えなかった」
真部:「……わからない」
駿:「演技? ないだろ」
紗奈:「私も演技じゃないと思う」
千里:「なら、ヤツらの行動と言葉を合わせて考えると、あの4人はただ高木が俺たちを探しに出した偵察隊で、見つけたらついでに俺たちの戦力を減らせたら上々って言ったとこかな。遭遇する前までヤツらも俺たちの居場所は知らなかったはずだ。でないと、直接拠点を襲撃した方がよほど有利だったはずだ。拠点には戦闘能力のない人が多いからな。で、つまり、あの4人は一度高木らのいる場所に戻り、その後もう一度来るわけだ。3日の道程なら、多分まだ前の拠点にいるだろう。ヤツらの足で往復は4日として、休息して体力を回復するのを合わせて、次来るは5日後かもしれない。だが念のため、俺たちは前もって警戒しないといけない」
斗哉:「……いつ来るかわかってる方が、かえって対処しやすいと思うぜ」
進:「ああ、それでも不安さはあるけど、いつ来るか全然わからないよりはずっとましだ」
千里:「真部、三浦、蒼太郎、眼鏡を奪われた今、まだはっきり見えるか?」
真部:「僕は-5.5Dだ。もうはっきり見えない……」
14歳の男子中学生蒼太郎は首を横に振る。
蒼太郎:「……僕もです……-4Dです」
三浦:「……俺は-6Dに乱视だ。狩りはおろか、日常生活でさえ眼鏡がないと辛い。夜なんかまるで盲人だ。眼鏡は視力の悪い人の体外義肢だ。その義肢を失った俺たちは、もう何もできないと思う」
千里:「……すまない、俺の考えが至らなかった。眼鏡をかけた君たち3人を一緒に行動させるべきじゃなかった」
三浦:「いや、あんたの責任じゃないよ」
千里の视力は良好だったため、近眼者の状況や眼鏡を失った后果についてさほど認識がなかった。
千里:「今じゃケガをしていなくても、君たちを中衛に立たせるわけにはいかない。その時は3人とも後ろの方に行ってくれ」
三浦:「……ああ」
蒼太郎:「……うん」
真部:「……わかった」
千里:「斗哉、みんなで急いでもっと盾を作ろう」
斗哉:「盾はそうとして、オレたちも棍棒に骨付けないか? 奴らにあってオレたちにはないんじゃ、威嚇力が違うだろ」
千里:「うん、そうだな。じゃあみんなもそうしよう。俺はいい」
斗哉:「なんでお前はいらないんだ?」
千里:「致命傷や後遺症を残さずに鋭い武器で相手をやっつけるのは難しい。俺にはそんな自信がない」
斗哉:「……たしかに、殺しちまったらまずいか。バットも最初からやりづらいし、オレもやめとくわ」
進:「じゃあオレも要らないかな」
駿:「……俺は殺しちまってもいいと思うぜ。どうせ奴らはああなんだし、俺たちは自衛だ。同等の武器で対抗しても誰にも責められないだろ」
千里:「なら各自の判断に任せる。それでどうだ?」
宏人:「ああ、それがいい。俺は駿と同じ考えだ。俺はケンカの経験がないから、武器まで遅れてたら辛い」
千里:「よし。じゃあそれで行こう。それから、やっぱりシェルターもいくつか作らないと。これから数日は忙しくなるぞ」
斗哉:「この盾があれば充分じゃないのか?」
千里:「盾が獣よけに使えるのは確かだが、乾いた薪を雨に濡れないように置く場所が必要だ。ここまでずっと天気はよかったけど、万一雨が降ったら、乾いた柴がなきゃ困る。火も起こせなくなるからな」
楓:「転ばぬ先の杖ってわけね」
斗哉:「……おう」
話し合いが終わると、皆は高木団体の次の襲撃に備え始めた。
読んでくれてありがとうございます。
もしよかったら、文章のおかしなところを教えてください。すぐに直して、次に生かしたいと思います。(´・ω・`)
もしよければご評価を!