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*** 64 建国 ***



この物語はフィクションです。

登場人物、国家、団体、制度などが実在のものと似ていたとしても、それは偶然です。

また物語内の記述が事実と違っていたとしても、それはフィクションだからです。




 


「なんだまだ計算終わんねぇのかよ。

 答えは合計で2000文だろうによ」


「!!!!!」

(こ、こやつ……)


「それで鉄の短刀はいくつ買えるんでぇ」


「た、短刀は1本1000文(≒12万円)故に2本だけだ!

 ほらみろ、鷹の羽と獣の毛皮が無いせいで貴様らも全く儲からんかっただろうに!

 この短刀2本を持って疾く帰れっ!」


(うはははは、これでまた蠣崎は大儲けよ!

 また商人に安く卸して酒壺でも貰うとするか)


 ムサシが短刀を手に取り、左手で柄、右手で刃先を持って左右に引っ張り始めた。


 うにょ―――ん。


 刃渡り15センチほどの短刀が刃渡り90センチほどの極細の刀になった。

 まるでエペである。


「「「 !!!!! 」」」


「な、なんだ……と……」


「なんだこのちゃちな鉄屑は。

 お前ぇら武士だろ、もっとまともな武器は無ぇのかよ」


「そ、その短刀を返せっ!」


「ほらよ」


「うわっちちちぃぃぃ―――っ!」


「なんだお前ぇ、知らねぇのか。

 鉄は急激に伸ばしたり曲げたりするとかなり熱くなるんだぞ」


「ならば何故キサマは平気だったのだぁぁぁ―――っ!」


「そりゃあお前ぇ、俺は鍛えてるからな。

 武士とか名乗りながらガキみてぇな手のお前ぇと一緒にすんなや」


「あぎぐぐぐぐ……」


「まあいいや、おいお前ぇら、この商品をまた荷造りしろ。

 今回の交易は不成立だ。

 全部持って帰るぞ」


「「「 はっ! 」」」


「な、ななな、なんだとぉ―――っ!

 そ、そんなことが許されるとでも思っているのかぁぁぁ―――っ!」


「思ってるぞ?」


「!!!!!!!!」


「交易ってぇのは対等なもんなんだよ。

 だから片方が値に満足しなければ不成立になるのは当たり前だろ?」


「な、ならば短刀は3本にしてやるっ!

 そ、それで手を打てっ!」


 アバターたちが荷造りを始める中、ムサシはジジイに向き直った。

 尚、荷造りを止めようとしてアバターたちに近づいた蠣崎兵はアバターに睨まれて腰を抜かしている。


「ヤだね」


「交易を拒否するならば蠣崎がアイヌの地に攻め込むぞぉっ!」


「ほう、それは蠣崎によるアイヌへの戦宣言か」


「そ、そうだっ!」


「当主以外の者が防衛以外の目的で他領に戦を仕掛けるのは、武家にとって重大なご法度だろうが」


「はうっ!」


「もしお前ぇんとこの当主が戦を望まなかったら、俺たちのところにお前ぇの首下げて詫びに来るだろうなぁ」


「げぇぇぇっ!」


「まあいいや、お前が売った戦買ってやんよ。

 まずは手始めに、今ここにいる蠣崎兵を皆殺しにしよう。

 そうすればお前たちが蠣崎家当主に戦のことを伝えることが出来ずに、アイヌが一方的に奇襲攻撃出来て蠣崎は全滅だな」


「「「 !!!!!!!!!! 」」」


 アバターたちが荷造りの手を止めて蠣崎兵に迫り始めた。

 その体躯と鬼のように恐ろしい顔に、蠣崎兵たちは皆槍を向けるどころか腰を抜かして尿モレを起こしている。


「お前ぇは俺が直々に首をへし折ってやろう……」


「あひぃぃぃ―――っ!」



「ったく、軽々しく戦を口にするんじゃねぇぞ。

 今回だけは見逃してやる」


「はぁはぁはぁはぁ……」



「あのなぁ、こないだ檜山安東の十三湊に言ったときに見たんだがよ」


 もちろんムサシの嘘である。

 単に地域監視ミリマシンに調べさせただけ。


「き、貴様十三湊に行ったと言うのかっ!

 どどど、どうやって!」


「そりゃあ船に乗ってに決まってんだろ。

 お前ぇ、十三湊に行くのに泳いで行くんかぁ?」


 ↑これも嘘である。

 行くとしても転移で行くだろう。


「うぐぐぐぐ……」


「そんでな、たまたまそんとき漁師が能代の海産物問屋に干し昆布を売りに来てたんだわ。

 それも細くて薄っすい昆布をな。

 そしたらその買取値が10束で50文だったんだよ」


「ぐっ……」


「お前ぇ、さっき蠣崎の買取値は10束5文って言ったよな。

 なんで10倍も違うんだぁ?」


「そ、そそそ、それは……」


「それからな、三戸の城下町に行った時にはよ」


「さ、三戸にも行ったのかぁっ!」


「ああ行ったがそれがどうした」


 ↑もちろん嘘。


「ぐぅ!」


「それでそこでも漁師が海産物問屋に干しアワビと干し帆立を売りに来てたんだがよ、干しアワビは小せぇのが10個200文で、干し帆立は10個100文だったんだよ」


「そ、それは……」


「なんでお前ぇの値付けは十三湊や三戸のきっちり十分の一なんだぁ?」


「あぐぅっ……」


「大方碌に計算も出来ねぇからみんな市場値の十分の一で値付けしたんだろうがよ」


「あぅ……」


「しかもだ、俺が持ち込んだ椎茸を見て、乾物問屋の番頭は一箱400文でお買い上げしてたぞ。

 お前ぇの買取値の20倍だぁ」


「あぅあぅ……」


「ついでにな、お前ぇが俺に売りつけようとした短刀は、三戸の店で一本100文(≒1万2000円)で同じものが売られてたなぁ。

 つまりお前ぇはアイヌの品を相場の10分の1から20分の1の値段で買い、対価の短刀を10倍の値で売りつけようとしたわけだ」


「うぐ……」


 関所兵が小声で話し始めた。


(10分の1から20分の1の値で買い取って、短刀を10倍の値で売ってたんか……)


(酷ぇことするよなぁ……)



「お前ぇの提示したアイヌの品の買取価格は合計で2000文(≒24万円)だったが、三戸で売れば2万8000文、つまり28貫文(≒336万円)だ。

 そのカネで同じ短刀を買えば280本も買えるんだぜぇ。

 よくも今まで30年近くもアイヌを騙してくれたなぁ……」


「ひぃっ!」


「どうせその分商人に安く卸して見返りに酒でも貰ってたんだろうがよ」


「あぅあぅ……」


(あー、だからこのジジイはいつも酔ってたんか……)


(よくそんなに酒が買えるなと思ってたけどそういうことだったんだな……)



「それは主君に対する立派な反逆行為だわ。

 バレたら打ち首だ」


「あぅあぅあぅあぅ……」



「アイヌの品が欲しけりゃ短刀を280本よこせ」


「い、いくらなんでもそんなには……」


「確か三戸じゃあ綿布は1疋3貫文(≒36万円)で売ってたな。

 ならば綿布6疋と短刀100本だ。

 いやこんなボッタクリを30年も続けて来やがったんだよな。

 だったらその10倍で綿布60疋と短刀1000本を用意しろ。

 10年より前の分は見逃してやるからありがたく思え!」


「ひぃひぃ……」


「用意出来ねぇんだったら取引は無しだ。

 おい関所兵」


「は、はい……」


「今日の事は蠣崎の当主にきっちり報告しろ」


「は、ははは、はい……」


「それじゃあお前ぇたち、とっとと荷物を纏めて帰ぇるぞ。

 商品は三戸に売りに行く」


 ↑これも大嘘。

 商品はアイヌのみんなと美味しく頂きました♪


「「「 ははっ! 」」」


「そうそう関所兵共」


「は、はい……」


「来年もう一度ここに来てやる。

 その時にこのクソジジイがまたしゃしゃり出て来たり、次の担当までフザケた真似しやがったら、二度とお前ぇらとは交易なんぞしねぇからな。

 当主によく伝えておけ!」


「「「 は、はいぃ…… 」」」




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 日高第1村の大巫女さまが村長を尋ねて来た。

(彼女は日高アイヌ全体の大巫女に選ばれている)


「のうシブチャリや、今時間は空いてるかの」


「ああ、O―40の試合も終わったし、今はヒマだぞ」


「お前は最近小樽や石狩にもよく行っているようだの」


「毎週のように地域代表チーム同士の試合も始まったからな。

 一応日高地区の総村長も拝命してる以上は、年代別日高チームの遠征にも付き添わないとだ。

 使徒さま方が転移でみんなを連れて行って下さるので楽でいいぞ」


「そうかえ……

 実は儂に提案があっての」


「どんな提案だい?」


「今は続々とカムチャツカや樺太、沿海州からの避難民もここ蝦夷地に来るようになっておるだろう」


「ああ、ありがたいことに、みんなすぐここ蝦夷地での暮らしに馴染んでくれているが」


「それでの、儂が使徒さまに聞いてみたところ、元々この蝦夷の地には20万人ほどの民しかいなかったそうなのだが、今年はもう10万人近くも増えているそうじゃ」


「そんなに増えたか……」


「それが冬までにもあと10万増え、来年も20万増えるそうだ。

 そうして、このままいけば10年後には蝦夷地の民の数は200万ほどになる見込みだそうじゃ。

 その後移民は少しずつ減っていくが、それでも50年後には民の数は500万なっておるだろうとの予想もあるそうな」


「!!!!!」


「もちろんカムイさまがおわす限り、この蝦夷の地では戦などは起きぬであろう。

 またカムイさまは十勝や天塩、名寄、上川、富良野、釧路の地にも大量の村や農地を作って下さっているそうじゃ」


「そうか、ありがたいことだ……」


「それでの、確かにカムイさまがすべての民をまとめては下さると思うが、それでも我らも仲違いや分裂など起こさぬように、結束を固めておいた方がいいのではと思っての」


「確かにそうだな。

 カムイさまに頼り切るより、我々民も努力して団結すべきだな」


「それで使徒さまに問うてみたのよ。

 この蝦夷の地の民が集まって、和人たちの日の本の国のように蝦夷の国を作るのはどうかとの。

 もちろんその国の王はカムイさまじゃが」


「おおっ!」


「そうしたら使徒さまがカムイさまに問い合わせて下さったのだが、カムイさまはこうした提案が民から上がって来たのを殊の外喜ばれたそうな」


「それはよかったなぁ」


「ただ、当面の間はその国の代表はカムイさまが務めて下さるそうじゃが、50年後、100年後には民か使徒さまに代表の地位を譲られたいそうじゃ。

 いつでも連絡はつくものの、カムイさまはこの星全体を救おうとされていらっしゃるので、いつもこの地におわすわけではないからということじゃった」


「そうか……」





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