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*** 45 特殊突入警察隊 ***



この物語はフィクションです。

登場人物、国家、団体、制度などが実在のものと似ていたとしても、それは偶然です。

また物語内の記述が事実と違っていたとしても、それはフィクションだからです。




 


「上級神閣下からご覧になれば、恒星系政府大統領と雖も下賤者に違いはございませんでしょう。

 ですが、彼らにしてみれば、ヒューマノイド世界では最高の重職者になるのですよ。

 したがって、就任前には薬物検査が行われておるのです」


「むう!」


「おかげでせっかく我ら研究員が開発した新薬も、販売承認が降りなかったのです。

 もちろん報奨金もありませんでした。

 そこで我らは、最も重要な職に就いておられる方々のために、あのようなダイレクトメールをお送りさせて頂き、極秘で販売させて頂いておるのです」


「ほ、本当に効果はあるんだろうな!」


「ヒューマノイド世界のニュースなどをご覧になればお分かりの通り、最近薬物使用にて恒星系政府大統領などを罷免された者は1人もいないことは御存じでしょう」


「そ、そうだな……」


 もちろんこの上級神はニュースなどを見たことは無い。

(もし見たとしても知らない用語が多すぎて意味が理解出来ず、莫迦にされているように感じて腹が立つからである)

 それに、薬物使用で罷免された重職者がいないのは、そもそも神界認定世界のヒューマノイドには、そうした犯罪行為に手を出す者が極めて少ないからである。

 神界の禁止薬物使用者数が異常なのだ。



「いくらだ!」


「1錠の服用で、服用から1か月間詳細鑑定に反応が出なくなります」


「だからいくらだと聞いておるっ!」


「これは失礼いたしました。

 1錠につき300万クレジット(≒3億円)です」


「!!!

 い、些か高くないか……」


「上級神閣下ともあろうお方様がご冗談を。

 その程度の金額であれば、下賤なるヒューマノイド世界でも富裕層には大した負担ではございません。

 それになにしろ重職に就けるかどうかの鍵となる薬ですので」


「むう!

 それでは1錠買ってやる!」


「あの、1錠でよろしいのですか?

 あなたさまのご子弟が今後出世を重ね、ついには最高神閣下とお成りあそばすには、最低でも7錠ご入用になるのではないでしょうか」


「な、7錠とな……

 ということは1800万クレジットか!」


「いえ、2100万クレジットでございます……」


「そ、そうだ!」


(上級神閣下はもうそんな簡単な計算までご不自由になられてしまったのか、うぅぅぅっ……)


「な、ならばサンプルを1錠送って来いっ!」


「たいへん申し訳ないのですが、サンプルはお送り出来ないのですよ」


「何故だっ!」


「この薬剤を精製するには1錠につき200万クレジットの原材料費がかかりますので。

 我々研究者にとっては大金だからでございます」


「た、たった200万クレジットが大金だと申すか!」


(ご主人さま……

 さきほど300万クレジットを些か高いと仰られたばかりなのに……)


「我らは下賤なるヒューマノイドであり、しかもサラリーで暮らしております研究者ですので、尊い上級神さまとは違いまして、それほどの大金は用意出来ないのです。

 ですのでご入金頂いてから材料を用意し、精製させていただいております。

 あ、精製にはほとんど時間はかかりませんのでご心配には及びません」


「で、では300万クレジット払ってやるので1錠送って来い!」


(よし! かかったな! もっと買わせろ!)


(へい!)



「あの、本当に1錠でよろしいのですか?」


「今後孫の昇格の度に1錠ずつ買ってやる!」


「あの、我らはせっかくの新薬を開発したのに、それを販売禁止にしたばかりか、褒賞も出そうとしない階梯宇宙中央大学の理事会に愛想を尽かしております。

 よって今回の販売が終了すれば、研究員は全員が辞職して研究室は解散するつもりなのですが……」


「か、解散してからも薬は作れるだろう!」


「いえ、非常に高価な精製施設がなければ薬剤は作れませんので。

 残念ながら販売は今回限りでございます」


「ぶ、分割払いは無いのかっ!」


「それでは原材料が買えませんので」


「うぎぎぎぎ……

 そ、それでは7錠買ってやるっ!」


「あの、本当に7錠でよろしいのですか?

 この薬剤の保存有効期間はほぼ無限大ですが、服用後の有効期間は1か月です。

 ですのでもちろん検査の前日に服用されることをお勧めさせて頂きますが、それでも服用から検査までの間に禁止薬物を使用されると体内に残留薬物が残ってしまうのです。

 ですから禁断症状が出て万が一にも検査前に禁止薬物を服用されますと……」


「あ、あの莫迦孫ならやりかねん!

 そ、それでは予備も入れて8錠だ!」


「ありがとうございます」



<ピー中央監視AIより報告デス。

 通信の逆探知が成功しまシタ。

 通信相手は、恒星系カタログAMC1385900ーA25136509の無生物恒星系に存在する人工天体デス。

 直ちに小型転移装置を転移させ、その転移装置より人工天体内にいるヒューマノイド容疑者の体内に位置情報を知らせるステルスナノマシンを転移させマス。

 また、近隣恒星系の警察組織に連絡し、この人工天体周辺への即時転移体制を要請しマス>



「あ、念のため申し添えますが、身近に口が堅く、且つ高レベル神術を行使可能な方はいらっしゃいますでしょうか」


「い、いるが、なぜそのようなことを聞く!」


「薬物痕跡消去薬剤を服用された際に、詳細鑑定にて残留薬物がゼロであることをご確認されたいかと存じ上げます。

 その際に詳細禁止薬物鑑定にはレベル80以上の神力が必要となりますので、残留薬物検査用の神道具もご用意しております」


「レベル80以上だと……

 も、もちろん身内にそうした高レベル神力を持つものはおるが、いちいち指図するのも面倒だ!

 その神道具も送れ!」


「ありがとうございます、こちらの神道具は1台100万クレジット(≒1億円)でございますので、合計ご購入代金は2500万クレジット(≒25億円)になります。

 お代金はこちらの口座にお振込みくださいませ。

 ご入金確認後、直ちに薬品を精製してお送りさせていただきますです」


「ふん! 急げよ!」


「ははっ! 仰せの通りに」


 深く感謝のお辞儀をする人物の映像が消えた。



「おい!

 この口座にカネを振り込め!」


「あの、上級神閣下、銀行残高が少々足りませんが……」


「な、なんだと!

 なぜそのようなことになっておるのだ!」


「あの使徒士官学校入学前検査で大勢の士官候補生が逮捕されました。

 それをきっかけに階梯宇宙中央警察機構が本格的に麻薬密売組織を摘発いたしましたので」


「そんなことは知っておる!

 それと我が銀行残高が減少しておることに何の関係があると言うのだっ!」


「あの、多くの麻薬密売カルテルが壊滅した結果、禁止薬物の価格が50倍になりました。

 それでも皆さまが継続して大量の麻薬をご購入されていらっしゃるために、口座残高が急減しております……」


「うぎぎぎぎ……

 そ、それでは神界銀行に融資を申し入れろ!」


「融資金の使途は如何いたしましょうか。

 それから担保はどういたしましょう」


「そ、そのような些事はお前が考えろ!」


「畏まりました……」



<ピピ! 上級神家より詐欺師口座への送金が確認されまシタ。

 予想通り入金口座から次々と他の口座への資金転送が行われていますが、すべて追跡中デス。

 1万クレジット以上の電子マネーへの引き出し、及び商品購入代金としての引き落としは全てブロックしマス。

 資金転送終了の模様。

 口座所有者の情報全取得。

 特定されていた敵性集団本拠地への強制捜査を近隣恒星系警察に依頼しマス>




「よおぉぉぉ―――っし野郎共、出撃だあぁぁぁ―――っ!

 鬨の声を上げろぉぉぉ―――っ!」


「「「 ヒャッハ―――っ! 」」」


 なんかアブナイ警察官たちである……



「目標宙域への転移開始せよ!

 転移終了後は各小隊とも予定の行動に入れ!」


「第1小隊了解!」

「第2小隊了解!」

「第3小隊了解!」


「いよいよ大捕り物ですね中隊長殿。

 それにしても重巡洋艦1隻、軽巡洋艦2隻に重層次元航行ミサイル搭載戦闘機50機とは。

 容疑者は何人いるんですか?」


「20人だ」


「へ?

 たったそれだけの容疑者にこれだけの戦闘艦と1個中隊1200名の特殊突入隊を投入するんですか?」


「相手は人工天体を本拠地にしており、武装の存在も予想される。

 それに捜査協力依頼をしてきたあのムサシ神さまが、万が一にも取り零しや反撃による死傷者が出ないように、十分な体制で捜査に当たるよう要請されたからな」


「それにしても20人にこれだけの戦力を当てるとは……

 エネルギー代だってかなりのものになりますよ」


「戦闘艦のエネルギー代は全てムサシ神さまがご負担下さる。

 それに司令官殿は当初1個師団1万2000名と空母打撃群の出動を具申されたそうだ」


「なんでそこまで……」


「なにしろムサシ神さまが全ての費用をご負担下さる上に、出動した全隊員に危険手当として1人10万クレジットのボーナスを下さるそうだからな。

 司令官殿も空母に座乗して指揮を取るつもりだったらしい」


「!!!」


「だが恒星系大統領府が、いくら何でも多すぎてムサシ神さまのご不興を買うのではないかと恐れたようでな。

 それでこの編成に落ち着いたのよ」





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