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*** 27 歴史ロマン ***



この物語はフィクションです。

登場人物、国家、団体、制度などが実在のものと似ていたとしても、それは偶然です。

また物語内の記述が事実と違っていたとしても、それはフィクションだからです。




 


 その日の夕方、テント村や居住棟1階の食堂にて。


 慢性アルコール中毒患者たちは、アルコールの離脱症状による震顫を発症し始めた。

 最初は細かい手の震えだったものが、次第に大きな震えとなって全身に広がって行く。

 さらには奇声を発し始めたり、譫妄症状による幻覚も始まった。


『さ、酒だ! 余に酒を持ってくるのだぁっ!』

『て、手足の震えが大きくなってきた!』

『こ、このままでは余は踊り始めてしまうぞ! それでもいいのかっ!』

『む、虫だっ! 余の体を虫が這いずり回っているっ!』

『お、俺の腹を喰い破って虫が出て来たあぁぁぁ―――っ!』

『む、虫の大群が攻めて来た! 者共戦えっ! 余は逃げるっ!』

『よ、余の目玉が見当たらぬっ! 者共探せぇぇぇ―――っ!』


 譫妄症状が悪化したり暴れ始めた者たちは、次々に医務室に転移させられて消えていった。

 因みにだが、彼らはこうした禁断症状の存在を知らなかったらしい。

 何故なら、生まれてこの方酒を我慢した、あるいは酒が飲めない環境に置かれたという経験が無かったからである。

 慢性アルコール中毒を患っていない者たちは、彼らを気味悪そうに見ていただけであるが、その全員が消えて行くとほっとした顔つきになっている。


 医務室では、暴れ始めた者や自傷行動を取り始めた者から順に拘束衣を着せられ、舌を噛まぬように口枷も嵌められ始めている。

 こうして重度慢性アルコール中毒によって訓練課程から離脱した候補生たちは、実に500人にのぼったそうだ。


 それではなぜこれほどまでに多くの若者が、薬物中毒や慢性アルコール中毒を患っているのだろうか。

 それは神界の上級神家や上級天使家が、それぞれ神界より下賜される年金や手当などで暮らしており、勤労の必要が無かったからである。

 また、彼らは自我の極端な肥大により、勤労を卑しいものとして見下す傾向にあった。

 つまり、上級神も中級神も若い初級神も、上級天使も中級天使も初級天使も、上から下までヒマ潰しに薬物や酒に依存しまくる生活を続けていたのである。

 その状態を咎めるはずの家長や両親までもが同じ状態だったからでもある。


 まあ『小人閑居して不善を為す』っていう奴だね♪




 また、その日の夜、テント村にて。


「うう、トイレに行きたくなった。

 だがあんな遠くの宿舎まで行かねばならんのか……

 まあ、誰も見ていないようだから、その辺の草叢でするか……」


 その訓練生は、草叢に向かって放尿を始めようとした途端に消えた。


「な、なんだこの部屋は!」


 その部屋は広さが4平方メートルほどしかなく、天井も低かった。

 ドアも窓も無く、部屋の中には毛布が1枚あるだけの固いベッドと小さなテーブルしかない。


『ここは懲罰用の営倉デス。

 あなたは士官学校規則違反で逮捕されましたので、ここで反省してくだサイ』


「な、なんだと……」


『食事は日に3回、そちらのテーブルに出てきますし、水はそちらの蛇口から出マス。

 それではこれで失礼しますが、以後はお返事が出来ないことをご承知おきくだサイ』


「ま、まて!

 トイレはどこにある! それからシャワーもだ!」


『トイレもシャワーもありまセン』


「な、なんだ……と……

 そ、それでいつまでこんな部屋にいろというのだ!」


『あなたが規則違反を十分に反省したと見做されるまでデス』


「!!!!!

 お、おい! それはどういうことだ!」


 だがしかし、もはやAIの応答も無かったのであった……


 驚くべきことに、その夜のうちに500人もの候補生が営倉に入れられていたそうだ。




 10日後。


(うう、臭い、臭くて死にそうだ。

 しかも俺自身の排泄物でもう床が見えなくなった。

 ここには俺1人しかいないのに、こんなにも大量の排泄物が溜まるのか。

 このままでは1年も経てばベッドも汚穢で覆われて……

 そうか!

 俺1人でもこんな状況になるのだから、士官候補生が1万人もいて、その多くが屋外で排泄などすれば、この士官学校もトンデモナイことになっていくのだろう。

 さらに俺たちは1期生だが、入学希望者が現時点で30万人もいるそうだし。

『排泄は必ず決められたトイレで』というルールも当然のことだったのだろうな……



『『排泄は必ず決められたトイレで』というルールにご納得いただけましたカ?』


「ああ、骨身にしみてわかったよ」


『それでは反省は十分と見做し、あなたは釈放されます』




 因みにだが、

『大和朝廷の本拠地がどこだったかわからなくなっているぐらい移転が多かった理由』

『持統天皇が豊浦宮から藤原宮に遷都した理由』

『平城京から平安京に遷都された理由』

『南北朝の争乱の際に南朝が吉野に本拠地を移した理由』

『源頼朝がわざわざ幕府を鎌倉に据えた理由』

『足利義満が金閣寺を、足利義政が銀閣寺を立てて京の都の中心から離れようとした理由』

『織田信長が居城を頻繁に変えた理由』

『豊臣秀吉が大阪に城を築いた理由』

『徳川家康が三河から江戸に本拠地を移した理由』


 これらはすべて人口の集積により、今までの本拠地が小便と大便で飽和状態になったからである。

 要は臭くて堪らなかったのだ。


 また、古代の排泄物処理は、そのほとんどが穴を掘ってその上に厠を作るか、小川の上に厠を建てて大きな川に流すかだけであった。

 このうち、穴式の厠は井戸水の汚染を招き、川に流す場合には下流域の飲料水や農業用水が汚染される。

 こうして大腸菌性の疾病が蔓延したために、権力者は遷都したがったのである。

 古代の都市計画の中核は小便とンコ処理だったのだ!

 この都市汚染傾向は、日本では昭和時代後期になって下水処理施設が整備されるまで続いていたようだ。


 また、江戸城内の大奥では、将軍の妻女や数多くの女房女中などが暮らしていたが、男子禁制のために江戸町内のように農民の汲み取り人が内部に入れなかった。

 このために、穴を掘ってその上に厠を建てているだけだったのである。

 この厠穴の追加掘削工事などが行われると、その奥方さまは『うんこの多い奥方さま』などと陰口を被ったそうである。

 酷い。


 ということで、皇居の開放日、園遊会、一般参賀などで皇居に入れて喜んでいらっしゃる皆さま。

 あなた方はのべで数百万人の江戸時代の女性たちのうんこと小便が埋められた上を歩いておられるのですね♪


 いやー歴史を感じるってロマンがあるなぁ♪


 ただ、万が一にも皇居内の湧き水などはお飲みにならないように……




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 士官候補生の入寮翌日朝5:30。


 ジリリリリリリリ……


 全ての候補生の聴覚野で大きなベルの音が鳴り響いた。


「う、うわっ!」


「な、なんだこの音はっ!」



『士官候補生に告ぐ。

 起床時間5:30となった。

 速やかに朝の支度を始め、15分以内に指定の訓練場に集合せよ。

 繰り返す……』


「あー、起床5:30とかマジだったんかよぉ」


「お、俺いつも寝る時刻だ……」


「どうせ15分で集合できる奴とかいるわけないだろうに」


「2度寝するか」



 15分後、小隊330名が集合すべき場所にはわずか数十名しかいなかった。


 バリバリバリバリ! ドドド―――ン!


「「「 ぎゃあぁぁぁ―――っ! 」」」


 プスプスプス。


 集合場所以外の士官学校全域にレベル10の雷撃が落とされた。


『1分以内に集合場所に到達しない者には再度雷撃が落ちる』


「ま、マジかよ!」


「「「 うわぁぁぁ―――っ! 」」」


「「「 ま、間に合わねぇっ! 」」」



 バリバリバリバリ! ドドド―――ン!


「「「 ぎゃあぁぁぁ―――っ! 」」」


 プスプスプス。



 気絶したフリをしていた者は、営倉に転移させられて1時間ほど雷撃を浴びせられ続けている。


(今度の営倉には一応トイレとシャワーはあった。

 だが、狭いことと何もないことに変わりはなく、収容者は『退屈』という大苦痛を味わうことになる。

 日に30分の運動は許されてはいたが、それも誰もいないグラウンドでのことだった。

 昔の日本でも、受刑者たちは独房での禁固刑よりも懲役刑の方が遥かにマシだと言っていたそうだ)



「ようやく集合したか」


 その場にいた候補生の9割方は髪の毛がチリチリになって焼け落ちている。


「それではこれより眠気覚ましにグラウンド2周のランニングを行う。

 本官に続け」


「あ、あの教官殿」


「なんだ」


「グラウンド2周って距離にしてどれぐらいなんでしょうか」


「およそ10キロだな」


((( ………… )))



 教官補佐は比較的緩いペースで走り始めた。

 だが、候補生たちは全員が神族か天使族の子弟である。

 生まれてこの方、300メートル以上走ったことの無い者ばかりだった。


 バリバリバリバリ! ドドド―――ン!


「「「 ぎゃあぁぁぁ―――っ! 」」」


 プスプスプス。



「おお、言い忘れていたが、本官より200メートル以上遅れた者には1分につき1度、雷撃が落ちるぞ」


「「「 !!! 」」」



 余談だが、明治時代中期までの一般町民は、飛脚や駕籠舁きなどの職業に就く者を除いて本当に一度に300メートル以上走ったことがない者ばかりだったそうだ。

 どうやら軍の学校を除けば中等教育が始まるまではそうだったらしい。

 中学高校の長距離走は、やっぱり軍事教練由来だったんだな……





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