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*** 23 使徒士官学校建学 ***



この物語はフィクションです。

登場人物、国家、団体、制度などが実在のものと似ていたとしても、それは偶然です。

また物語内の記述が事実と違っていたとしても、それはフィクションだからです。




 


 再度最高神が口を開いた。


「ところで士官学校というからには、そのトップは学校長であろう。

 学校長にはそなたが就くのか?」


「いえ、わたしは教官長ということにして、校長は空席にでもしようかと思っているのですが」


「ふむ、それではもしそなたさえよければわたしが校長としておくか」


 首席補佐官がちらと最高神さまの顔を見た。


「もちろん実際の運営はすべてそなたに任せるが」


「よろしいのですか?」


 ムサシの知る限り、最高神閣下が兼務している役職は存在しない。

 最高神は最高神であって、それ以外の者ではないのである。


「その方が最高神政務庁にも使徒士官学校の窓口を置く理由にもなるだろう」


「ありがとうございます……」




 会談が終わってムサシたちが退出していくと、最高神閣下は深く嘆息されると同時に瞑目された。


「のうオーディンよ……」


「はい」


「あのムサシこそは、今まで発生して来た全ての階梯宇宙が遂に生み出した至宝だったのかもしれぬの……」


「なぜあらゆる階梯宇宙が資源不足に悩んでいる中で、この階梯宇宙だけが潤沢に資源を得られるようになったのか。

 その謎が解けたように思います。

 彼のような奇跡の存在が生まれてくれたからだったのですね……」


「あの者こそが、我らのような能無しであり且つ偽りの神を超越した真の神なのかもしれんの……

 それも我らのような『生まれの神』ではなく『努力の神』か……」


「その努力の神が階梯宇宙全域でも最悪の暴虐世界と言われる地球出身とは……

 恐るべきことでございますな。

 まるで全ての地球人類の罪業カルマの集合体が為した贖罪のようです」


「それこそが『因果』というものだったのかもしれん……」


「はい……」




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 8万年前の地球の拠点に戻ったムサシはまた10人の弟分たちを集めた。


「ようみんな、久しぶり」


「久しぶりって、兄貴が元宇宙に出かけたのって、たった2日前だったぞ」


「だが俺とミヌエットは元宇宙で体感時間1年もかけて準備をしていたからな。

 俺から見ればみんなと会うのは1年ぶりだ」


「まあそれが俺たちの強みだけどさ。

 過去であればどの時間にでも飛べるっていうのはよ」


「それにしてもミヌエットの姐さん、随分と色っぽくなったな……」


「うふん、姐さんだなんて嬉しいわ♡」


 ミヌエット上級天使は極めて面積の少ないトーガをまとい、ムサシにぴったりと密着したまま言った。


「ま、まあ元宇宙ではもう番になったようなもんだったからな。

 実際の子作りは引退してからだけど、子作りの練習だけは毎晩してたし」


「おかげでもうわたしメロメロですもの♡」


「はは、それで兄貴の生活が充実してるならなによりだ」


「それじゃあ種族保存本能は遮断して任務の話をしようか」


「はいムサシさん。

 でもその代りまた夜は可愛がってね♪」



 因みにだが、ムサシたちは任務に支障が出ないよう、普段は自分たちに『種族保存本能遮断』の神術をかけている。

(ミヌエットにはムサシがかけてやっていた)

 また、ムサシの分身たちは、それぞれがお気に入りの自律型セクサロイド1名から8名までと一緒に暮らしている。

(8名もいるのは武一郎だけ)

 彼らはムサシからいくらでもボーナスを貰えるために、超高額な最高級セクサロイドも買えるのである。



「それじゃあいつもの通り、俺の思考・知識・経験を保存用有機AIにアップロードして、それをお前たちにダウンロードしようか」




「なるほど、『使徒士官学校』か」


「第2のアニキを養成するには確かにこれぐれぇ必要だろうな」


「どうせ最初は上級神や上級天使の孫とか曾孫とか、ボンボンしか来ねぇんだろ。

 奴ら大丈夫か?」


「いや、大丈夫じゃねぇだろう」


「だがまあ利潤動機や上級神の権勢欲や自分の出世欲のために志願して来るんだよな。

 そんな甘ぇボンボンが発狂しても仕方ねぇな」


「その後は現役の使徒や使徒見習いが来るだろう」


「その中にゃあトンデモねぇ奴がいるかもだ」



「さて、予定通りお前たちの弟分になるバイオロイド90人と、お前たちも含めた全員の配下になるアバター480万体、そのアバターのコントロールをサポートする制御AIも1000基用意した。

 それに加えて地球上を10キログリッドで監視可能なナノマシンからミリマシンまでのマシン群を、損耗による追加を考慮しても10万年間維持可能な分買って来たぞ。

 ついでに、階梯宇宙中央神殿の許可を得て、ナノマシンやマイクロマシンの開発設計を得意とする恒星系に、開発費1000兆クレジットを渡してヒューマノイドの脳に入り込んで行動をコントロールする専用マシンも作ってもらった」


「標準的恒星系政府予算100年分の開発費かよ」


「ヒューマノイドの行動をコントロール可能なマシンは神界が禁じてたんじゃなかったか?」


「中央神殿が子宇宙チャイルドユニバースから突き上げを喰らって、首席補佐官さんがなんとか白金勲章と特別上級神への昇格を受けてもらいてぇって言うんで、見返りにヒューマノイドをコントロール出来る神術発動体付きマシンを認めてもらったんだ。

 もちろんこの任務限定だけどな」


「中央神殿も、もうなんでもありになってるな……」


「ということは、今まで俺たちやアバターたちが個人技でやってた地域限定の監視やヒューマノイドコントロールを、ナノマシンやマイクロマシンたちが代わりにやってくれるのか」


「だったら、ペルシャ帝国とかフン族の地とかローマ帝国だけじゃあなくって、地球上すべてでヒューマノイドを管理出来るな」


「加えて地表監視AIやミニAIに持たせる神術発動体も作らせたから、武器没収やラジオ体操発動なんかも自動化させられるぞ」


「トンデモネェ監視社会だが、まあ絶滅を拡散させる元凶になるよりはマシか……」



「だが残念ながらその作戦の実行は少し待って欲しいそうなんだ。

 実行するには膨大な神力と莫大なカネがかかるだろ。

 つまりチャイルドユニバースを含めても、実行出来るのが俺たちしかいないんだよ」


「上級神どもはアニキからノウハウを吐き出させれば、簡単に神力レベルを上げられて、ついでに資源抽出でボロ儲け出来るって幻想を抱いてるよな」


「だから俺たちが『究極管理政策』でまた功績を上げると、あいつらがムカついてゴネるのか。

 ノウハウさえ公開されていれば、その功績は俺たちのものだったのにって考えるわけだ」


「阿呆ばっかしだな……」


「それでこの『使徒士官学校』で奴らの幻想をブチ壊してから『究極管理』をしようってぇ寸法か」


「なるほど」


「ただ、この前リストアップした個別の悪党たちへの対処は始めていいんだよな」


「おう、そっちは早速始めよう。

 ただ、後で紀元前3万年に戻って究極管理を始めたら、その悪党たちへの対処は無駄になっちまうかもしれないけどよ」


「いや、何事もやってみなきゃわかんねぇぞ」


「そうだな、過去の改変なんて今まで誰もやってなかったんだし」


「それじゃあ悪党たちには俺たちの練習台になってもらおうか」


「「「 はははは 」」」


「ただ、武七郎と武八郎は『士官学校』担当だ。

 それぞれ九人の弟分や俺と一緒に士官学校のカリキュラムの細部を考えてくれ」


「「 おう! 」」


「だがお前たち2人とその弟分たちにゃあ悪いんだけどよ。

 士官学校を置く人口惑星は時間加速効果を10万倍にするつもりなんだ。

 一方でこの本部は地球に対処するために時間加速は無しにするからな。

 ここでの1日がお前たちにとっては250年になっちまうんだよ」


「んー、特に問題は無ぇんじゃねぇか?」


「そうだよな、地球救済も士官学校もどっちも大事な任務だし」


「まあ何か用事があったらアバターを派遣するからよ。

 兄貴もなんか俺たちに用があったらアバターを連絡係にしてくれ」


「おう」


「ところでそんな士官学校用の人工天体をすぐに用意出来るのか?

 直径10キロとか言ったら内装も含めて建造に何十年もかかるんじゃね?」


「いやそれがさすがは階梯宇宙の先進工業恒星系群でな。

 恒星系住民移住用だの農業用だのの巨大人工天体を作るための100キロ級程度までの巨大ドックがいくつもあるんだよ。

 しかも内部は時間加速装置がついてるから、例え通常空間で100年かかる工事でも、内部で建造すりゃあ1か月もかからねぇんだ。

 加速装置駆動用の神石と資源さえあればあっという間に作ってくれるんだと。

 しかも転移は俺たちが個人用重層次元倉庫に入れて自前でするし。

 だから人工惑星1個と内装込みで10兆クレジット(≒1000兆円、標準的恒星系政府予算1年分)で済んだぜ。


「けっこう安く済んだな」


「それで『これからも注文するかもしれないから必要だった分以上は預かっておいてくれ』って言って、3メートル級神石10個と必要量の100倍の資源と建造費を前金で置いて来たんだよ。

 ついでに建造費の1割のチップも渡して」


「そりゃあ向こうさんも驚いたろ」


「おう、その恒星系の大統領や閣僚だけじゃなくって、下請けやら孫請けの恒星系からも大統領やらなんやらエライさんがわんさか来てな。

 それでなんか俺、500人ぐらいに拝まれちまったんだ。

 参ったぜ、はは」


「いやもう兄貴は特別上級神だから、拝まれても不思議じゃねぇぞ。

 ってゆーか当然だろうに。

 その総金額って、僅かながらGUPに影響を与えるレベルだぞ」


(GUP:グロス・ユニバース・プロダクツ。階梯宇宙総生産。

 一般国家のGDPに相当)


「そ、そうか。

 それでその人工天体建造用のドックを少し見学させてもらったんだけどよ。

 なんか外周というか外廓の内側に建物やら小惑星やらがびっしりくっついてたんだ。

 工事用ドローンの格納庫とか修理施設とか資源倉庫だけじゃあなくって、ドローンオペレーターのヒューマノイドが暮らす宿舎とか、見学者用のホテルとか、歓楽小惑星まであったもんな。

 ありゃあすげぇ産業だったわ」


「これからは大規模自然災害で苦しむ未開世界救援のために、50キロ級とか100キロ級の居住天体をいくつか持ってた方がいいかもな」


「俺もそう思ったんでよ、階梯宇宙銀河間連絡協議会に寄って、そういう人工天体建造を得意とする恒星系グループはいくつあるか聞いたんだわ。

 そしたらあと9か所あるっていうんで、それも全部廻って士官学校用天体を注文して来たぞ。

 同じように神石も資源も建造費もチップも置いて」


「わはは、これでもう人工天体建造は注文書1枚でいくらでも出来るな……」



「それじゃあ武一郎は弟分と一緒にいつも通り俺の秘書役で、残りの分身たちは悪党たちへの個別対処を頼むわ」


「「「 おう! 」」」



 こうして、恐怖の『ムサシ‘sブートキャンプ』がいよいよ始まることになったのである……





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