*** 21 最高神との面談 ***
この物語はフィクションです。
登場人物、国家、団体、制度などが実在のものと似ていたとしても、それは偶然です。
また物語内の記述が事実と違っていたとしても、それはフィクションだからです。
ムサシの白金勲章受勲式、並びに特別上級神昇格式が始まった。
急遽増築された階梯宇宙中央神殿大ホールには、この階梯宇宙の上級神たち約千名とその補佐官、銀河間連絡協議会の議長や各銀河団政府の議長たち、そして各子宇宙からの代表とその随行員たちが、総計10万人も集結していた。
中にはこの階梯宇宙の親宇宙からの祝いの使者までいるらしい。
それでもムサシが個別の上級神やチャイルドユニバースからの来賓との個別面談を全て断っていたために、受勲・昇格式の参列者は当初の10分の1以下になっていたそうだ。
そのせいか、上級神たちほぼ全員の額には太い青筋が浮いている。
(ったくよ、この階梯宇宙内の転移ならともかく、チャイルドユニバースからの転移とか、買えば1人につき1億クレジット(≒100億円)相当の神力エネルギーが必要だろうによ。
そんだけの神力やカネがあれば未開世界の住民にどんだけ食料援助出来ると思ってやがるんだ)
上級神代表やチャイルドユニバースからの来賓代表たちの挨拶はヤタラに長かった。
内容もまるで選挙演説である。
だがムサシはこれによく耐えた。
自分そっくりのアバターと交代することも無く、最後まで大人しく主役席に座っていたのである。
最後のセレモニーである特別上級神の証、銀色の粒子を振りまく3対6枚の翼の披露までをも笑顔で熟したのであった……
受勲・昇格式が終わったのち、ムサシは本拠地の人口惑星内に転移してその中に設けてある時間加速空間で体感時間10日間の休息を取った。
(もちろんその間にミヌエットちゃんを10回ほど白目にしている)
「なぁミヌエット、お前の一族って上級天使家だよな」
「そうよ」
「その寄親である上級神から、俺との面談をセットしろとか要求されてないのか?」
「なにを言ってるのムサシさん。
私たちは猫人族よ」
「???」
「猫人がそんな寄親だの寄子だのとかいう社会性を持ってるわけないじゃないの」
「!!!」
「知り合いの神一族に呼ばれても、めんどくさがって誰も行かないわよ」
(さ、さすがは猫人、フリーダムだわー)
「あ、でもお母さまや一族の長老であるおばあさまからは、何度もあなたを邸に連れて来てくれとは言われてるけどね。
でも絶対に行かない方がいいわ」
「???
なんでだ?」
「そんなところに行ったら、わたしの妹や姉や親戚の娘たちが、裸になってフェロモン吹き出しながら100人ぐらい襲い掛かって来るわ」
「!!!!!」
「たぶんお母さまも、ひょっとしたらおばあさまも……
そんなことになったら、あなたあっという間に200人ぐらいの子のパパになっちゃうわよ」
(ね、猫人怖ぇ―――っ!)
心身ともにすっきりとしたムサシは、客観時間での翌日、最高神とその首席補佐官との面談に及んだ。
最高神さまの執務室は小さく簡素ながら快適な空間であり、ムサシは2柱の神を前にして、ソファに座った。
他にこの執務室にいるのはミヌエットだけである。
(この2柱の神ってどうも苦手なんだよな。
最高神はいつもにこにこしてるだけで何考えてるか俺にも読めないし。
首席補佐官も一切表情を動かさずに、やっぱり考えは読めないし。
2柱ともこれだけの長期間最高神と首席補佐官張って来たんだから、凄まじい権謀術数の持ち主なんだろうけどよ。
ただ、この2柱は俺に一切マウント取ろうとしないんだよ。
自己顕示欲も野心も感じられないし。
やはり、神界の存在意義はヒューマノイド世界の安寧に資することのみである、って考えているんだろうな……)
まず首席補佐官が口を開いた。
「任務中のそなたを昨日のようなセレモニーのために呼び出して、本当にすまなかった。
このとおりだ」
最高神とその首席補佐官がムサシに頭を下げた。
ムサシですら内心驚き、ミヌエットちゃんは硬直している。
「だが、過去145億年、いやマザーユニバースでも記録の残る限り過去数千億年の間、これほどまで偉大な功績は無かったのだ。
我らの階梯宇宙の神々とチャイルドユニバースの神々や銀河間連絡協議会の政治家どもはともかく、民たちは本当にそなたに感謝しておる」
(はは、神や政治家どもはともかくか……)
「そのように、自分たちの階梯宇宙の未開世界が救われたということを喜び、それを為した者に感謝出来るということもまた、これからのすべての階梯宇宙の幸福に資することであろう。
その多くの民の感謝の気持ちが集まって、そなたの功徳ポイントもまた大きく増えていると思うが」
「ええ、チャイルドユニバースの地球相当惑星の民の分と合わせて、100兆ポイントほど増えていました」
「はは、功徳ポイント300兆を持つ使徒か。
この記録を破れる者は、今後数千億年経とうとも、そなた本人しかおるまいな」
「…………」
「それでの、もう知ってのことと思うが、この中央神殿の上級神に加えてチャイルドユニバースの神々や多くの階梯宇宙銀河間連絡協議会からも、そなたの使徒としてのノウハウを教えて貰いたいとの要望が寄せられておるのだよ。
まあ中には邪な考えを持つ者もいるだろうが」
「はは、まずは私が資産を作った方法でしょうか」
「その通りだ」
「あの『抽出』の神法は、最低でも神力レベル600が必要になることを知らないんですかね?」
「知っておる者も多いが、ならば『簡単に神力レベルを上げる方法』があるに違いないと考えているようだ」
「そんな方法はありませんけど。
あれは実に苦しい鍛錬の賜物です」
「それはわたしも最高神さまも知っている」
(ほう……)
「そして、そなたが開発したあの『資源抽出神法』によって、莫大な資源と資産を手に入れたいという利潤動機だけでなく、併せて無意味な野心を抱いている者もおる」
「一族の若い神や眷属の天使たちを使徒として活躍させ、自らの当主としての権威を高めることによって次期最高神の座に就こうという野心ですね」
「はは、さすがそなたは読みも深いの。
もう最高神さまの在位期間も1億年に近づいて、次期最高神の座をかけての水面下の争いは始まっている。
そなたを取り込んで自分の眷属とした者は、その争いの中で大きくリード出来ることだろう。
だが、そなたはすべての上級神たちとの面談を断った。
そんな面談などに応じれば、1000人の上級神たちが挙ってそなたの勧誘を始め、そなたが現場に出てのヒューマノイド救済が出来なくなってしまうという理由からだろうが」
「ええ」
(まあ単にメンドクサイっていう理由でもあるけど……)
「おかげで昨日の受勲式でもほとんどの上級神が額に青筋を立てておったろう」
「ははは」
「そなたの取り込みに失敗した彼らは、以前から一族や眷属の若者たちをそなたの助手として送り込むことを目論んでいたが、これもそなたに拒否され続けておることで頓挫している」
「わたしには既に私の分身たちがいますので」
「その分身も100人に増やし、併せて配下のAIもアバターも大幅に増やしつつあるか」
「今後地球をもっとまともな世界にして行くには、さらなるマンパワーが必要でしょうから」
「そしてそのマンパワーを存分に使い、最終的には地球ヒューマノイドの完全コントロールまで考えておるのだな……」
「ええ、さすがにわたしも少々躊躇してはいますが、このままでは万に達するチャイルドユニバースも含めて、地球相当地域ではずっと戦乱が続いてしまうでしょう。
今後数千年で何兆というヒューマノイドが命を落とすことを考えれば、最終手段としてやむを得ないかなとも思っています」
最高神が笑みを潜め、突然深く頭を下げた。
「そなたに特命全権を与えた直後だというのにまことに済まぬ」
(はは、また俺最高神さんに頭下げさせちまったぜ)
「だがどうかその方策は本当に最後の手段にしてはもらえまいか」
「理由を聞かせていただいてもよろしいですか?」
「それはもちろん、あの完全管理手法が、強大な神力と莫大な費用を必要とするためだ。
加えて優秀な多くの人員もな。
つまり、我らの階梯宇宙ではそなたたち以外に誰も真似の出来ない方法なのだよ。
もちろん如何なるチャイルドユニバースでもマザーユニバースでも実行は不可能だろう」
「…………」
「さらにそなたらが研究している、あの『50億年前の太陽形成期に遡行して太陽の温度を上げる』という方策だが、50億年前に飛ぶ時間遡行神術は優に神力レベル1000と膨大な神力エネルギーを必要とするだろう。
重力によって集合しつつあるダークマターをスイープし、代わりに水素資源を注入するにも莫大な資金が必要になる」
(はは、その検討内容までバレてたか。
まあ階梯宇宙の工業世界にそうした機器の製造見積りを求めてたから、その辺りから漏れたんだろうけど。
まあ別に秘密にしてたわけじゃねぇからいいか)
「つまり、この階梯宇宙や他のユニバースのどこを探しても、これら方策を実行可能なのはそなたとその一派しかおらんということになる」
「…………」
「だが多くの神々やユニバースの上層部は幻想を抱いておる」
「幻想……ですか」
「そうだ幻想だ。
そなたの薫陶を得てノウハウを得られれば、容易に神力レベルを上げられ、よって資源抽出で莫大な資金も確保出来るという幻想だ。
故に現在そなたに『特別使徒養成所』を作ってもらいたいという要望が殺到しておる。
容易にレベルを上げられるノウハウなど本当に幻想でしかないというのに」
(なんでそこまで断言できるんだ?
まあ俺自身そんなノウハウはいくら探しても無かったことは知っているが……)
「はは、腑に落ちんようだの。
わたしもここにいるオーディンも、若かりしころは使徒として働いておった」
(ほう)
「そのときに、未開世界の住民を救うのに必要な物はやはり神力と資金だということは、嫌というほど感じていたのだ。
そこでわたしは、休暇中は使徒に開放されている訓練用の時間加速空間に籠り、自分の神力を神石に込める作業を行うことで、神力を上げながら資金も得るということを繰り返していたのだよ。
そんなことをしているうちに知り合ったのが、同じことをしていたこのオーディンだ」
「そうだったんですね……」
「あの空間は、100倍の時間加速までならば無料で使えるが、相応のエネルギー源である神石を渡せば加速率を上げてもらえる。
そこで充填訓練によって得た神石の一部を渡すことによって、加速率を1000倍にしてもらっていたのだ。
そのおかげか、わたしは神力レベル210、こちらのオーディンはレベル250に至っておる」
「さすがですね」
「ははは、レベル1200のそなたにさすがと言われてもの」
「恐縮です……」




