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*** 2 第三次世界大戦 ***



この物語はフィクションです。

登場人物、国家、団体、制度などが実在のものと似ていたとしても、それは偶然です。

また物語内の記述が事実と違っていたとしても、それはフィクションだからです。




 


「お久しぶりですムサシさん。

 またお会い出来て嬉しいです♡」


 ミヌエット上級天使は、いつものようにトーガの胸をはだけておっぱいを丸見えにしてくれていた。

 しっぽも嬉し気にふりふりと揺れている。


 猫人族とはいっても、ヒト族との外見上の違いは猫耳としっぽぐらいなもので、他はほとんどヒトと変わらない。

 まあ内面の本能や嗜好の部分では猫の特徴も多く残っているが。



「お久しぶりミヌエット、なんでも銀河系神界本部の初級神付き補佐官に昇格したそうじゃねぇか。

 8000億の恒星系、2億の神界認定世界を統べる初級神の補佐官とはたいへんな出世だよな、おめでとう」


(ふふ、ムサシさん相変わらずわたしの顔とおっぱいを交互に見て下さってるわ♡

 よかった……)


(あー、なんか俺、半分はミヌエットのおっぱいに話しかけているみたいだわ。

 おかげで股間が……

 いかんいかん! 色即是空空即是色……)



「ありがとう、それもムサシさんのおかげよ。

 わたしが勧誘して使徒エージェントになってもらったあなたが、あれほどまでに活躍してくれたからこそ、たった5万年で銀河系神界本部長付きにまで出世できたのだもの」


「まあ俺も病気で死んじまったところを復活させてもらったわけだから、お互いさまだな」


「それでね、わたし、子供が生めるようになる前に神界幼年学校に入ったんですけど、まずは神界大学を卒業して天使見習いになるためにずっと発情抑制剤を飲んでたから、まだ交尾もしたことが無いの。

 でもあなたにお会いすると、もうフェロモンが噴き出て来ちゃってどうしようもないのよ。

 もう上級天使にまで出世できたし、これを機会にどうか私の子の父親になっていただけないかしら♡」


(うう……

 こ、こんな美人さんにそんなこと言われると……)


「それで如何かしらわたしのフェロモン♪」


(註:猫はまずメスが年に2~3回の発情期を迎えてフェロモンを出す。

 そのフェロモンに影響されてオスも発情するのであり、つまりオスしかいない場では誰も発情しないのである。

 また、交尾が終わると猫はまた単独で暮らすようになるために、番をつくることは稀である。

 つまり猫人族の母親はほとんどがシングルマザーであった)



「い、いや如何でしょうかって言われても……

 ヒト族にはフェロモンは無いし」


「でもムサシさん、生殖器を準備して下さってるでしょ♡」


(猫の嗅覚ってヒト族の10万倍はあるらしいからな。

 カウパーの匂いでやっぱバレバレかぁ……)


「い、いやミヌエットがそう言ってくれるのはすっごく嬉しいよ。

 俺もミヌエットとは番になって子作りしたいと思うし」


「でしたら……」


「ただ俺と番になったりしたら、ミヌエットが発情してなくってもヤっちゃうかもしれないぞ」


「望むところだわ♡

 それにそうなったらわたしも常に発情するようになるかもしれないし♡」


「それに俺も21世紀の日本出身者だからさ。

 文化的刷り込みが強すぎて、どうしても一夫一婦制に拘りがあるし、生まれて来た子供とも一緒に暮らしたいんだ。

 でも今は使徒エージェントの任務で飛び回っているから、子を作るのは俺が使徒を引退するまで待っていてくれないか」


「嬉しい……

 わたしもあなたも、神界や銀河先端技術のおかげで任務中は無限に近い寿命を頂いてるから、いつまででも待ってるわ♡

 やっぱり優秀な男性と子孫を残したいと思うのは女の本能だもの」


「ありがとう」


「ただ、今日は鼻チューだけでもしてくださらないかしら♡」


(註:鼻チューとは。

 猫が相互に親愛の情を表すために鼻と鼻とをくっつけること)


「あ、ああ……」


「ありがとう♡

 ついでにおっぱいも触っていいわよ♡」


「い、いやそれをやると歯止めが利かなくなっちゃうから……」


「ふふ、ヒト族の男性はちょっとした刺激でいつでも発情できるっていうのは本当なのね。

 それにしても不思議だわ。

 日本でも一般人が一夫一婦制になったのは室町時代ぐらいからで、それまでは多夫多妻制だったでしょ?

 鎌倉期ぐらいまでは、農民は祭りのときに乱交して村人を増やしていて、子供も村人全員で育てていたし。

 平安期なんか貴族ですら通い婚だったから子供が自分の子かどうかもわからなかったし。

 でもそれって多夫多妻制の類人猿出身のヒト族としては当然の事よね。

 だからヒト族は類人猿400万年の遺伝子のせいで、『番を作ってからも浮気をする生物』っていう変な種族になっちゃったんでしょ」


「そうだよなあ。

 だから万世一系の皇室とか言っても、途中で間違いなく血筋は途絶えてるだろう。

 有力者が奥さんを囲い込んで、子孫が確実に自分の子になるようにしたのって、ミヌエットが言うように室町期ぐらいからだし」


「なんで室町時代からだったの?」


「それは間違いなく戦のせいだな。

 室町期は戦国時代って言われてるわけだし。

 有力者は自分や一族の命や領土を防衛するために多くの砦や城を必要としたけど、裏切りを減らすためになるべく自分の子孫を城主や城代にしようとしたからだろう。

 それでも後継者になれなかったりした子孫や親類が、下剋上とか言って反乱を起こしまくってたけど」


「なんでその戦の時期が室町時代だったの?」


「日本の教科書には南北朝の争いのせいとか応仁の乱のせいとか下剋上の風潮のせいとか書いてあるけどさ。

 実際にはそれらは結果であって原因ではないんだ。

 本当の原因は、15世紀後半に地球が小氷期に入ったことだな」


「つまり寒冷化のせいで農産物生産が減少したから、みんなが他人の農産物や土地を奪おうとし始めたっていうこと?」


「そうだ。

 それに小氷期に入ったのは地球全体だったからな。

 同じ時期に文明が他より発達していた欧州なんかでは、航海技術を発展させて南の国々に侵略を始めたんだよ。

 やっぱり日本の教科書なんかでは『大航海時代』とかの美名を使って侵略戦争を正当化しようとしてたけど。

 各冒険航海者たちの遠征にも、国王や国が資金を出してたしな」


「なるほど、日本も欧州も氷期の訪れで食料生産が減り始めたんで、国内の他地域や海外への侵略戦争を始めたっていうことね」


「その通りだな」


「でも19世紀に小氷期が終わっても、侵略や戦争は減らなかったんでしょ。

 それは何故だったの?」


「そのころになると産業革命によって生産も激増してたし、原材料や消費地を求めて安易に植民地を求めるようになってたんだろうな。

 当時のイギリスは清国産の茶や陶磁器や絹織物を大量に欲していたけど、清には英国産の工業用品を買えるような富裕層は皇帝一族以外ほとんどいなかったんだ。

 だからイギリスは清国との貿易ではとんでもなく貿易赤字を出してたんだけど、この赤字を解消するためにイギリスはインド産のアヘンを中国に持ち込んで大々的に売ったんだよ。

 それで一般民衆にまでアヘン中毒が蔓延して、慌てた清政府がアヘンを輸入禁止にしたんだけど、その禁止措置を撤回させるためにイギリスは海軍を派遣して清国沿岸を徹底的に攻撃したんだ。

 おかげで清の海軍は壊滅的な打撃を被ってアヘン禁輸を撤回せざるを得なくなったわけだな。

 まあ戦争はどれも酷い理由で発生してたけど、このアヘン戦争は地球人類史上でも最悪の戦争動機によるものだ」


「そうして『欲しければ武力で他人から奪えばいい』っていう風潮が蔓延した結果、第1次世界大戦と第2次世界大戦に至ったのね。

 それで2020年にあなたが亡くなって、わたしの勧誘に応じて神界の使徒エージェントになってくださって……

 その後2024年に中国とロシアの武力侵略がエスカレートして第3次世界大戦が起きちゃったのか……」


「ああ、中華人民共和帝国が台湾や日本に侵攻して、ロシア帝国がウクライナやベラルーシ経由でポーランドにまで侵攻してな」


「両国の独裁指導者はなんでそんな暴挙に踏み切ったのかしら?」


「中華帝国のプーさん主席は、自分の政治的地位が暴力を背景にした圧政によるものだと元々気づいてたんだ。

 だからあの神君毛沢東ですら成し遂げられなかった台湾統一と日本への復讐を成し遂げて、毛沢東みたいに人民に尊敬されたかったんだよ。

 ロシア帝国のプーチンチンは、旧ソビエト諸国をすべて属国か植民地だと思い込んでたんで、自分を崇拝しないウクライナを許せなかったんだ。

 つまりまあ、両国とも侵略の理由は単なる独裁者の自己顕示欲だな」


「そうだったのね……」


「それでどっちも最初は通常兵器での侵略だったけど、西側諸国が本格的に介入を始めるとすぐに敗色濃厚になったんで、それでとうとう核ミサイルまで持ち出すようになって、さらにどんどんエスカレートしていったけど。

 でも長距離弾道弾の半分以上は整備不良で途中で落ちちゃったし、残りも西側諸国に極秘配備されていた新型地対空ミサイル(パトリオット7)にほとんど撃ち落されちゃったんだよな。

 おかげで両国内では、プーチンチン大統領とプーさん主席に対する反乱が起き始めたんだけど。


 でも西側諸国も、まさか両国の核ミサイルの7割が国内の主要都市や軍事基地に照準を合わせてたとは思ってもいなかったんだ。

 まあどっちの国も、革命という名の内戦で前統治者を殺して出来た国だから、支配者層が最も恐れていたのは外国ではなく潜在的国内反乱勢力だったんだろう。

 西側諸国の迎撃ミサイルも、自国を攻撃して来たものは撃ち落とせても、両国の国内で飛び交う核ミサイルには無力だったんだろうし」


「それで地球には『核の冬』が来ちゃって、たった2年で世界人口の90%以上が死滅しちゃったのね……

 両国の指導者層は核の冬を予想して無かったのかしら?」


「奴らにとっては、自分に従わない者や逆らう者は滅んで当然なんだろう。

 当時の地球で『世界3大殺戮者』って言われていたのは、ヒトラーを除けばスターリンと毛沢東だけど、この2人はロシアと中国の独裁者だからな。

 しかも大量に殺したのは両者とも自国の民だったし」


「酷いお話ねぇ……」





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