*** 10 二大宗教分離 ***
この物語はフィクションです。
登場人物、国家、団体、制度などが実在のものと似ていたとしても、それは偶然です。
また物語内の記述が事実と違っていたとしても、それはフィクションだからです。
「どうだったミヌエット、歴史は多少改善されてたか」
「ええ、たっぷりと。
21世紀地球の突然死は無くなってたわ。
おかげで子宇宙の地球相当惑星の生命絶滅も無くなってたし。
それで最高神さまは涙を流されるほどお喜びになられて、ムサシさんに4つ目の神界金星勲章というか、初めて白金勲章を創設して授与して下さるそうだわ♪
階級も特別上級神ですって♪」
「だが、地球では21世紀以降も戦乱が続いていたんだろ?」
「え、ええ、あの戦乱の19世紀を上回る数の戦争が続いてたみたい。
民族間や国家間のヘイトがますます強まったらしいわ」
「まあ、第1次世界大戦の発生原因も、フランスにとっては19世紀の普仏戦争敗北の復讐だったそうだしな。
20世紀後半から21世紀にかけての中華帝国と小韓民国の嫌日感情も、もう一度日本と戦争し直して勝利し、日本を植民地にしない限り1000年続くって言われてたし」
「そうだったのね」
「まあ中国も韓国も悔しくってしょうがなかったんだよ。
なんで敗戦で焼け野原になった鬼畜日本が自分たちを上回る驚異の経済発展を為せたんだよ!って。
そんなん同じ敗戦国で焼け野原になったドイツの発展ぶりを見りゃあ分かるだろうにさ」
「なんで敗戦国の日本とドイツは戦勝国の中国や韓国に比べてそんなに発展出来たの?」
「旧支配層、つまりヤタラに威張ってるだけで能無しのジジイたちが全員パージされたからなんだ。
特に北京を含む中国北東部と朝鮮半島には、儒教とかいう『年寄りは若い奴より歳を取ってるが故に無条件でエライ』っていう、世界でも類を見ない阿呆な支配道徳が蔓延してたからな。
韓国なんか、若い奴に上官や上司の命令には無条件で従え!っていう洗脳をするために21世紀になっても徴兵制とか続けてたし。
兵器の性能が高度化しすぎて徴兵した兵じゃ使い物にならないっていう理由で、アメリカなんかとっくに徴兵制を止めてたっていうのによ」
「だから韓国と中国の支配層は、自省することもなく悔しさのあまり反日教育に精を出してたのね」
「その辺りが無能老人の無能たる所以だな。
ただ、興味深いことに日本にも20世紀最後の10年ぐらいから『失われた10年、20年』って言われる停滞期がやって来たんだよ」
「それはどんな理由での停滞だったの?」
「アタマの悪い奴ほどバブル崩壊のせいにするんだけど、実際は違うんだ。
答えは第2次世界大戦後に戦犯だの公職追放だのってパージされたジジイたちに代わって、実権を握った世代もまたジジイになったからなんだ」
「な、なるほど」
「まあ半分痴呆になりかけて老人用オムツ穿いてまで地位や権力にしがみつくようなジジイが増えるに従って停滞も深まっていったんだろ。
『オムツが必要になったら即引退』っていう制度があったら、日本も韓国ももう少しマトモな国に成れてたかもだ。
ところでその後の中国や朝鮮半島はどうなったんだ」
「それがね、中華帝国は全土で48か所も発生した民衆の独立蜂起を抑えるためにそれどころじゃなかったけど、中国やロシアからの援助を失って兵士たちがみんな餓死していなくなった北朝鮮を併合した勢いで、韓国の支配層がアメリカの制止を振り切って日本に戦争を仕掛けたの。
それで最初に奇襲攻撃された横須賀基地は甚大な被害を被って、日本は『リメンバー・横須賀ハーバー』っていう合言葉で韓国相手に全面報復戦争を始めたそうよ」
「あー、やっぱりそうなったか……」
「でも反共防波堤の必要も無くなって韓国に無視もされたアメリカが日本に協力したせいで、韓国は無くなっちゃったらしいわね。
韓国の政治家や上級軍人はみんな大金を持ってヨーロッパに逃げてたそうだけど。
戦争を始める前に要人のほとんどが密かに欧州に別荘を買ってたんで、全世界が呆れたらしいわ。
みんな自分だけ逃れて亡命政府の大統領になれるって期待してたのに、欧州で全員顔を合わせてびっくりしていたんですって。
その亡命者たちはなんとか亡命政府を樹立して、大統領だの副大統領だの第1首相だの第2首相だの第3首相だの大臣だの副大臣だの副々大臣だのが500人もいたけど、卑怯者の戦争犯罪者としてどの国にも相手にされてなかったようだし」
「あの国らしいわ。
なんせ第2次大戦後の大統領12人のうち、8人は退任後に逮捕・有罪、自殺、暗殺、亡命だもんなあ。
家族が逮捕された2人も含めれば10人になって、無事だった大統領は2人しかいないし」
「在任中によっぽど悪いことしてたのね」
「ってゆーか、悪いことするために大統領になろうとしたんだろ」
「あははは」
「ところでロシアは?」
「各地の軍閥が内乱を始めたせいで、32の国に分かれてずっと戦争が続いていたそうだわ。
そんな影響もあって100年後に地球人口が10分の1になったために、ようやく戦乱も自然終息したみたい。
だけどヘイトが溜まりまくってるから、30年後にはまた戦乱の時代になったそうよ」
「そうか……
なあミヌエット、もう一度中央大神殿に行って『勲章も昇格も要らないから、当時の地球をもう少しまともな世界にしてやりたいんで作戦を継続させて欲しい』って言って来てくれないか」
「さすがねぇ。
それじゃあ神さま方を説得してくるわ♪」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ということでみんな、今後もしばらく地球平定作戦を続けることになった。
よろしく頼む」
「望むところだな」
「「「 おう! 」」」
「それじゃあ時代順に対策を打って行こう。
まずはキリスト教とイスラム教の創始者に『信徒に他の宗教を攻撃するなと説いてくれ』『その旨経典にもはっきりと書いてくれ』って伝えようか。
武八郎(実行部隊第3師団師団長)、頼んだぞ」
「はっ!」
「それで武八郎、2人は納得してくれたか?」
「すいません、失敗しました。
2人とも、『神はお一人しかいらっしゃらないのです。ということは、他の宗教と言っても同じ神を信仰しているに違いなく、よってその者も我が信徒であるのです。
わたしの信徒がわたしの信徒を殺害することなどあるはずはないでしょう、ははは』って言ってました……」
「やっぱ神の使徒を自称する奴にまともな奴はいなかったか。
一応俺は本物の使徒だけどな」
「それじゃあどうする?」
「武五郎(建設担当)」
「へい!」
「聖地エルサレムをクラス30の遮蔽フィールドで覆って誰も入れないようにしてくれ。
地下も含めて半径5キロの球状でな。
そうすればもうキリスト教徒も『聖地奪回』とかホザいて十字軍とかいう強盗団を組織しなくなるかもしれん。
それから、21世紀のターキーとギリシャ、ブルガリア国境を武装して越えようとしたイスラム教徒には、念話の神術で警告を発した上で武器と衣服を『転移』の神術で没収する体制を構築してくれ。
東側の境界はとりあえずインド手前までとしよう。
海を渡って欧州世界に侵攻しようとするイスラム教徒にも警告と没収だ。
もちろん逆に武装してその境界を越えてイスラム世界に入ろうとするキリスト教徒もだな」
「了解!」
「2つの勢力圏での商取引が阻害されるのは多少残念だが、どうしても取引がしたければ商人たちが境界線上に交易街を作るだろう。
武器を持たなければ越境は可能なんだから」
「そのまま両宗教を21世紀まで隔離したらどうなるのか楽しみだ」
「それら宗教内の主導権争いで宗派が増殖するのは構わんが、それぞれが宗派同士で武力闘争を始めたら、首謀者たちを徹底して発狂させていこう。
カトリックとプロテスタントの勢力争いはほとんど武力闘争には至らなかったが、イスラムのシーア派だのスンニ派だのフーシ派だのの武装権力闘争は目に余るからな。
武力闘争を指示した指導者と実行部隊は常に発狂させていく。
武八郎(実行部隊第3師団長)、頼んだぞ」
「はっ!」
「さてミヌエット、この宗教分離の効果を確かめるために、いったん元宇宙に戻ろうか」
「ええ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「みんな、宗教分離政策の結果21世紀以降の戦争行為は約20%減ったようだ。
特に宗教テロを発端とする報復戦争や宗教の名を借りた略奪戦争がほぼ無くなっている。
よってこうした施策はこれからも続けていこう。
他になにかあるかな」
「ちょっといいかな兄貴」
「何かあったか武六郎(実行部隊第1師団長)」
「いやウラニウム鉱山の発見と採掘は順調なんだけどよ。
北朝鮮地域の大深度地下にも大鉱床を発見して採掘も始めたし。
でもさ、俺たちが大規模に作業を始めたら、現地のクロマニョン人が集まり始めたんだよ。
まだ大した人数じゃなくって家族単位なんだけど、それがみんなボロボロの姿で、飢餓状態にあるんだ。
奴らを助けてやってもいいかな」
「うーん、どうするかな」
「どの地域が多いんだ?」
「主にロシアとカナダと中国北部と北朝鮮だな」
「ということは寒い地域か」
「あーまだ氷期の真っ最中だからな」
「それは自然災害による現地住民の困窮だから、助けるのはある意味俺たち使徒の本業じゃねぇか?」
「それじゃあ本格的に助けようぜ」
「ただ、食料や住居を与えたら、その分働いてもらうっていう教育もした方がいいな」
「学校も作って全員に現地語や英語の読み書きも教えるか」
「いっそのこと銀河標準語でもいいな。
あの言語は日本語や英語みたいにヘンなイディオムも無いし、発音も容易だから」
「その援助さ、ひょっとすると、当該地域の民族たちにかなりの好影響を与えるかも」
「そうだな、労働と感謝の概念と俺たちによる善意の統治か……」
「ところで助けを求めに来たのって、どんな種族が多かったんだ?」
「ほとんどがヒト族、ゴブリン族、犬人族、猫人族だな。
あとは狐人族や狸人族や兎人族、鼠人族なんかの一般種族だ」
「狼人族やオーク族みたいな好戦的な種族は襲ってこなかったのか?」
「いや少数の集団が襲って来たけど、俺や俺のコントロールするアバターたちにあっさりブチのめされたんで、すぐに大人しくなって真面目に学校に通ったり働いたりしてるわ。
あいつら本能的に強い奴には従うし」
「まあ現地住民のレベルで俺たちにケンカで敵うわけないもんな」
「最初は連中も、『これほどまでに強い連中が、なぜ弱い奴らを支配しようとしないのか』って不思議に思ったようなんだけどさ。
まあ俺たちが圧政を敷くことなんかあるわけないよな。
アバターたちだって鉱山で真面目に働いてるし。
それで強い種族も、そういう平和的統治が有り得るんだって学習したようだ」
「それでそれら地域はその後どうなったんだ?」
「しばらくの間はけっこう民度が高くなったままだったな。
その後はわからんけど」
「そうか、食料援助はそれなりに効果もあったんだな。
よし、これも作戦計画に組み込もう。
俺はまた元宇宙に戻って結果を確認してくるわ」
(註:神界知性付与部門は、広範な種類の動物に知性を与えてきたが、これはもちろん将来の文明の多様性を担保するためである。
また、有望な種族に知性の萌芽を与える際には、将来ヒト族型の体になるような因子も与えている。
何故ならば『直立2足歩行による脳容積の拡大』、『手の指の発達による脳進化と器用さ増大』などの利点に加えて、類人猿系のヒト族は犬人や猫人などの種族に比べ、『食べられる物の種類が多い』という消化器系の種族特性があるために飢えにくくなるからである。
(犬系や猫系などの生物はほとんど肉しか食べず、野菜や果実の一部が毒になる)
よって、階梯宇宙の広範な宙域では多種族による文明が栄えており、ヒト族しかいないような世界はかなり例外的であって、視野の狭い極端な文明になりがちだった。
もし読者諸兄の住む世界に知性を持つ種族がヒト族しかいないとすれば、その世界はムサシの生まれた階梯宇宙から数千万年から数億年後に枝分かれして発生した子宇宙と推測され、相当に例外的な世界と言える。




