プロローグ
私、斉藤奏はよくいるゲーマー女子だ。
学校にも行かないでゲームをしまくり、ネットを見ては寝る毎日。
人としてはどうかと思うが、両親も気にしてないし自分は幸せだし特に問題はないのだ。
こんな私を許してくれる両親には頭が上がらない。
「奏ー!行ってくるわねー!」
「はーい!行ってらっしゃーい!」
両親は仲がいいことに2人で買い物をしてくるらしい。
もちろん私は人混みが嫌いだから留守番担当だ。
両親が帰ってくるまで自由の身だ。
それから私は時間を忘れるくらいにゲームに没頭した。
――――――――――――――
「ふぅー。結構時間たったかなぁ。」
椅子から立ち上がり背伸びをする。
そこでふと時計に目をやる
「!?」
そう時計の針は18時過ぎを指していたのだ。
両親が家を出てからもう8時間近くが過ぎていた。
(ママとパパ、何かあったのかな……)
そう考えながらテレビをつけるとニュースが流れていた。
何となく見ていると、
「続いてのニュースです。今日、○○県○○市の道路で車同士が衝突し二人が死亡、一人が重傷を負いました。」
私の住んでいるところに近い。
いやな予感が脳をよぎる。
「死亡したのは、斉藤拓馬さんと、斎藤紗夏さん。2人は――」
「嘘……でしょ……」
嫌な予感が的中してしまった。
頭の中で様々な感情が飛び交う。
不安。
怒り。
悲しみ。
絶望。
少しでも気を緩めたら倒れてしまいそうだ。
(だめだ……一旦寝よう……)
とりあえず寝込むことにした
こういうときは大抵睡眠がなんとかしてくれるはずだ。
ベットに入り様々なことに思いを巡らす。
(もうこの世界で生きてくの嫌だな……)
これまで両親がそばにいたから生きていけたのに、その両親を失ってしまっては私は何もできないのだ。
(これからどうすれば……いいん……だ……)
こんな状況でもやはり睡魔には勝てない。
自然とまぶたが落ちてきて、私は深い深い眠りにつく。
――――――――――――――
(ん……?ここは……?)
気づいたら知らないところに連れられていた。
周りには何も見えない。
(確か、私は寝て……それから……)
これは夢なのかと一瞬思ったが、明確すぎる意識とはっきりと感じる浮遊感にその考えを否定される。
「ようこそ、世界の狭間へ」
突然、脳内に知らない声が響き渡る。
(ん……?この声は……?)
「僕は別世界における、言わば神みたいなものさ」
(神……?宗教勧誘ならお引取りを……)
「あははっ、君、この状況で冗談を言えるなんて大した子だなぁ」
神と名乗るその人物は私ををからかうように笑う。
(出来損ないの私に……何か用ですか……?)
「ああ、君には僕の世界に来てほしいんだ」
(あなたが作った……世界……?)
「ああそうだ。」
(なんで、私が……?)
「んー、僕の気まぐれかな。まあ、強いて言うならさっきこの世界で生きていくのが嫌って君が言ったからかな。」
ただの気まぐれで人を巻き込むのはやめてほしい。
まあこの世界に居たくはないっていうのは事実だが。
(聞いてたんですね……)
「もちろん。ちょうど異世界人を僕の世界に呼び込もうとしていたから、いろんな人間を観察していたのさ。」
(なんで……異世界人を……?)
「それは秘密。僕の世界に来れば分かるよ」
なぜ大事なところだけは言ってくれないんだ……
まあゲームができなくなるのは少し悲しいが、異世界に行くことができてこの世界を離れられるなら本望だ。
(まあ行くのには抵抗ないんですがね……)
「じゃあ決まり!とりあえず1ヶ月は生きれるくらいのお金を用意しとくね!」
(まって……その世界の説明だけでも……)
「それじゃあ、いってらっしゃーい!」
その声を境に私の意識は遠のいていった。