表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に転生したらオークの花嫁になってしまいました  作者: 宮ヶ谷
第一部 オーク村の若夫婦 第一章 オークの花嫁
23/941

第23話 夜の成果

さて、ミエの≪応援≫スキルの対象となったクラスクは、一体どんな影響を受けたのだろうか。


初期状態において≪応援(ユニーク)≫はその固有対象に対して以下の効果を発現させる。


1つ、≪応援≫スキルによる効果を受ける際、≪応援(ユニーク)≫の対象のみその効果を増大させる。

1つ、≪応援≫スキルによって向上したステータスや判定値の一部が、≪応援(ユニーク)≫の対象のみ恒久的に(・・・・)還元される。


≪応援≫スキルの効果は基本的に一時的なものであり、だいたい数十分から長くても数時間程度しか持続しない。

だが上記の効果によりミエがクラスクを応援した場合に限り、その上昇した補正の一部分が永続的(・・・)に残り続けるのだ。


無論初期効果なので上昇量は微量だし上限も決まっているが、それでもレベルアップや魔法のアイテム以外でステータス上昇の機会を得るのは非常に大きなメリットと言える。



では彼は一体昨晩ベッドの上でどんな応援を受け、どんなステータスを向上させたのだろうか。



まず耐久力。

回数(・・)は大事。基本である。


次に器用さ。

当然ながらテクニックも重要な要素だ。


そして知力。

飽きの来ないバリエーションのあるプレイを心がけることが、よりよい夫婦生活には欠かせない。


さらに判断力。

女性が本気で嫌がっているのか、それとも嫌がっているのはあくまでフリで実はちょっぴり期待しちゃってるのか、それを見極める判断力は必須と言っていいだろう。


最後に魅力。

いつだって女性を蕩かせるのは男の魅力である。



そう、昨晩彼はミエから様々な何度も励まされ、応援されて、これらのステータスに浴びるように補正を受けたのだ。


…とても、頑張ったのである。




それは…オーク族にとって稀有なことであった。




彼らはステータスを上昇させる機会があった場合、とにかく筋力と耐久力を最優先で上げる。

相手を一撃で屠る攻撃力と、それを当てるまで耐え続けるだけのタフネスがあればどんな相手にだって勝てる、というのが彼らの持論であり基本戦術だからだ。


攻撃を当てるために必要な器用さや攻撃をかわす敏捷を上げることもあるが、せいぜいそれくらい。

いずれにせよ彼らが重視するのはすべて肉体系のステータスに偏っており、精神系やその他のステータスが顧みられることはほとんどない。

あるとしてせいぜい幸運くらいだろうか。

高レベルに達していても知力や判断力がまったく上がっていないオークすら珍しくないのだ。




だがそれらのステータスを…彼は、クラスクは上昇させてしまった。




オーク族が粗野で残忍なのは、異種族相手に平気で非道を働けるのは、彼らの精神系ステータスの低さが一因である。


知力が低いゆえに他種族のことを知らず、理解できない。

判断力が低いがゆえに相手の気持ちを読み解けない。

そして魅力が低いゆえに相手への気遣いができない。


だから幾らでも他者に酷いことができるし、攫った娘が嫌がっても泣き叫んでも心を動かされることがないのだ。


だがクラスクはそれらを上昇させてしまった。

これまでオーク族が種族として不要と切り捨ててきたものを獲得してしまったのである。


向上した知力が気づきを与え、

伸びた判断力が感受性を育んで、

増した魅力が彼にオークなりの気遣いを覚えさせてしまった。


そしてそうした心の変化が彼にわずかばかりの情緒を目覚めさせ…

その情緒が昨晩の、いや先日からのミエの精いっぱいの献身と奉仕を以て、彼に感銘を与えてのけたのだ。

彼女の在り様を素晴らしいと、尊いと感じさせてしまったのである。



そう、クラスクが、オークである彼が目の前で寝入っているその娘に対して抱いた言葉にできない感情の正体は…





「慈しみ」と「愛しさ」であった。





だがクラスクはそれらの言葉を知らない。

使う必要もなければ機会もなかったし、そもそもオーク語にそんな感情を表す語彙自体がない。


けれど隣で寝ている娘の寝顔を眺めていると胸を掻き毟られるような妙な感覚に襲われて、彼は思わずその頬を撫でた。



無骨に、ではなく、できる限り丁寧に。



「んにゅ…(スリスリ」

「?!」


甘えたような鼻声を上げながら彼の手に頬を擦り付けるミエの寝顔がクラスクの脳を焼く。


側にいたい。

手放したくない。

今すぐに抱きたい。

襲いかかって乱暴に犯したい。



けれど…この娘が悲しむ顔は何故か見たくない。



そんな矛盾した衝動と情動がむくむくと積乱雲のように湧き上がってきて、彼は混乱した。


「ミエ…」

「にゅ…んふふ。旦那様…にゅ」


思わず彼女の名を呼んだクラスクの言葉に反応するように、ミエが眠ったまま嬉しそうに笑う。





自分のその感情の正体がよくわからぬまま…

クラスクは、ミエが起きるまでずっと彼女の頬をぷにぷにとつつき続けた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ