家出している女子高生を拾ったら、人生が変わった件
労働はクソだ。
と、俺はいつも考えている。労働はしたくない。朝早くに目を覚まして、夜遅くまで職場に拘束される。そんな日々を五日経て、二日休めたら良い方で、六日働いて一日しか休めないときもある。そんな辛い日々を過ごして手に入れるのは、およそ20万ぽっちだ。
そして、ある日、目が覚めると、年を取った老人になっている。
若者なら価値がある。しかし、老人には価値がない。
ハローワークで求められているのは若い人材であり、年寄りに与えられる仕事は、高校生と同じようなアルバイトくらいなものだ。
「労働はクソだ」
俺、渡部徹はそれが口癖である。だから、労働しないで済むように頑張っている。
仕事終わりにビールを飲み、歩いて帰る途中、ふと、道端で立ちんぼをしている女子高生が目に入った。繁華街というのもあり、おそらく、そういうこと、なのだろうと合点がいく。が、渡部は、その女子高生の表情に目が行った。
どこか諦めきったその表情に、見覚えがある。
家出をした時の顔だ。
これから先、自分がどうなるのかわからないという不安に満ちた顔である。
おそらく、まだ、男をとっていない。
男をとった女は、そんな顔をしない。
「おじさん、私を買ってよ」
じろじろと見てしまっていた渡部に対して、女子高生のほうから声をかけてきた。
声からしてかなり若い。女子中学生だとしても疑問を抱かないような幼い声だ。
足元から、頭の先までじろじろと見て、渡部は苦笑いを浮かべる。
「あいにくと年上趣味でね」
「でも、別にいいじゃん」
「家出か」
びくり、と女子高生の顔色が変わる。図星というような顔だ。
「関係ないでしょ。買うの? 買わないの?」
「今時、そんな営業の方法はないぜ。スマホで済ませる時代なんだぞ」
「スマホないもん」
「あっそ。かなり貧乏なんだな。うちに来るか」
渡部の中で、親切心が顔を覗かせた。
このまま、この女子高生を放っておくのは苦だと思った。この様子では、いつ、悪い大人に引っかかるとも知れない。それよりも先に自分のような善良な人間が救いの手を差し伸べるべきだと思ったのである。
「え」
「ただし、俺のいうことには従ってもらうぞ」
女子高生が首を縦に振るのを確認してから、渡部はついてこい、と言い、タクシーを停めて乗り込んだ。それから、タクシーはしばらく走り、駅前の雑居ビルの前に停まった。雑居ビルの一階には、小さな居酒屋が入っている。
その居酒屋の中へと渡部は入っていった。
女子高生は一瞬、ためらった。女子高生なので居酒屋に入ったことがなかったからだ。
「おい。どうした。入ってこい」
が、渡部に言われては、入る以外の選択肢がない。
意を決して女子高生は店の中へと入っていった。
「いらっしゃいませ」
出迎える大合唱が女子高生に浴びせられた。驚きながら目をぱちくりさせて、店内を見まわす。
自分と同じくらいの年頃に見える女の店員が女子高生の前に出た。
「渡部さんから聞いてるよ。家出してるんだって?」
「え。あ、はい」
「辛いよね。でも、大丈夫だよ。あ、私はユッキーね」
にこりと店員は笑う。
その後ろに渡部が立っていた。
「ここにいるのは、みんな家出少女だ。お前と同じだ」
「え」
「俺はそういう家出少女を保護しているんだ。代わりに俺の店で、この店で働いてもらう」
「え」
渡部は労働したくない。
だから、雑居ビルの一階で居酒屋を始めた。が、居酒屋を始めたが、労働からは逃れられない。人を働かせてみたこともあるが、そうなると、今度は人件費がかなりかさむ。
そこで、目をつけたのは家出少女や家出少年である。脛に傷ある彼らを使うことに目をつけた。
彼らは居場所が家にない。つまりは、逃げ場所がない。
その彼らに対して、住処を与える代わりに、労働を依頼する。
「なに、これから家族のように慕ってくれればいいよ」
心優しく邪悪な笑みで、渡部は女子高生に微笑みかけた。
職場でさささっと書いたので短く、乱雑です。




