表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王倒しちゃった  作者: ダンディー
4章 闇の渦巻く魔法祭!
32/34

4×8話 弟子との特訓

カキン、カキン。


人気のない広場で剣をまじえる音が聞こえた。


「いいぞ!その調子だ。」


カキン、カキン。


その音は静寂の中を駆け巡る。


そこで剣を交えていたのは俺と、俺の弟子ロンであった。


「いいか、剣を扱うのに当たって1番大切なのは、型だ。いかにパワーがあり、いかにスピードがあっても、型がなければ戦いにもならない。逆に、型を極めれば、才能がなくても戦うことが出来る。」


俺は木刀で、ロンを圧倒しながらそう言い、続けた。


「魔法のみで戦うのが無理だから剣で戦おうというのは良い考えだ。しかし、まだまだ足りない。魔法は才能、剣は経験だ!」


俺の攻撃を必死に耐えているロン。魔王並の剣技にここまで着いてこれるのは凄いと思う。


ちなみに俺が師匠であることに乗り気なのは、前世のアニメとかを思い出して、やってみたいと思っていたからだ。


BAN!


俺はロンを突き飛ばして1つ質問した。


「お前、剣を握ってからどのくらい経つ?」


ロンは痛てててと尻もちをつきながら言う。


「1年と3ヶ月ですかね?」


なるほど、道理でしっかり剣術の基礎はできている。


しかし、足りないなぁ。


彼は、修行を始める前、自身に魔法の才能がないから、剣を使って対等に戦えるようにしたいと言っていた。


要は、俺の前の世界でいう魔剣士ってやつになりたいと言っているのだ。


ただ、まだあるものが足りていない。


「お前はなぜ魔法が使えるのに剣の修行をしているんだ?せっかく魔法が使えるというのに、それを使わないなんて、宝の持ち腐れじゃないか。」


俺はロンに言う。


ロンはしばらく黙ってから言う。


「宝...ですか。確かに僕は魔法を使えます。でも、僕には魔法の才能がありません。だからこそ、剣を使って、努力で才能のある人を超えていきたいんです。」


俺は彼の目を見つめる。なんだか、アニメや漫画の主人公のような言い分だ。


しかし、その理想がきっと彼の成長を阻害しているのだと、俺は確信した。


だからこそ俺はこう言った。


「努力だけで才能には勝つ事は出来ない。なぜなら、才能のある人もまた、努力しているからだ。この言葉の意味がわかるか?ロン。」


ロンは突然目を丸くする。そして、下を見る。


まるで、親に正論を言われ反抗できない子供のようだ。


ちょっとかわいいなと思いながら、俺は続ける。


「ロン。お前の選択は間違っていない。剣を使おうという発想、それは普通の人じゃあ、思いつかないものだ。しかし、だからといって魔法を使わないという選択は良い選択ではない。お前にはもっとできることがあるはずだ!自分にできる事を最大限に活かせ!そうすれば、お前は協力な武器を得られる。」


師匠は弟子に対して決して答えは言わない。


別に答えを言ってもいいのだが、それは弟子のためにはならない。


答えを導き出す時、最も大切なのは答えではない。


答えを導き出すまでの過程なのだ。


つまりだ。師匠である俺が今行うべきことは、弟子であるロンに答えへと導くヒントを与えることだ。


だから、俺はロンに答えを言わずに、遠回しで答えを言った。


きっと正解に導くように。


「もう1回やるぞ!ロン。」


俺は剣を構えた。


地面に倒れ込んだロンは、唾を飲み込んで再び立つ。

そして、俺と同じように剣を構えた。


「行くぞ!」





カキン、カキン。


再び剣の音は鳴り響く。


誰も音を出さない空気。その中で素晴らしい剣技をもつ2人の人間が、自身の剣を振り回していた。


当たり前だが、圧倒しているのはライン。


ただでさえ、すごいパワーを持っているというのに、そこに合わせて、的確な剣技とスピード。


例え、国の騎士の中で最も強い者でも、彼に勝つことはできないだろう。


そんな師匠に剣で攻められながら、ロンは考える。


僕にできる事ってなんだろうか?


剣?魔法?


分からない。師匠はなにを言いたかったのだろうか?


師匠は自分にできる事を最大限に活かせと言った。


しかし、自分にできる事というのがいまいちピンと来ない。


なぜ彼はあんな言い方をしたのだろうか?


なぜ剣だけではダメなのだろうか?


くそっ分からない。


僕はどうしたらいい?


ロンはラインの剣を受け流す。


カキン


そんな音を轟かせながら彼は必死に考える。


ロンが迷っているのを見たラインは再び彼にヒントを与える。


「ロン!お前の力を、俺に向かって全力で放て!お前の攻撃なら、多分耐えられるから、妥協する必要は無い!」


ラインがそういうとロンは余計に混乱する。


僕の力を全力で放て?


なんだそりゃ。


剣で攻撃するのになんで『放て』なんだ?


まるで魔法を放てみたいな言い方して...


くそっ分からない。


師匠は俺に何をさせようとしているんだ?


ロンは必死に頭を回す。


そして、ラインの思考を読み取ろうとする。


彼は考える。


考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考える。


ふと、ロンの頭の中にある発想が浮かぶ。


僕の力を放て?


僕のできることを最大限に活かせ?


そうか解った。師匠が僕に求めているものが!


ロンは剣を構える。


まるでこれから必殺を放つ主人公みたいに。


そして、魔法名を唱える。


「ファイヤーボール。」


そこに生まれたのは、弱弱しい炎の玉だった。


魔法の威力は、その魔法を使う人の魔力によって決まる。


ラインは彼の魔法を見る限り、本当に魔法の才能がないのだと確信する。


しかし、彼は満足そうに笑って言う。


「正解だ。」


ロンは自身の剣を炎の玉にに突き刺した。次第に炎はロンの剣をまとい始める。


「僕には魔法の才能がない。剣技もまだまだ未熟。でも、見つけました。今の僕にできる、最大の戦い方を。魔法も剣も中途半端なら、両方を同時に使えばいい。これが僕の剣技です!ファイヤーソード!」


ロンはそう言い残して、ラインに斬りかかった。


もちろん、そんな攻撃でラインに傷をつけることはできない。しかし、威力はaクラスの生徒の魔法と、同じくらいのものを出していた。


1年とちょっと修行してきた剣技と、ずっと学び続けた魔法が上手く合致したのだろう。












「思った以上の威力だな。お前、なかなか骨がありそうだな。」


俺はロンに言った。


ぶっちゃけ俺は面倒事が嫌いだ。だからあまり目立つ行動をしたくない。


だが...


弟子というのはなかなか悪くないかもな。


俺も、昔は先生になりたいと思っていた時期もあったし...


俺はロンに言う。


「なぁ、ロン。俺、さっき今日だけって言ったが、お前さえ良ければ、明日も来ないか?色々教えてやるぞ。」


俺の前にいる少年は、少しきょとんとしてから笑った。


そして言った。


「はい!今後ともよろしくお願いいたします。」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ