2八話 魔法学校の魔法祭!
あれから1ヶ月の月日が経った。
俺はと言うと、いい感じに陰キャ生活を送れている!というわけでもなかった。
この間までは腹黒公子しかいなかったのに、ここ1ヶ月はヴィリアがずっと引っ付いてくる。
まぁ、別にいいんだけどさぁ...
ヴィリアって、実は侯爵家の娘らしいんだよね。
公爵家の息子と、侯爵家の娘。
そんな大物達に挟まれている俺。
目立たないわけがない。
「ねぇ、ライン。ずっと気になってたんだけど、なんでいつも魔力を偽るの?ラインなら、軽く学園1位なんて取れるのに...
私にも口封じさせるし。」
ヴィリアは俺に質問する。
「軽く学園1位を取れるほどの実力があるから、隠してるんだよ。
優秀な人って何されるか、わかんないしね。
その反面、ヴィリアにはいつも驚かされるよ。」
俺は返す。
「まあね。」
ヴィリアは笑う。
そもそも、魔法とは何なのだろうか?
この質問に対しての答えは簡単だ。
ゲームの仕様みたいなもの。
というのが、1番わかりやすい言い方だろう。
MPと呼ばれるものを消費して使う、攻撃手段。
それがこの世界で言う魔法だ。
では、そのMPと言うのはどこから来るのだろうか?
この質問に対しての答えは難しい。
とても複雑だからだ。
この世界の人には、ふたつの種類が存在する。
マジックコアを持つものと、持たないものだ。
マジックコアとは、魔力の源、要はMPを生み出すコアのことを言う。
これを持っている人は魔法を使え、そうでない魔法を使えない。
このマジックコアから生み出されるエネルギーを使って人は魔法を使うのだ。
ちなみに魔力量とは、マジックコアの大きさや強度を示した数値で、当たり前だが、魔力量が大きければ大きい程強力な魔法を使えたりする。
例えば、シュナの魔力量は2000。
平均の10倍だから、普通の魔法使いの10倍の魔法を使うことが出来る。
また、ヴィリアの魔力量は、まだ言ってなかったが、実は10万もある。
つまり、ヴィリアは、普通の魔法使いの500倍の魔法を使うことが出来る。
人間では、ほぼありえない魔力だ。
ちなみになぜ、ヴィリアがこんなにも強力な魔力を持っているかと言うと、俺のミスだ。
普通、マジックコアは、その持ち主と結びついているため、他人に渡しても融合しないし、自分に帰ってくる。
だから、呪いを追い出す時、ヴィリアにマジックコアを普通にぶちこんだんだが...
何故か、俺の渡したマジックコアが、ヴィリアのマジックコアと融合してしまって、俺に帰ってこなくなってしまったのだ。
ヴィリアから返してもらうにも、既にヴィリアの魔力になっていて、俺じゃあ操れないし、ヴィリア本人も、マジックコアの操作など、練習したことがないらしいから、返してもらう方法がない。
悪いことしたなぁとは思う。
しかし、こうなってしまえば、もう仕方ない。
俺はヴィリアへ行ってしまった魔力を、既に放置していた。
ヴィリアも納得しているし、なんなら少し嬉しそうにしている。
まぁ、あれくらいの魔力だったら、無くなったところでどうってことないし、ヴィリアもそれで喜ぶんなら、文句はないな!
まぁ、なんだかんだで、魔法の原理について喋ったが、やはり簡単にすると、ゲームで使うやつと同じだ。
だから、ゲーム感覚で認識してくれるとありがたい。
そんなこんなで、俺とヴィリアは最近よく一緒にいて、よくしゃべっていた。
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ある日の昼休み、セリヌスは俺に話しかける。
「なぁ、ラインは魔法祭、どの種目に出るの?」
冬の寒い季節。この世界は日本と違って秋から学校が始まるから、そろそろ冬休みが来ようとしている。
そして、その冬休みがあけると、魔法祭という学校行事が開かれる。
「そっか。1ヶ月の長休みあけたら魔法祭だもんね。いつ種目決めるんだっけ?」
「今日だよ。午後。もうすぐ。」
「え?まじで!?何も考えてないんだけど...」
「先生の話はしっかり聞こうね。」
セリヌスはニヤニヤしてこっちを見る。
ほっとけ。
俺は目線をずらす。
「そういやせりヌスは、魔法トーナメントに出るんだもんなぁ。いいなぁ、悩む必要もなくて。」
「別に決まった訳でもないけどね。」
魔法祭。
それは魔法学校で年に1度行われる、伝統行事。
現代世界にある、体育祭の魔法版みたいなもので、学校内で3つのグループに別れて競い合う祭りだ!
ちなみに俺が言った魔法トーナメントというのは、この魔法祭の目玉競技だ。
それぞれのクラスから、成績上位者を3名選抜してトーナメントを行う、というもの。
まぁ、このクラスって、そもそもが、実力でクラスを分けてるから、いつもaクラスの誰かが勝つんだけどね。
ただ、3学年合同でやる競技だから、たまに下克上とかが見られておもしろい。
まて、セリヌスはこの学校の次席だ。ヴィリアが来てから、3番目の実力者になったけど、魔法トーナメントに出る条件が揃っている。
だから、彼は既に出場する競技が決まっているのだ。
それに比べて、誇ることではないが、俺はaクラスの中では、最底辺の成績を持っている。
要は自分で魔法祭で出る種目を決めないといけないのだ。
「んー。何に出るのがいいかな?」
俺はセリヌスに相談する。
「そんなこと僕に聞かれても...
ラインってaクラスなのに全部平等にできないじゃん。まぁ、やろうとしてないだけかもだけどね。」
そうだなぁ。
言われてみると、俺ってだいぶ不自然だな。
fクラスに落ちたいばかりに、ちょっと手を抜きすぎたからだと思うが、最近実は俺について変な噂がたっているのだ。
実は力を隠している説とか、実は湖丸ごと吹っ飛ばした説とか...
だいぶ厄介なことになっている。
元々aクラスの劣等生っていうあだ名だったのに、今では裏世界の優等生とか呼ばれだしている。
何故かは知らんが、ここ最近俺の評価が逆転しているのだ!
とにかく、それらをカモフラージュできるように、この魔法祭で挽回できる競技に出たい。
俺はそんなことを考えていた。
「お前ら、席につけ!」
ユナ先生が教室に入ってくる。
それと同時にみんな席に着いた。
昼休みは終わりだ。
午後のホームルームが始まる。
「事前に伝えていた通り、今日は魔法祭の競技決めを行う。今から競技一覧を書くから、よく見て、考えていてくれ。」
そう言って彼女は魔法で文字を表示し始めた。
様々な競技が箇条書きになって表記される。
俺はその中から、汚名返上できるような競技を探していた。
全て書き終わると彼女はまた喋り出す。
「もう知っていると思うが、魔法トーナメントは、クラスの成績上位者が出場することになっている。
シュナ・ロインズ・アロス、
ヴィリア・エルムート・シュタイン、
セリヌス・ヴォル・ラモス。
この3人はこのクラスの上位3人として、今回の魔法トーナメントに出場することになった。」
うぉぉぉ。
と、周囲から歓喜の声が上がる。
そりゃ3人とも、色んな意味で人気者だからな。
俺なんかが喋る権利なんて、普通は無いのだ。
「さて、俺はどうするかな?」
俺はボソッと呟く。
すると先生は俺を睨む。
そして、再び喋り出す。
「それともうひとつ。この魔法トーナメント、実は今年、トーナメントを組むのに、1人あまりが出るんだ。
別に1人、不戦勝のやつを作ってもいいんだが、相談すると、試合は平等ではなくなる。
ってな訳で、もう1人このクラスから、埋め合わせとして選手を出すことにした。」
クラスが一気にざわつき始める。
誰がなるんだろ。そんなつぶやきが聞こえてきた。
今選ばれた3人と他の人達では、実力がかなり違う。
しかも、余った人達の中では、あまり実力に上下がなく、皆同じくらいに魔法を使える。
ほぼみんなが自分は選ばれるかな?と考えている状態だ。
俺は俺で、誰が4番目に選ばれるんだろうと、気になっていた。
もちろんこの人かな?といった目星はある。
しかし、確証はない。
俺は静かに先生の話を聞く。
周りの声も次第に静まる。
次に先生は言葉を発した。
しかし、その言葉には信じられない名前があった。
「ライン・ガ・ゲルド。お前だ。」




