13・2話 アルゴとの決着。
先に魔法をはなったのは破壊神アルゴだった。
彼は俺に走りながら数十個の炎の玉を俺に向かって発射する。
「ルームワープ」
俺は瞬間移動でその攻撃を避け、更にやつの後ろに回り込む。
そして、魔法を放つ。
「ファイヤーソードラビリンス」
俺の周りには炎を纏った無数の剣が生成された。
「ほう。興味深い魔法だ。」
破壊神アルゴは言う。俺は剣を放つ。
グサッ
無数の剣がやつに刺さる。
しかし...
「なっ!?そんなバカな!」
俺は叫ぶ。
彼に刺さったのは剣の先っぽだけだった。
「ほぉ、ダイヤモンドよりも硬い私の体に傷をつけるなど、なかなか大したものだ。」
硬い...
やつの皮膚はとにかく硬い...
「しかし、私を倒せるほどの威力はなかったようだな。」
ガン!
俺は顔面を殴られる。
それと同時に無数のパンチを食らう。
俺は砂埃を立てながら、後ろへ吹っ飛ばされる。
ゲホッ
俺は嘔吐した。それと共に腹を抱えて、地面に倒れ込んだ。
破壊神アルゴは俺に向かって歩きながら言う。
「やはりお前は強い。まだ十数年しか生きていないというのに、なかなか大したものだ。どうだ?考えを改めて、俺に土下座して詫びないか?そうすれば、お前を今からでも部下として加えてやる。」
俺はやつを睨みながら答える。
「土下座して詫びる?それはお前の方だ。」
「何!?」
「トラップ。」
破壊神アルゴの下に魔法陣が描かれる。
「トラップって言うのはなぁ、ある条件を達成させることによって、そこに込めた魔法の威力を数十、数百倍にあげる魔法なんだ。」
突然やつの周りに、先程の炎を纏った剣が生成される。
「さっきの攻撃はカモフラージュということか。」
「その通りだ。くたばれ、破壊神アルゴ!」
剣は俺の合図で発射された。
そしてその剣はやつに突き刺さる。
・・・はずだった。
「やっぱこの程度じゃあ効かないか。」
なんとやつは自身の周りにバリアを貼って、俺の攻撃を防いでみせたのだ。
「少しはヒヤッとしたぞ。しかし、まだまだだな。」
破壊神アルゴは笑い始める。
くそっ俺は思う。こいつマジで反則だろ!なんだよ神って。どうやったら倒せんだよ。てか神だったら天界にいろよ!
俺はやつを倒す方法を考える。
しかし、破壊神アルゴは俺にそんな時間を与えない。
やつは自身の両手に水色の光を作る。
まずい。こいつっ!まだ実力を隠し持ってたのか。
やつが繰り出す魔法の魔力密度はえげつなかった。
いやがちどうやって倒せって言うんだよ!
くそっ
「ダークファイヤートルネード!」
俺は自分が使える最強の魔法をやつに撃った。
2ヶ月前くらいに、湖を丸ごと蒸発させた魔法だ。
これを使えば周囲の被害は甚大だろう。しかし、これを使わなければ、破壊神アルゴとはやりあえない。
やつは水色の光でできた魔法を俺にぶつける。
俺のはなった魔法と、やつが放った魔法は勢いよくぶつかる。
ドッオオオオオオオオン
大きな音を立てて、爆発が起こる。
まるで核兵器でも落ちたかのような威力だ。
「まずい!バリア!」
俺はとっさに自分と倒れたヴィリアをバリアで包む。
ガガガガガガガ
まるで巨大な地震が来たかのように地面はゆれ、俺と破壊神アルゴの間には太陽のような強い光が発生する。
ジジジジジジジ
ゴゴゴゴゴゴゴ
ギギギギギギギ
爆発はおさまらない。
その爆発は何十秒も、光を発し続けた。
草原であるはずのこの辺一体には、もう緑は存在しなくなっていた。
長い時間をかけて爆発は弱くなり始める。
そして、それと同時に破壊神アルゴは動きだす。
彼は俺に向かって走り出し、純粋に殴り始めた。
「やはり未熟!」
そう叫びながら、破壊神アルゴは俺に連打を叩き込む。
俺は素手でそれを受け止める。
さっき使ったエンチャントが残っているため、相手の動きにはついていけるが、一撃の攻撃がやはり重い。
こんなこと、ずっとは続けられない。
次に動いたのは俺だった。
俺はやつの連打を受け止める最中に、手のひらから小さな爆発を生み出した。
「バクハ!」
ボカーン。
たいした規模のない爆発が俺とやつの間でおこる。
これは目隠しだ。次の俺の動きを悟られないようにするためのカモフラージュだ。
俺は高速で破壊神アルゴの背中に回り、やつの背中に連撃を叩き込んだ。
破壊神アルゴは動揺する。
「グァッ!」
しかし、俺もやつと同じように動揺していた。
このパンチで、俺はやつにダメージを与える予定だった。
もちろん多少はダメージを与えることが出来た。
しかし、それよりも、俺に返ってくるダメージの方が大きかった。
というのは先ほどやつが言った通り、やつの皮膚はびっくりするくらい硬かったのだ。
痛みを感じた俺は自分の手を見る。そして、そこからは血が出ていた。
なんてことだ。
それを察した破壊神アルゴ。彼は隙を逃さず、俺の腹に一撃を入れた。
俺は再び後方に吹っ飛ぶ。
「なるほど、ダイヤモンドよりも硬いか...
確かにその通りだ。」
俺はやつに言う。
「言った通りだろ?」
破壊神アルゴはそう言い、再び俺に接近してくる。
「先ほどエンチャントという魔法をつかったな。それは身体能力をあげる魔法か?」
やつは続けて口を開く。その質問になんの意味があるのか?
「それがどうした?」
俺は苦しみ紛れに言う。
「いやなぁ、もし私がそれを使ったら、どうなるかと思ってな。」
破壊神アルゴの体から紫色のオーラが出現する。
これは...
エンチャント...!
さらにあろうことか、やつはそのオーラを右手に密集させた。
そんなことができるのか!?
「さあ、覚悟しろ!少年!」
「まずい、ハンドレッドバリア!」
俺と破壊神アルゴの間に、100枚ものバリアが生成される。
さっきから使っているバリアとは違う呪文のため、1枚の硬さは劣るが、全体的な防御力は圧倒的だ。
これなら耐えられる!
俺はそう思っていた。
破壊神アルゴは、右手で1番前のバリアに向かってパンチする。
その瞬間、まるで台風のような風圧が、辺りに発生した。
バリンバリンバリン
俺の作った100枚のバリアはいとも簡単に壊れていく。
これは...!
そのパンチの斬撃は俺の腹を貫通した。
大量の血が出る。
もう痛みという感覚すら消える。
俺は地面に倒れる。
「ガハッ。」
「どうだ?まだ動けるか?少年。」
破壊神アルゴは歩きながら言う。
俺は為す術もなく倒れ込む。
「惨めだな。もうお前にできることはない。あとはただ、だらだらと血を流して、死ぬのを待つのみだ。」
やつは俺を見下す。俺はやつを睨む。
「しかしだなあ、私はとても慈悲深い。それに、お前は将来良い手駒になる!だからこそ、お前に最後のチャンスをやろう。土下座して詫びろ。そうすればお前の傷を治し、私の配下に加えてやる。」
破壊神アルゴは笑いながらそういう。
「もししなかったら?」
「お前を地獄に突き落とす。」
くそっ。
世の中は理不尽だ。
神によって女の子の幸せは失われ、
聖剣によって俺の人生は狂い、
なぜ、こんなにも、世界は不平等なのだろうか?
なぜ、1部の人間は楽しく暮らせ、他の人間はそれが許されないのだろうか?
今の俺は負け犬だ。
何もできない負け犬だ。
圧倒的な力を持つ相手に遊ばれ、見下されて...
何を間違えたのだろうか?
俺はどうすればよかったのだろうか?
何が正しかったのだろうか?
俺の後ろにはヴィリアが倒れていた。
理不尽な世界と戦ってきた彼女が倒れていた。
俺は涙を流す。
何が彼女のためにできることだ...
結局、俺は何もしてねぇじゃねえか。
何もできなかったじゃねぇか!
何調子に乗ってんだよ。
俺ならきっとできるなんて。
俺の力があれば、きっとなんでもできてしまうなんて。
ちょっと運良く転生して、
ちょっと運良く聖剣に選ばれて、
ちょっと運良く魔王を倒して、
くそっ
くそっ
くそっくそっ
くそっくそっくそっ!
くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!
静寂の中で、一つの音が現れる。
「分かりました。土下座します。」
全てを出し切った声で俺は言った。
もう、喋る気力すらないような声で。
破壊神アルゴは薄気味悪い笑顔をうかべる。
それこそ魔王のような笑顔を、
俺が次の言葉を発するまでは。
「とでも言うと思ったか!」
やつの表情は変わる。まるで怒りに満ちた顔をし始める。
「殺せよ。俺を殺せよ!俺には譲れないものがある。信念がある!それをへし折るくらいなら、この命を差し出す方がマシだ!だから、俺を殺せよ!」
俺は怒鳴った。そして、
「まっ簡単に殺されるつもりは無いがな!」
しずかに言う。さらに。
『ダークファイヤートルネード!』
俺は叫ぶ。自分の全てを乗っけて!
破壊神アルゴは口を開く。
「まぁ、わかっていたがな。お前がそう言うことは、だから罠を仕掛けさせてもらった。お前がさっき使っていたトラップだ!」
なっ!俺の攻撃が届く前に、やつはトラップによって何十倍の威力になった魔法を放った。
さっき、俺のダークファイヤートルネードとぶつかり、核兵器のような爆発を起こした魔法だ。
それが何十倍にもなって俺に向かって、発射された。
ぶっちゃけ、俺は死にたくないし、死ぬ気もない。
俺は、新しい人生で幸せに送りたいんだ。
だからこそ、俺は戦う。生きるために。
そして、もうひとつ。
たった1人で戦った少女のために!
「俺の心に一切の揺るぎなし!」
俺は叫ぶ。
「俺の魔法に一切の躊躇いなし!」
「ほざくな小僧。今のお前に何ができる?」
周りの声など気にしない。
俺は俺の言葉を突き通した。
「俺の言葉に、一切の虚言なし!」
強大な力の前で俺は笑う。
そして、大声で叫ぶ!
「お前ごときに遅れを撮る俺じゃないぞ!
『トラップ、カウンタアアアァァァ...!』」
「何っ!?」
破壊神アルゴは言葉を失う。
やつのはなった魔法が、俺の前でさらに数十倍に膨れ上がった。そして、自分に跳ね返ってきたのだ!
「何をした!小僧!」
「カウンター。それは相手の放った魔法をそのまんま跳ね返す魔法だ。俺はそれとトラップを組み合わせた!」
「なっ!そんなことが...」
「今、お前に向かって放たれた魔法は、お前の放った魔法の60倍の威力を持っている魔法だ!いくらお前でもこれを耐えられることはできない!」
計算すると、この魔法攻撃はやつのオリジナルの魔法の数千倍の威力を持つことになる。
そして、その莫大な威力を持った魔法は破壊神アルゴの元へ直進する。
やつは高速移動で空中へ避難した。
「無駄だ、破壊神アルゴ。」
カウンターによって跳ね返された魔法は、やつを追跡する。
「馬鹿なァァァァァ。たかが人間に、十何歳の小僧にぃぃぃぃ。この私がァァァァァアアア。」
やつは、破壊神アルゴは、叫ぶ。
そして、
ヴぉおおおおおおおおおおん
超強力なエネルギーを浴びながら、やつは次第にチリとなって行った。
長時間に続く爆発。
先ほどの爆発などとは比にならない爆発。
幸い、爆発は空中で起こったので、辺りに被害は無かった。
全てが終わったあと、最後に残ったのは、少女ヴィリアと少年ライン。
指の形をした神を倒した少年は最後に言い残した。
「さらばだ破壊神アルゴ。地獄の底で、土下座しろ。」




